「突っ張り棒」と言えば、日本でおなじみの便利アイテム。左右の壁にグッと突っ張らせるだけで、クローゼットのポールのように収納スペースを生み出せるなど、住宅内を中心に大活躍するツールです。
そんなおなじみの突っ張り棒ですが、ここ数年で「知られざる活用方法がまだまだ無限にある」と注目を集めています。
注目度上昇のキーパーソンとも言えるのが、2015年から突っ張り棒の業界トップシェアメーカー、平安伸銅工業株式会社の3代目社長を務める竹内香予子さん。つっぱり棒研究所の所長でもあり、「つっぱり棒博士」としても知られる竹内さんからは、突っ張り棒の活用方法やアイデアが続々と発信されていて……。
突っ張り棒を150本以上活用している竹内さんのご自宅
突っ張り棒を熟知し、新しい可能性の研究にも力を注ぐ竹内香予子さんは、ご自宅で150本以上の突っ張り棒を活用しているそう。
今回はそんな竹内香予子さんに、2020年版最新情報を踏まえながら、突っ張り棒のフル活用方法について教えていただきます!
平安伸銅工業株式会社 代表取締役 竹内香予子さん(リモートにて取材)
こんにちは。つっぱり棒研究所の所長の竹内香予子です。
さっそく、突っ張り棒についてお話しします!
まず、突っ張り棒がいつ日本で初めて誕生したのかですが、実は不明なんです。でも、少なくとも1980年代、私の祖父である平安伸銅工業の先々代社長が、海外視察の際にカーテンを吊るすバネ入り器具を見つけて日本へ持ち帰り、日本向けに改良して「突っ張り棒」として国内で販売したという記録が残っています。
突っ張り棒の種類、平安伸銅工業の商品だけで約200種類。他メーカーさんの商品も加えると、今では数百種類にも上ります。
長さは10~280cmくらいまで展開し、耐荷重は最大80kgのものまで。色は多彩で、白や黒、茶、真鍮風の塗装がされたもの、100円均一ショップでは花柄など柄がデザインされたものも販売されています。
ただし、突っ張り棒を「構造」で分類するなら「バネ式」か「ジャッキ式」の2種類のみ。どれも必ずどちらかの構造になっています。実はこの構造の違いが、突っ張り棒を使いこなすための大事なポイントなんです! これについては後ほど詳しくお話ししますね。
バネ式、ジャッキ式、突っ張り式DIYパーツなど、バリエーション豊富な突っ張り棒
そして、年々進化しているのが突っ張り棒の補助アイテムや派生商品。
例えば、補助アイテムの通称「支え棒」は、突っ張り棒を下から支えてくれる強力な味方です。
派生商品では、木材を突っ張り棒のように利用できる突っ張り式DIYパーツ(アジャスター)が人気上昇中!
突っ張り式DIYパーツとは、バネ式突っ張り棒の「バネ」部分や、ジャッキ式突っ張り棒の「ジャッキ」と呼ばれるボルトとナットのようなネジ部分だけを取り出したような商品です。ホームセンターなどで買いやすい規格化された木材に取り付けて使用し、壁や天井など穴を空けたくない場所に柱を簡単に生み出すことができます。
例えば、2×4材や1×4材などに取り付けられる突っ張り式DIYパーツには、バネ式の「ディアウォール」(若井産業株式会社)やジャッキ式の「LABRICO(ラブリコ)」(平安伸銅工業株式会社)などがあります。
また最近では、円柱型木材(丸棒)用の突っ張り式DIYパーツも登場しています。2020年に発売開始した直径30mmの丸棒用の「LABRICO丸棒Φ30シリーズ」(平安伸銅工業株式会社)や、直径24mmの丸棒用の「KINOBO」(アイワ金属株式会社)などです。ご興味があればチェックしてみてくださいね。
円柱型木材用の突っ張り式DIYパーツ「LABRICO丸棒Φ30シリーズ」使用イメージ
次に、突っ張り棒を活用するために大事な「バネ式」と「ジャッキ式」という構造分類について、詳しくお話しします!
