鋭く太いトゲをもつサボテンの一種、アストロフィツム属の「ハンニャ(般若)」は、名前のイメージとは裏腹に、生長すると甘い香りの美しい花をつけるサボテンです。また、比較的ゆっくりと生長するものの、適した環境であれば1mもの高さまで育つ、育て甲斐のある品種でもあります。

今回は、そんなハンニャ(般若)の育て方から日常の手入れ、注意するべき病害虫までを、一挙解説します。

ハンニャ(般若)はどんな植物?

ハンニャ(般若)は、サボテン科アストロフィツム属の多肉植物です。

アストロフィツム属は、アメリカのテキサス州からメキシコにかけて分布しているサボテンです。緑の茎の表面に点在する模様が夜空の星のように見えることから、また模様がない緑一色の品種や、真上から見ると模様が星型に見える品種もあることから、「有星類」と呼ばれています。

有星類のサボテンは、「カブトマル(兜丸)」や「ランポウギョク(鸞鳳玉)」のようなトゲのない品種もありますが、「ハンニャ(般若)」はトゲが発達した品種で、なかには黄色いトゲを持つものも存在します。アストロフィツム属のサボテンのなかでも、サボテンの本体部分の成長は比較的ゆっくりと大きくなる品種で、環境が合えば腰高くらいまで生長します。原産地では、直径30cm、高さ1m以上に生長するものも。

ハンニャ(般若)の特徴は、真上から見て放射状に広がった8本の稜線。これらの稜線の切り込みが深く、らせん状に緩やかにカーブしていることも、ハンニャ(般若)の特徴のひとつです。太く鋭いトゲは、稜線に沿って点在しています。

また、ハンニャ(般若)のなかには、白い星のような斑点模様がつく品種だけでなく、斑点をもたない「青般若」という品種もあります。

ハンニャ(般若)を育てる環境

ハンニャから咲いた黄色の花

ハンニャ(般若)が好む日当たり・温度

ハンニャ(般若)の原産地は、太陽光が降り注ぐアリゾナ州~メキシコ北部。気候帯でいえば、乾燥した熱帯~ステップ気候の地域です。

ステップ気候といえば、昼と夜の気温差が激しい気候。このため、ハンニャ(般若)は耐暑性も耐寒性も比較的高いです。

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岩瀬さん

日中の直射日光にも耐えますが、購入後すぐに直射日光を当てると日焼けをすることがあります。真夏の直射日光は避けたほうが無難です。

一日に4~5時間程度の直射日光が当たる環境を好み、最もよく生育する気温は、20~35℃です。これを上回ったり、逆に20℃を下回ったりすると、生育が緩慢になります。屋外で10℃以下の状況では、冬越しが難しくなります。

ハンニャ(般若)は、株が成熟すると、春から夏にかけて黄色い大きな花を咲かせます。開花を目指して栽培する場合は、単に株を楽しむ場合と比べて繊細な管理を要します。花を咲かせるには、しっかりと日当たりが確保できる場所で育て、肥料を与えて開花を促すことをおすすめします。

もっとも、真夏に5時間以上の直射日光にさらされると水分を多く奪われて弱ることがあります。株の状態を観察しつつ、置き場所を調節してみてください。

ハンニャ(般若)の水やり

ハンニャ(般若)は、乾燥にも強いサボテン科の植物です。よって、夏場は育成が遅くなる時期なので毎日水やりする必要はなく、ひと月に2回ほどの給水で十分です。

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水やりのタイミングは夕方をおすすめします。日中に多くの水分が用土の中にあると水温が上がってしまい、蒸れを起こすためです。

1回の水やりでは、鉢の底から水が沁みだすくらい、たっぷりの水を与えます。鉢皿に貯まった水は、根腐れ防止のために必ず捨てるようにしてください。

ハンニャ(般若)の生長が止まる冬場(気温が12~13℃になる頃)は、乾燥気味に育てたほうが春の花つきがよくなります。冬場の水やりは、月に1回で足ります。ただ、害虫の寄生(ハダニ)を防ぐために、霧吹きなどで葉水をしておくことをおすすめします。

ハンニャ(般若)の土と肥料

ハンニャ(般若)は、通気性のある土壌を好みます。市販のサボテン用土でもよく育ちますが、用土を自作する場合は、砂または小粒の軽石:赤玉土を5:5で配合するとよいでしょう。

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あまり細かい用土にすると乾燥が遅くなるので注意が必要です。

ハンニャ(般若)は、他の多肉植物同様、用土の水分過多による酸素欠乏で根腐れを起こしやすい植物です。土の水はけのよさには特に注意を払いましょう。

ハンニャ(般若)に与える肥料は、開花を目指す場合とそうでない場合とで異なります。苗木だけを楽しむ場合は、窒素肥料を与え、株の成長を促します。一方、開花を目指したい場合は、種まきから2年以上経過した頃に、リン酸やカリウムの入った肥料を与えるとよいでしょう。

