大切に育てている植物には病気や害虫の被害にあわずに元気に育ってほしいものですね。
しかし植物にはさまざまな病害虫による被害の恐れがあります。その中でもよく目にする黒点病(黒星病)。
特にバラにとって厄介とされている黒点病とはどんな病気なのでしょうか。この記事では黒点病の症状や発生原因、防除や治療方法について解説します。
黒っぽい斑点が多数みられる葉を見たことはありませんか? そんな葉を見かけたら、黒点病を疑ってみてください。
名前の通り黒い斑点が見られることから黒点病と呼ばれますが、正式には黒星病という名称がつけられています。
バラやリンゴ、キュウリ、ソヨゴなどさまざまな植物にみられる病気ですが、特にバラでは主要病害とされていて、注意が必要です。
他にも、ウメやモモなどのバラ科の果物も発症しやすく、果実に黒い斑点が生じてしまうこともあります。
バラの場合には、葉に黒い小さな斑点ができ、それが拡大していきます。さらに進行していくと株全体に斑点が広がり、黒い斑点の周りが黄色く変色していきます。最後には枯れて落葉し、植物全体が衰えて枯死してしまうのです。
果樹の場合には葉が落ちたり、果実に病斑ができたりもします。病斑から裂けて割れてしまうなど、生育も悪くなるので品質が下がってしまい、収穫量も減ってしまうので注意が必要です。
黒点病はカビの中まである糸状菌が原因で発症する病気です。病斑にできた黒い粒やすすのようなものはカビの胞子で、雨などによって周囲に飛んで感染を広げてゆきます。
病原菌は感染した葉や枝などに侵入したまま越冬し、翌年以降の感染源にもなります。枯れ落ちた葉や茎などが感染したまま土に残り、雨などの水の跳ね返りによって葉の裏から伝染していくのです。
気温が20℃以上と比較的高く、湿度の高い時期に発生しやすく、5~7月・9~11月の雨が多い時期には要注意。光合成が十分に出来ず、一時的に弱っているタイミングで感染してしまうということも多いようです。
バラで被害が出ることの多い黒点病ですが、もともとバラは病害虫の被害が多い植物です。黒点病と症状が似た病害もあるので、違いを確認してみましょう。
べと病に感染したバラの葉
べと病もカビが原因で広がる病気で、始めは黄色っぽい斑点ができます。放っておくと黒っぽく変色するので、黒点病と勘違いしてしまうかもしれません。
べと病の病斑は紫がかっていることや、不定形な形のシミが特徴です。
また、べと病の発生時期は気温が15~20℃の時期なので、春先から一番花の前あたりが発生しやすいといわれています。
いずれにしても湿度が高く、風通しが悪いと感染が拡大しやすいので、予防や感染してしまった後の対策が大切です。
薬害とは、薬剤の散布によって葉が黒っぽく焼けてしまったり、ケロイドのように傷ができてしまったりする症状をいいます。
見た目は多少悪くなってしまいますが、生育には問題がありません。
薬剤のラベルに書いてある推奨希釈濃度よりも濃くしてしまったり、散布後に気温が高くなったりすると薬害が出やすくなります。
薬剤を散布した後にできたり、症状が進行しないようであれば薬害と判断して良いでしょう。
黒点病は感染力も強く広がりいやすいため、感染する前に予防することが大切。
まずは感染しないように防除する方法をご紹介します。
黒点病は罹患から1週間程度で株全体に蔓延してしまうともいわれています。そのため、日ごろからよく観察し、病気にいち早く気づくことが重要です。
特に株の内部の葉が込み合った場所などから発生しやすいので、注意して確認してください。
初期段階であれば治療することも可能ですので、日々よく観察を続けるようにしましょう。
枯れて落ちた葉はこまめに拾って処分しましょう。放置していると病原菌の繁殖や越冬などを手助けしてしまうかもしれません。
適当に捨てるのではなくビニール袋に入れて処分するなどして、菌を残さないように注意してください。
チッ素過多の状態や肥料不足は病気を発生しやすくします。バランスの良い肥料を必要な量与えることがさまざまな病気の予防にもつながります。
カビ菌が原因の病気ですので、定期的に殺菌剤を散布することが予防につながります。
耐性がつかないように、複数の薬剤をローテーションして使うと効果的です。
黒点病は雨や水やりの水が土から葉に跳ね返ることで感染する場合が多いので、水が跳ね返る状態を少なくすることが大切です。
鉢植えであれば雨が当たらないように移動させたり、水やりの時は根元にやさしく水をかけて、葉に跳ね返らないようにするのも良いでしょう。
植えた植物の株元をビニールで覆ったり、藁や腐葉土、バークなどを広げてカバーすることをマルチングといいます。
土の乾燥や雑草を防ぐなどの効果がありますが、泥跳ねを防止する効果もあるため、黒点病の防除にも有効です。
黒点病は若い葉には出ないという特徴があります。生育期間中は肥料切れに注意しながら、花がらを早めに切って新芽を出させるようにしましょう。
新芽のうちは発症しなくても、生長すると罹患する恐れもありますので、こまめに殺菌剤を散布するようにすると安心です。
こまめに予防や対策をしていても感染を防げないこともあります。
ここからは、もし黒点病に感染してしまったらどのように対策をすればよいか解説します。
初期段階であれば治療も可能ですが、蔓延してしまった場合には完治は難しいため、別途対応が必要です。
株元に近い葉が数枚罹患しているだけの状態であれば、まだ初期段階といえるでしょう。
病斑の出ている葉をすべて摘み取り、その周囲の葉も念のため一緒に処分します。
摘み取った葉は落としたりせず、すべてビニール袋などに入れて処分してください。
病原菌は葉が枯れた後も寄生し、数年は生き続けられるといわれています。
罹患した葉を摘み取ったら、株全体に治療薬を散布してください。
黒点病の治療薬としては「STサプロール乳剤」や「トップジンMゾル」などがあります。3日程度の間隔で3~4回ほど散布しましょう。
これらの治療薬も病斑がでた葉の治療はできません。病原菌が侵入はしているが発症していないという、あくまで初期段階の病原菌を抑える程度の効果にとどまります。
治療薬を散布したら再発が無いかよく確認してください。
もし発見が遅れ、株全体に病斑が広がっていたら、完全な根治は難しいといえます。
いったんすべての葉や枯れた枝を取り除き、処分してください。この時新芽や若葉は残していても大丈夫です。
次に軽く切り戻しをして、全体的に殺菌剤(治療薬)を散布してください。葉だけではなく枝にも病原菌が付着している可能性もあるので、洗い流すようにたっぷりと散布するのがポイントです。
葉が無い状態は弱っている状態なので、肥料は少なめに。芽吹いて来たら、こまめに殺菌剤を散布して予防しながら、雨の当たりにくい場所に移動させて管理すると良いでしょう。
この記事ではバラが罹患しやすい黒点病について予防方法や治療方法について解説しました。
とても感染力も強く、発症例も多い厄介な病気です。あっという間に株全体に蔓延して葉がすべて落ちてしまうこともあります。最悪の場合、これをきっかけにして株が枯れてしまう恐れもありますので、しっかりとした対策をしておくとこが肝心です。