まずバネ式。これはパイプ内にバネが入っていて、縮ませたバネが元に戻る力を利用して隙間に取り付ける突っ張り棒です。
メリットは、取り付けや取り外しが簡単なところ。種類が多く、細いパイプのものが多いので、見た目の圧迫感が出にくいのも長所です。一方で、突っ張る力や耐荷重が比較的小さいのがデメリット。用途としては、カフェカーテンなど軽い物をかけるのに向いています。
取り付けるときは、まず取り付けたい隙間よりも数cm長めに調整をするのが肝心。そして、細いパイプのキャップ部分を隙間の片側に当て、太いパイプを細いパイプの方へギュッと押して内部のバネを縮めていきます。バネをしっかり縮ませながら太いパイプのキャップも隙間に押し込んだら、バネを縮ませるのをやめると、バネが元の長さに戻る力で隙間に突っ張り棒を固定することができます。
こうして正しく取り付けることで、取り付け後の強度にぐっと差が出るんです。ぜひ、試してみてくださいね。
バネ式突っ張り棒は縮ませながら隙間に入れ、縮んだバネが元に戻る力を利用して隙間に取り付ける
続いてジャッキ式の突っ張り棒についてです。こちらはボルトとナットのようなネジ部分「ジャッキ」をパイプに内蔵し、そこが伸び縮みすることで壁に圧力をかける構造の突っ張り棒です。
バネ式よりも壁への圧力が強いので、商品によっては最大80kgの耐荷重を実現でき、取り付け後の強度を保ちやすいのがメリットです。衣類をたくさん吊り下げるなど、重い物をかけるのに向いています。
ジャッキ式突っ張り棒を正しく取り付けるには、ジャッキ部分を最初に縮ませておくのが最大のポイント! 「スタート」や「ストップ」など、ジャッキが一番縮んでいる位置を示すサインがパイプに必ず付いているので、そのサインまでジャッキを戻すようにしましょう。
次に、取り付けたい隙間にジャッキ式突っ張り棒を入れます。隙間の長さまで細パイプを引き出したら、細パイプと太パイプを連結させる「長さ固定ネジ」を回し、内側の細パイプに貫通するまでネジを締めてパイプを連結させて、長さを固定します。
最後にジャッキ部分のグリップを回し、しっかり突っ張らせて取り付けを。これで完成です!
「長さ固定ネジ」をパイプに貫通させて突っ張り棒の長さを固定した後、グリップを回して隙間に突っ張っていく
ここまでは、突っ張り棒の構造についてのお話でしたが、それを踏まえて、突っ張り棒の選び方についてご説明します!
まず大前提として、「どこに使うか」を決めて、その隙間の長さを測り、それから突っ張り棒を買う。この順序で買うことが鉄則です! なぜなら、隙間よりも突っ張り棒の長さが足りないと、取り付けできずに「ただの竿」になってしまうので……。
そして、壁の強度を確かめることも大事です。手でノックするように壁を叩いたとき、軽くて響く音がする壁は薄くて強度が低いので、強い力で突っ張られることには向いていません。重くて響かない音のする壁は、強度バッチリです。
使う場所を決めて、突っ張り棒を選ぶ段階になったら、大事なポイントは2つ。突っ張り棒の長さと耐荷重です。
長さについては、スペースに対して足りていることはもちろん、実は棒の強度にも影響するんです。「突っ張り棒はパイプの重なりが多いほど強度が出やすい」と覚えておくと良いです。突っ張り棒は、太パイプの内側に細パイプをスライドさせて長さを調整する仕組みになっています。この2本のパイプの重なっている部分が多いほど、物をかけたときに重力でパイプがたわんで落下するのを防ぐことができます。
例えば、使いたい隙間が120cmだとして、最大限に伸ばして120cmに足りるものよりも、115~190cmなど長さに余裕のあるものを短く使うようにするのがベターです。
耐荷重については、「どれくらいの重さの物をかけたいのか」を確認するのが大切。例えば、Yシャツの重さは1枚250~300gほどですが、20枚かけるなら耐荷重は5~6kg以上欲しいところです。かつ、耐荷重がより大きいジャッキ式突っ張り棒を選ぶといいですね。
ここからは、突っ張り棒1本でできる初級編から、複数本組み合わせる上級編まで、突っ張り棒の活用アイデアを一部ご紹介します!
使用突っ張りアイテム:バネ式突っ張り棒1本
冷蔵庫内のドアポケットに、短めのバネ式突っ張り棒を取り付け、S字フックをかけて収納力アップ。
チューブ調味料をクリップで挟んで吊るせば、何がどこにあるかひと目でわかり、チューブの中身を自然に蓋の方へ寄せることもできて一石二鳥です!
引き出し内をバネ式突っ張り棒でカスタマイズします。
使用突っ張りアイテム:バネ式突っ張り棒1本
突っ張り棒をペーパーホルダーの芯棒代わりに使って、キッチンペーパーを引き出し内にすっきり収納。引き出し側面に力をかけ過ぎないよう、バネ式タイプの突っ張り棒を軽めに突っ張らせておくのがおすすめです。
使用突っ張りアイテム:バネ式突っ張り棒2本
デッドスペースに思いがちなテーブル裏も、幕板に突っ張り棒2本を取り付ければ収納スペースに!
