レモンの木に実が付かず困っていませんか? 実はレモンはかなりの肥料食いと言われています。肥料を適切な時期に適切な量を施さなければ、たくさんの良い実がなりません。
そこで本記事では、レモン栽培での施肥の時期や量、肥料の種類について紹介していきます。肥料を与えるタイミングや量、どんな肥料が良いのかなどを解説していくので、ぜひチェックしてみてください。
柑橘類の果樹は他の果樹と比べて樹勢が強く比較的多くの肥料が必要と言われていますが、レモンは柑橘類の中でも、特に多くの肥料を必要とします。
レモンが肥料食いなのには理由があります。1つ目の理由は、枝葉の量が翌年の実の数に影響するからです。レモン1果を成長させるのに25枚の葉が必要という目安があります。
2つ目の理由として、レモンは四季咲き(1年のうち、季節を限らず、何回でも花が咲くこと)の性質があり、特に春から秋にかけて咲く花は、夏に咲く花や秋に咲く花より多く花が咲き、またより多くの実を収穫できます。花を咲かせたり、実を大きくさせたりするためにも肥料が大切です。
国吉さん
肥料は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の3要素が主な成分になりますが、窒素は、主に葉や茎の生育を促し、樹や実を大きくする役割があります。ただ窒素を過剰に施肥すると病気や害虫に弱くなったり、茎や葉ばかりが育ち、実や花がつきにくくなります。
国吉さん
リン酸は、花や実をつくるために必要な要素です。カリウムで根を張り、樹の体内で糖の運搬を促したり、苦手な寒さの耐寒力を向上させたりする役割があります。肥料を施肥する時には、この3要素がバランスよく配合された肥料を使う方が失敗が少ないでしょう。
ゆっくり長く効いてくる有機質肥料が入ったバランスの良い配合肥料を使うと良いですが、早く効果を発揮させたい時には、速効性のある化成肥料を利用します。
レモンは、1年間を通して肥料を効かすために、2月から11月までに5回追肥が必要で、時期によって施肥の意味も変わってきます。施肥の意味を理解することで、追肥のタイミングや量を覚えることができますよ。
2月〜3月頃に春肥、元肥を施すと、芽が動き出す頃から効き始め、葉を元気にしてくれます。樹の活動前に骨粉入り油粕やレモン専用の肥料などを施し、芽が出てくるまでに少しずつ分解させます。1年間に与える肥料の半分を、この春肥で与えます。
鉢植えの場合は、根が鉢いっぱいに詰まる前に、2、3年に1回植え替えが必要になります。植え替えをする場合には、2月ではなく植え替えと同時に元肥を施します。
5月は春肥の効果がだんだん薄れてくる時期です。しかし、枝や葉はますます盛んに伸びていく時期なので、追肥(夏肥)を施します。枝を茂らせるのに有効な追肥のため、枝肥と呼びます。
枝肥もゆっくり長く効かせるために、緩効性化成肥料か、有機質肥料を施しましょう。施す量は1年間に与える肥料の1割程度です。
梅雨に入る頃になると花が咲き始め、7月頃になると実が付き始めます。その頃が追肥の適期です。実を大きく育てるための追肥なので、実肥と呼びます。
実肥も枝肥同様に、緩効性化成肥料か、有機質肥料を年間施肥量の1割程度与えます。
レモンは四季なり性のため、9月でもまだまだ花が咲き、実がなり、春の花からの実も大きくなります。そのため、7月と同様、実肥を年間施肥量の1割程度与えます。
11月になると気温がだんだん落ちてきて、開花も落ち着いてきます。果実がなり消耗した樹に栄養分を補給して回復させるのが目的の「お礼肥(おれいごえ)」を施してあげましょう。施す量は1年間に与える肥料の2割程度です。
11月時点ではまだたくさんの実が残っています。お礼肥なので、施す前に収穫した方が良いと思うかもしれませんが、そのままで大丈夫です。寒い地域では、12月までに収穫した方が無難ですが、暖かい地域は翌年まで収穫することができます。
植物は基本的に根の先端から肥料成分を吸収します。そのため、根の先端あたりに肥料を施すのが効果的です。根に肥料が直接当たると、根が肥料焼けを起こしてしまうので、幹から近いところに施すのはやめましょう。
