家庭菜園をはじめるとき、まず用意しなければならないのが野菜の苗です。しかし、園芸店に出向き、いざ野菜の苗を購入しようと思っても、何を基準に選べばよいかわからないという人もいるのではないでしょうか。

また、野菜の苗はいつから販売されはじめるのか、どのタイミングで植えたらよいのかといった疑問を持つ人もいることでしょう。そこで、このページでは、野菜の苗の選び方と販売時期、植える時期などを詳しく紹介していきます。

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野菜の苗の種類

ひとくちに野菜の苗といっても、じつは、実生苗(みしょうなえ)と接木苗(つぎきなえ)があるのをご存知でしょうか? それぞれの特徴を知ることで、よい野菜の苗を選びやすくなるでしょう。

実生苗

実生苗とは、タネから育てた苗のことです。最大のメリットは、後述する接木苗よりも安く購入できる点です。

ただ、F1品種(2つの異なる品種を掛け合わせて得られたもの)や固定種以外の実生苗では、株ごとに性質がばらつくことがあります。同じ品種を栽培しているのに、成長スピードがまちまちであったり、収穫物の品質が違ったりすることがあるのがデメリットといえるでしょう。

接木苗

接木苗

左の白色ポリポットに植わっているのが実生苗(トマト)、右の赤色ポリポットに植わっているのが接木苗で、接ぎ木苗では台木と穂木の境界がはっきり分かる

病気に強い植物の根(台木)と、野菜の一部(穂木)の茎をつなぎ合わせた苗を接木苗といいます。土壌から伝染する病気に強いのが長所です。

しかし、育成に手間がかかっているぶん、実生苗より3〜5倍の値段で販売されているケースがほとんど。けれども、丈夫なことが多いため、収穫量のアップが期待できるという利点もあります。少々高くても、育てやすい苗のほうがよいという人は、注目してみてくださいね。

札埜高志さんプロフィール画像

札埜さん

実生苗や接木苗の他にも自根苗(じこんなえ)や自生苗(じせいなえ)などがあります。少し紛らわしいので簡単に整理しておきます。

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実生苗は人がタネから育てた苗、接木苗は台木の茎と穂木の茎をつなぎ合わせた苗、自根苗は実生や挿し木にかかわらず自身の根を持った苗、自生苗は人の手によらず自然に地面から発芽し成長した苗を指します。

野菜の苗の上手な選び方

野菜の苗の上手な選び方

よい野菜の苗を選ぶには、購入前に葉の色や茎の状態などを確認するのが大切です。適切なものを選ばないと、うまく育たなかったり、枯れてしまったりすることがあるからです。ここでは、野菜の苗を選ぶときのポイントを紹介します。

葉の色・茎の太さをチェック

左:健全な苗(ピーマン);右:葉色が薄く葉が細長く全体的に間延びしている苗

左:健全な苗(ピーマン);右:葉色が薄く葉が細長く全体的に間延びしている苗

まずは、葉の色と茎の太さを見てみましょう。たとえば、葉の色が濃くて密に茂っているものは、根がしっかり張っていて、光合成がきちんとできているよい苗の証拠です。

また、茎の節と節の間が短くて太く、まっすぐ伸びているかどうかもチェックしておきましょう。さらに、茎の根元に安定感があり、グラグラしていないかなども重要になります。

一般的に茎の直径の3乗に茎や葉、果実の重さは比例すると言われています。収穫量にも影響しますので、苗を購入する際はできるだけ品質のよい苗を選びましょう。

葉が黄色いものは避けよう

上述したとおり、葉の色が濃く、茎が太いものはよい苗といえます。反対に、葉の色が黄色かったり、茎が細くなっている苗は、生育が悪いため避けたほうが無難です。

葉に斑点がある苗(オクラ)

葉に斑点がある苗(オクラ)

斑点がある葉の裏にはハダニ類の脱皮殻や卵があることも

斑点がある葉の裏にはハダニ類の脱皮殻や卵があることも

その他にも、ポットの底から根が飛び出て茶色くなっているものや、葉に斑点があるもの、アブラムシやハダニがついているものなどは、購入を控えるべき悪い苗といえます。

野菜の苗の販売時期

ところで、野菜の苗はいつから購入できるのでしょうか? 園芸店などでは、4月になると野菜の苗の販売がはじまります。しかし、この時期は気温がなかなか安定せず、せっかく購入してもきちんと生育しないケースがあります。

そこでおすすめなのが、植え付けの直前に購入することです。後ほどより詳しく触れていきますが、じつは苗は、野菜の種類や収穫のタイミングによって植える時期が異なります。

たとえば、トマトやキュウリは夏に収穫の時期を迎えるため、4月もしくは5月に植えるのがベストになります。そのため、これらの野菜を育てたい場合は、植え付け時期の直前を目安に、苗を購入するとよいでしょう。

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野菜の苗を植える時期

よい野菜の苗を選ぶことができたら、いよいよ植え付けをします。ただ、植え付けのタイミングは、野菜の種類によってさまざまです。そこで、家庭菜園の代表格ともいえる野菜をいくつか例に挙げて、植え付けの時期の参考にしてみてください。

トマト

トマト

爽やかな酸味が特徴的なトマトは、夏に収穫の時期を迎えるため、5月を目安に植え付けを行うのがおすすめです。トマトは、ジメジメした湿度の高い環境を嫌うため、なるべく梅雨入り前に植え付けを済ませておくとよいでしょう。

キュウリ

キュウリ

トマトと同じく夏に旬を迎えるキュウリは、晩春から初夏にかけて稀に発生する晩霜(ばんそう)によるダメージを受けないように気をつけましょう。具体的には、4月下旬〜5月上旬に植え付けを行うとよいですよ。

キャベツ

キャベツ

キャベツには、3月下旬から4月中頃に苗を植え付け梅雨や夏に収穫する春まきキャベツ、8月中頃から9月中頃に苗を植え付け冬に収穫する夏まきキャベツ、11月に苗を植え付け翌春に収穫する秋まきキャベツがあります。お住まいの地域や栽培する品種によって植え付け時期が異なりますのでご注意ください。

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タネから育てたほうがよいケースもある

ここまで、野菜の苗の種類や選び方、購入の時期や植える時期について説明しました。しかし中には、苗ではなくタネから育てたほうがよい野菜もあります。

とくに、芽が出た場所から移すとダメになってしまう大根やニンジン、カブなどの根菜類は、タネから育てたほうがよいといわれています。根菜類は直根性であることが多く、タネから出た根は枝分かれすることなく、土中深くに伸びていきます。

ただし、根が途中で折れたり、ダメージを受けたりすると、それ以降の成長が極端に悪くなります。このような直根性の野菜は苗を作って畑に定植するよりもタネを畑に直接まく方が栽培しやすくなります。

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札埜さん

また、ホウレンソウやコマツナなどの葉物野菜は発芽が簡単で、栽培期間が30日から45日程度で短いため、苗作りをせずにタネを畑に直接まく方が労力も少なく効率的です。

まとめ

よい苗を選べば、育てる手間も比較的少なく済みますし、おいしい野菜も作れます。反対に、あまり状態のよくない苗を選んでしまうと、栽培にかなり手間がかかるでしょう。

ぜひ、良い苗の選び方を参考に家庭菜園を楽しんでくださいね。

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