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実生から若い個体にリン酸かカリウムを与え過ぎると長く徒長してしまいます。

もっとも、肥料をやりすぎると、肥料焼けして株の発色が悪くなることがあります。株の状態を観察しながら、施肥するかどうかも含め、肥料の量を判断するようにしてください。

ハンニャ(般若)におすすめの土

LGサボテン・多肉植物の土 5L

LGサボテン・多肉植物の土 5L

ハンニャ(般若)の手入れ

トゲが印象的なハンニャ

ハンニャ(般若)の植え替え

鉢の中で根詰まりが起きていると、土の通気性が確保できません。ハンニャ(般若)の生育には、通気性のよい土壌が不可欠なので、2年に1回は植え替えをして根詰まりを解消しましょう。

根詰まりのサインとして、水やり時に吸水スピードが極端に遅くなることが挙げられます。さらに分かりやすい例として、土の表面や鉢底から根が飛び出している場合や、プラ鉢が硬くなり吸水しにくくなる場合があります。

根詰まりを解消するには、鉢から株を取り出して植え替えを行いましょう。ハンニャ(般若)の特徴であるトゲが刺さらないよう、厚めの軍手かトングのような道具を使って植え替えてください。

植え替えの適期は、4~5月または9~10月。植え替えに先立ち、数週間水やりを控えて株を乾燥させた後、鉢から根鉢ごと取り出します。古い根を清潔なハサミで切り取って整理したら、新しい用土を入れた鉢に株をふたたび植え付け、そのまま1週間から2週間ほど置きます。

水やりは、植え替えから2週間ほど経った頃に再開しましょう。

ハンニャ(般若)の剪定

ハンニャ(般若)は生育スピードが緩慢なうえ、葉を繁らすタイプの植物ではないため、剪定は基本的には不要です。そのため、花が咲いた後のしおれた花や茎を除去する程度で十分でしょう。

枯れた花や茎は取り除いておくと、健康な部分の生育促進や病害虫防止になります。

ハンニャ(般若)の増やし方

ハンニャ(般若)は、種まきで増やすことができます。種まきの適期も、植え替えと同じ4~5月が育成が楽ですが、9~10月頃でも種まきは可能です。

種まきで増やせるのは、ハンニャ(般若)が花をつけ自家受粉ができた場合のみですが、開花して種がとれたらぜひ種をまいてみてください。

用土に種をまいたら、湿度を保つために土の表面をフィルムで覆っておくとよいでしょう。発芽したら、フィルムをはがして鉢に植え付けます。植え付けるための用土は、清潔で通気性のよいものを使用しましょう。

ハンニャ(般若)の栽培で気をつける病害虫

ハンニャ(般若)がかかりやすい病気

ハンニャ(般若)がかかりやすい病気は、茎の軸が枯れてしまう茎腐病です。

茎腐病は、土壌伝染病の一種で、汚染された用土が発生源となります。この病気にかかってしまうと、茎に黄色みがかった茶色やグレーの斑点が出たり、濃い緑になり茎が柔らかくなり腐ってしまいます。最終的には茎が水分を失って枯れてしまいます。

茎腐病の予防および害虫予防のためにも、植え付けや植え替えには清潔な用土を使用しましょう。土の水はけのよさを保つことも、予防のポイントです。

ハンニャ(般若)につきやすい害虫

ハンニャ(般若)には、ハダニやアブラムシがつきやすい傾向があります。これらの害虫は植物に寄生し、汁を吸うことで生育を妨げます。また、老廃物が原因で病気を引き起こしたり、発色を阻害したり、酷い場合には枯らせてしまうこともあります。

ハダニは非常に小さく、肉眼ではなかなか気付きにくいのですが、細いクモの糸のようなものが絡まっていたらハダニが発生しているサインです。水に弱いので、霧吹きなどで水をかけて駆除しましょう。

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岩瀬さん

多数発生すると表面の色も悪くなる場合もあります。ハダニ対策としては、ダニ用の殺虫剤が有効です。

アブラムシも同様に、少数であれば水で洗い流して駆除できます。ただし、数が増えてくると、薬剤を散布しても駆除しきれないほどの個体数になります。

ハダニもアブラムシも、いちど増えるとなかなか駆除しにくい厄介な害虫です。風通しの確保や葉水をこまめに行い、発生前にできる限り予防しましょう。

おすすめの殺虫剤

住友化学園芸 ベニカXファインスプレー1000ml

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まとめ

ハンニャ(般若)を育てるポイントは、日当たりがよく、風通しのよい場所に置くこと。そして、土の通気性を確保することです。

花を咲かせたい場合は、施肥や日当たり、気温の調節にも繊細な管理が必要ですが、基本的には水やりの頻度も少なくて済み、育てやすいサボテンです。

「有星類」のサボテンの特徴である星のような斑点の出方にもそれぞれ個性がありますので、ぜひお気に入りの株を見つけて育ててみてくださいね!

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