ティッシュボックスを逆さまにセットすれば、そのまま1枚ずつ取り出せて快適です。
本棚のディスプレイやブックエンドにも突っ張り棒は活用できます。
使用突っ張りアイテム:バネ式突っ張り棒2本(上段)、バネ式突っ張り棒1本(下段)
突っ張り棒を横に2本取り付けた間に洋書を差し込んで、ちょっとお洒落なディスプレイを作ってみました。下段では、突っ張り棒を縦に取り付けてブックエンドとして使っています。
オーニングの目隠しで生活感をカットするアイディアです。
使用突っ張りアイテム:バネ式突っ張り棒2本
冷蔵庫上をカフェ風のオーニングに装飾して、生活感を抑えることができます。突っ張り棒2本を平行に配置し、好きな布を被せて、奥の突っ張り棒とテープで固定するだけで完成です!
コンセント周りのごちゃつきを解決することも可能です。
使用突っ張りアイテム:突っ張り棚1個
コンセント周りは、複数のコードがごちゃごちゃとぶら下がりがち。そこで、コンセント近くの隙間にミニサイズの突っ張り棚を取り付け、コードを面ファスナーでまとめて棚のパイプに固定。見た目すっきり、コードの絡まり防止にも役立ちます。
突っ張り棒を活用すると、来客時に、洗濯物を干したまま隠すこともできます。
使用突っ張りアイテム:ジャッキ式突っ張り棒2本
窓辺などにジャッキ式突っ張り棒2本を平行で使うと、さらに便利に! 窓側は洗濯物干し用に、部屋側にはカーテンを取り付けておけば、洗濯物の部屋干し中に来客があっても、カーテンをサッと閉めるだけで隠すことができます。
空間に柱を立てて、間仕切り兼ラダーシェルフにもできます。
使用突っ張りアイテム:突っ張り式DIYパーツ2セット、棚受けパーツ4セット、バネ式突っ張り棒2本
木材に突っ張り式DIYパーツをセットし、空間に柱を2本生み出しました。柱の間にできたちょうどよい幅の隙間に、棚受けパーツで棚板を取り付けたり、突っ張り棒を横に取り付けたりすると、間仕切りにもなるラダーシェルフが完成!
突っ張り棒についてのお話、いかがでしたでしょうか? 隙間さえあれば無限の活用チャンスがある、というのが突っ張り棒の持ち味。私の場合、「この隙間、何か突っ張れないかな?」と想像したり、暮らしの中で感じた困りごとを「突っ張り棒を使って解決できないかな?」と考えたりしていると、アイデアが浮かぶことが多いです。
みなさんもぜひ、突っ張り棒をいろいろに活用して暮らしに役立ててみてくださいね。
つっぱり棒博士・竹内さんのお話を伺い、取材チームも突っ張り棒を使ったアイデア実践に挑戦! カインズで購入した商品を使って、簡単におうちDIYできました。
ダイニングテーブルの天板裏側にバネ式突っ張り棒2本を使って、ティッシュボックス収納を作りました。食事中にサッと取り出せて使いやすさ抜群です!
窓辺に洗濯物を干せるように突っ張り棒を設置。耐荷重の大きいジャッキ式を選んだので、いくらでも干せそうです!
玄関の真っ平な壁に突っ張り式DIYパーツと2×4木材で柱を立てて隙間を生み出し、ネジで取り付けられる伸縮ロッドを使った収納スペースを作成! 木材はカインズ店舗で欲しい長さにカットしてもらいました。
高い位置にはコートやジャケットなどのアウター類をかけて、ハンガーラックとして使用。S字フックを使えばバッグや帽子などもかけられます。
家族みんなの手が届く低い位置には、傘や小物類、子供の持ち物などを。わずかなスペースに便利な収納スペースを作ることができて大満足です!
・ラブリコ 伸縮ロッド S アイアン ブラック(50〜70cm) ×3
(木材カット代 まとめて30円)
・Sカン店舗用フック ステンレス 93mm(3P) JK191
初心者でも簡単にできた、突っ張り棒を使ったおうちDIY。みなさんもぜひ突っ張り棒DIYに挑戦して、快適な暮らし作りにお役立ててください!
※となりのカインズさんには、お取引メーカー様が記事を投稿したり、オウンドメディアの記事を転載したりすることも可能です。詳細は、となりのカインズさん編集部までお問い合わせください。