アメリカアジサイ(アメリカノリノキ)のアナベルは、大きな白い花を付ける花です。意外に育てやすく、一般的なアジサイよりも剪定が簡単なことから、園芸初心者にも人気があります。

本記事では、アナベルの特徴や育て方、注意点をわかりやすく解説します。花言葉や花の魅力といった雑学も紹介しますので、栽培の参考にしてください。

アナベルはアジサイの仲間

一輪のアナベル

アナベルはアメリカアジサイの品種の一つです。アメリカアジサイは一種の俗称で、正式な和名をアメリカノリノキといいます。

和名には「アジサイ」の名前はありませんが、学名ではハイドランジア・アルボレスケンス(Hydrangea arborescens)とよばれ、一般的なアジサイと同じアジサイ属(ハイドランジア属)の植物です。

同様に、名前にアジサイとつかないアジサイの仲間には、ノリウツギ(ハイドランジア・パニキュラータ Hydrangea paniculata)などがあります。

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アナベルの特徴

地植えのアナベル

アナベルに関する特徴について、学術的な情報から雑学まで幅広く解説します。

アナベルの基本情報

アナベルの花の色

アナベルの花を観察すると、しだいに花の色が変わっていく様子に気がつきます。

まず、咲き始めのつぼみが多数ある状態では、緑色がかった花を咲かせます。花が咲ききると、丸く白いボールのような状態に。そして花が咲き終わるころには、再び緑を帯びた茶色になり枯れていきます。

これまでアメリカアジサイは白花のアナベルが主流でしたが、近年ではピンク色の品種も人気です。

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アナベルの花の形

アナベルの花の形は、一般的なアジサイとほぼ同じです。

アナベルを遠目で見ると、大きなふんわりとした白い花が並んでいるように見えます。しかし、それぞれの白い花をよく見てみましょう。大きな白い花は、細かな花がぎっしり集まった集合体(花房、かぼう)であることがわかります。

なお、花房は、一つあたり30cmほどの大きさにもなり、大いに見応えがあります。

アナベルの名前の由来

アナベルの名前の由来としてさまざまな説があります。

たとえば、エドガー・アラン・ポーが最後に残した詩「アナベル・リー(Annabel Lee)」に由来するという説、古代ローマの男性名「アマビリス」を女性化したアナベルに由来するという説などです。

ほかにも数々の説はありますが、現代ではどの説が正しいかは判断できません。

アナベルの花言葉

アナベルの花

アナベルには「ひたむきな愛」「辛抱強い愛情」などの花言葉があります。色によっても意味合いは変わり、たとえばピンクのアナベルの花言葉は「寛容な女性」です。

アナベルならではの魅力

アナベルは、見頃をすぎたあとはドライフラワーとしても楽しめます。アナベルの花の魅力を紹介します。

アナベルの花は色の変化を楽しめる

咲き進むアナベル

アナベルの花は開花中に色を変え、見る人の目を楽しませてくれます。

花の咲き始めは、ライムグリーンのつぼみがひしめきあった状態です。続いて白い花が咲き、しだいにふわふわとした丸い形ができあがります。なお、盛りを終えた花は、趣のある茶色にゆっくり変化し、まるでアンティークアクセサリーのように変化を遂げます。

アナベルの花はドライフラワーにできる

アナベルのドライフラワー

移りゆく色の変化を楽しめるアナベルの花は、ドライフラワーにもおすすめです。ドライフラワーを作るときは、枯れる前のきれいに茶色くなったアナベルを切り取り、室内に保管しましょう。すでに茎に回る水分は少なくなっているため、手間なく切り取れます。

また、翌年も花を楽しむには、つぼみを残して切り取りましょう。

一般的なアジサイとアナベルの違い

アナベルはアジサイの一種ではありますが、決定的な違いがあります。一般的なアジサイとアナベルの違いを解説します。

剪定時期が違う

アナベルの剪定

アジサイは7月中に剪定しましょう。アジサイは夏から秋にかけて翌年咲く花芽を成長させるため、前もって余計な枝を切っておく必要があるのです。冬に剪定すると花芽を切り落としてしまうことがあるので、注意しましょう。

一方のアナベルは、春までは花芽がなく、春以降に伸びる芽が伸びながら花芽を作っていきます。そのため、春先に伸び始めた枝を切ってしまわなければ、一般的な落葉樹のように秋〜冬に剪定可能です。

アナベルの詳しい剪定方法については、後ほど詳しく解説します。

適した栽培環境が違う

日当たりのいい丘のアナベル

一般的なアジサイは、日陰でもよく育ちます。一方、アナベルはアジサイの仲間ではありますが、あまり日陰になる場所は苦手です。きれいな白い花を咲かせるには日光をたっぷり当てて育てましょう。また、一般的なアジサイの方が水を好み、水切れに弱い性質があります。

アナベルの詳しい栽培環境については、後ほど詳しく解説します。

アナベルの育て方

アジサイの栽培道具

アナベルの育て方について、植えつけや日常的な世話、夏越し・冬越しなどに関してポイントを押さえて解説します。

アナベルを育てる場所

アナベルは地植え、鉢植えの両方で育てられます。地植え、鉢植えとも日当たり・水はけ・風通しが良好な場所で育てます。

地植えは水切れに気を付けましょう。アナベルは降雨でも育ちますが、強すぎる西日は乾燥が進む可能性があり、水切れを起こさないように気を配ってください。また鉢植えの場合は、10号(直径30cm)鉢程度の大きな鉢を使うと水切れのリスクを抑えられます。

アナベルは一般的なアジサイよりも大型のアジサイです。もし広い庭があればアナベルは大胆に広がって楽しめますが、鉢植えでも十分に美しい花を咲かせられるでしょう。

アナベルに適した土

植えつけの適期は落葉した11〜2月です。地植えにする場合は、直径30cm、深さ30cmの植え穴を掘ります。そして、植え穴の表面が見えなくなる程度に腐葉土か牛ふん堆肥を撒き、よく土と混ぜ合わせておきます。

鉢植えは市販の草花用培養土か、中粒の赤玉土7に腐葉土か牛ふん堆肥を3配合した用土などで植えつけます。

プランターの土 25L H

プランターの土 25L H

アナベルは冬に剪定しても初夏には花が咲くので、一番下の芽の上で剪定しておくと作業がしやすいです。

市販のアジサイ用土は、赤花や青花を咲かせるために酸度(pH、ペーハー)が調整してありますが、アナベルは固定された花色が咲く品種のため、とくにアジサイ用の土を使う必要はありません。

アナベルの肥料

アナベルに適した肥料は、緩効性化成肥料です。

植えつけ・植え替え時には、土に肥料を混ぜ込んでおきます。植えつけ、植え替え後は落葉している11〜2月に固形の肥料を与えます。土の表面に肥料を撒いて、軽く土をレーキなどでならして肥料と土をなじませておくと効果的です。

すべてのつぼみが開ききったら、固形肥料を土の表面に撒いておきます。

なお、市販の培養土にはもともと肥料が配合されていますが、植えつけや植え替えの際は、さらに元肥を混ぜ込んでおくことでアナベルの生育が良くなります。

アナベルの水やり

アナベルは水を好みますが、地植えであれば水やりは不要です。ただし鉢植えは乾燥しやすいため、こまめに土の状態を確認しましょう。土の表面が乾いていれば、鉢底からたっぷりと水が流れ出るほど与えましょう。目安としては、夏場は朝と夕方の2回、冬場は4日おきを目安に水やりをします。

アナベルの剪定

アナベルは、基本的に開花後から春先の芽吹きの時期まで、いつ剪定してもかまいません。大きな花を咲かせたい場合は、枝を大胆に切り詰めましょう。剪定しなくても花は咲きますが、春からさらに枝が伸び、株がどんどん大きくなっていきます。

数年に一度、一番下の芽まで切り詰めるような剪定を行えば、毎年剪定する必要はありません。

アナベルは非常に花が大きくなるため、樹高が高くなると花の重みで垂れ下がって咲き、見栄えがよくないこともあります。必要に応じて支柱で花を支えることも可能ですが、それを防ぐためにも、あまり背が高くなりすぎないよう剪定しながら育てるのがおすすめです。

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古屋さん

最近では茎がしっかりしていて花の重みで倒れない品種や、花数が多い品種が登場しています。一般的に出回る品種よりも高価ですが、何年も楽しめる植物なので後々の管理の手間が省けます。高価な苗を購入するのは少しためらいますが、数年単位で考えるとコスパが良いですね!

アナベルの植え替え

アナベルは根の成長が早いため、1~2年ごとに植え替えが必要です。冬に葉を落としてから、3月になるまでに植え替えましょう。

具体的には一回り大きな鉢を用意し、アナベルの土を落として植え替えます。株を成長させたくない場合は、根鉢をくずして根を1/3ほど根鉢を切り詰め、もとの鉢に植え直します。

なお、地植えの場合、植え替えは不要です。

アナベルの夏越しと冬越し

アナベルは暑さ、寒さに強い植物です。適切な準備をすることで、さらに長く美しい花を楽しめます。

夏の暑い時期に鉢に西日が当たると、鉢土が乾きすぎたり、根が高温で傷むことも。土が乾ききる前に水やりをするとともに、鉢が熱くなりすぎないような工夫をすると、株が健康に育ちます。

コンクリートの床に直に置いているようなら、棚やスノコで少し高さを上げてあげたり、鉢に日が当たらないように日よけをするなどの工夫を。アナベルを植えている鉢を一回り大きな鉢の中に入れるのも、根が高温にさらされるのを避けられます。

地植えは基本的に水やりなどは不要ですが、夏の暑い時期は、株元をマルチングで覆って土の乾きすぎを防ぎます。腐葉土やウッドチップ、バークチップ、ワラ、マルチングシートなどさまざまな資材を使って土を覆いましょう。

冬の寒さが厳しい地域では、株元をマルチングすることで根が寒さを避けられます。また、雪が多く降るエリアでは、枝が重みで折れないよう剪定しておきましょう。寒さが本格化する前、秋頃の剪定がおすすめです。

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古屋さん

ベランダや西日が入る場所は夏場の高温に悩まされることも。特にプラスチック製の鉢は、土の温度が上がりやすく植物がぐったりしてしまいます。そんなときは、一回り大きな素焼きの鉢を鉢カバーにするだけでも、土の温度上昇がかなり防げるので便利です。

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アナベルの増やし方

元気な枝を切る

アナベルは挿し木で増やすことが可能です。詳細な挿し木の方法を解説します。

アナベルの挿し木の方法

アナベルは、6~7月頃に挿し木で増やせます。挿し木の手順は以下のとおりです。

  1. 苗を育てるためのポット(直径9cm程度)と小粒の赤玉土を用意します。ポットの縁から1cmほどのところまで赤玉土を入れ、たっぷりの水を与えて土を湿らせておきます。
  2. 春先から新しく伸びた枝の先端を、葉を6〜8枚付けて切ります。
  3. 一番下の葉の3cmほど下で枝の切り口を斜めにカットし、一番下の葉と先端の芽を切り取ります。
  4. ピンセットや割りばしで土に穴をあけ、3.で斜めにした切り口を穴に挿します。必ず、一番下の枝がついていたところが土に埋まるように挿しましょう。
  5. 鉢受け皿などに水を1cmほど溜め、挿し木をしたポットをその水に浸けて日陰で管理します。土が乾かないように注意しましょう。
  6. 根がポットの底穴から見えてきたら挿し木は成功。根鉢をくずさないように5号(直径15cm程度)の鉢に植え替えて株を充実させます。鉢植えとして育てる場合はそのまま育て、庭植えにする場合は、落葉してから庭植えにします。

挿し木がうまくいっているかどうか見た目ではわかりにくいですが、根が出ているかどうか挿し穂を引き抜いたりすると成功率が下がります。比較的、挿し木で増やしやすい植物なので多めに挿し木するなどして、あとはあまり動かさず管理するのが成功のコツです。

アナベルを育てる際の注意点

アナベルは病害虫に強い植物ですが、まれに害虫や病気に悩まされます。害虫や病気の詳細から、対処法まで解説します。

害虫に注意

カミキリムシやハダニがつくことがあります。カミキリムシは、幼虫が枝のなかに入り込み、株を枯らしてしまいます。幼虫が潜む穴に殺虫剤をふきかけるか、針金などでかき出しましょう。

ハダニは乾燥していると発生しやすくなります。水やりのついでに、葉の裏に水をかけると予防になります。発生していたら適用のある薬剤で防除するか、頻繁に葉裏に水をかけます。

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病気に注意

アナベルは、うどんこ病やモザイク病にかかりやすいです。

うどんこ病になると、葉の表面に「うどんの粉」のような白いカビがつきます。範囲が拡大する前に、病気の部分を切り取りましょう。適度に水をやり剪定で風通しをよくすると、うどんこ病を防げます。

モザイク病は、葉が黄色くまだらになったり、変形したりする病気です。病気になった部分は回復しないので、速やかに切り取ります。アブラムシが媒介する病気なので、アブラムシを見つけたら薬剤で防除するか、ホースの水で吹き飛ばして追い払いましょう。

まとめ

アナベルはアジサイの一種で、花の色は白とピンクの2種類です。しだいに色が変わる花の様子を眺めたり、ドライフラワーにしたりとさまざまな楽しみ方があります。初心者でも手軽に育てやすいため、栽培を検討してみてはいかがでしょうか。

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※効果は使用環境や使用状況により異なります。
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