根が広がる大きさは、枝が広がっている大きさとほぼ同じです。そのため、枝の先端の真下かそれより少し外側くらいのところに肥料を施します。
化成肥料は、表面に均一にまくだけで効果が得られます。有機質肥料は、微生物に分解されないと肥料の効果を発揮しないので、土と混ぜることをおすすめします。土と混ぜることで、分解が進み、早く効果が発揮します。
また、有機質肥料は、においを発するため、においに釣られて虫や鳥が寄ってきます。鳥は土を荒らしてしまうことがあるので、そのような観点からも土と混ぜた方が無難です。
土と混ぜる深さは、10cmくらいを目安にします。樹木を中心に輪を描くように施すと、満遍なく施肥することができます。輪を描くのが難しく面倒な場合には、円周上に等間隔で穴を掘って、施肥する方法もあります。
国吉さん
鉢植えの場合には、鉢の号数を基準に施肥量が決まります。肥料の袋の裏面に書いてある量を参考にして施しましょう。また表面に均一にばらまいておくことで、水やりの際に肥料分が溶けて少しずつ効いてきます。
基本的には1年中、緩効性化成肥料か、有機質肥料を施します。ゆっくりと溶け出す肥料を施すことで、1年中効果を発揮し、花芽の増加、果実の着果や結果の促進、根の強化が期待できます。
国吉さん
窒素、リン酸、カリウムが配合された有機質肥料が入った配合肥料はゆっくりと穏やかに効き、はやく効かせたい時は化成肥料を施すと良いでしょう。また水やりの際に一緒に混ぜて使用する液体の肥料も速効性のある肥料になりますが、長くは土に留まらないので、状況に応じて使用します。
化成肥料は鉱物などの無機物を原料とした肥料です。根から吸収しやすいため、速効性があり、においがないので隣り近所が近い集合住宅や狭い庭の場合でも気にせず使うことができます。特に寒さ避けのために室内で管理する場合には、においのない化成肥料の方が良いでしょう。
国吉さん
袋に記載されている割合を見て、窒素(N):リン酸(P):カリウム(K)の割合が、10:10:10や8:8:8のようなバランスの良い肥料を用います。また一般的な緩効性化成肥料には、肥料が効く期間が記されています。レモンの栽培の状況に応じて使用すると良いでしょう。
肥料の量は、樹や鉢の大きさで変わってきます。目安の量は下表の通りです。
枝張り(※) | <2月〜3月> 春肥 元肥 |
<5月、7月、9月> 夏肥1、2 秋肥1 枝肥、実肥 |
<11月> 秋肥2 お礼肥 |
0.2 m | 60 g | 6 g | 12 g |
0.5 m | 200 g | 20 g | 40 g |
1 m | 300 g | 30 g | 60 g |
2 m | 1000 g | 100 g | 200 g |
4 m | 5000 g | 500 g | 1000 g |
肥料の計量が面倒な場合、ひとつまみは約3g、一握りが約30gぐらいを目安にするとよいでしょう(肥料の種類によって重さが異なるため、肥料袋に書いてある量を参考にするのもよいです)。
※一番枝の長いところから、その反対に伸びているところまでを指します
有機質肥料は魚粉、骨粉入り油かすや牛糞、鶏糞などがあります。有機質肥料は、独特なにおいがあるので、鉢植えなど狭いベランダや室内に持ち込む可能性がある場合には使用しない方が無難です。
国吉さん
また、有機質肥料には土をふかふかに柔らかくする効果があるので、特に地植えでは積極的に取り込むことで、土づくりの効果もあります。
ただし、天然の成分で効果が安定していないのが欠点です。また、微生物に分解されてから、植物に効くので、効果を発揮するまでに時間がかかります。速効性はないものの、持続性が高いので、長期間栽培し、長時間施肥が必要なレモンにはピッタリです。
国吉さん
レモンは、栄養不足や栄養バランスの変化が葉に現れます。なので、葉を観察すれば栄養不足かどうかの判断がしやすいでしょう。
最初は葉脈間が黄色っぽくなり、そのうち徐々に葉全体が変色し、樹勢が弱まってくる症状が見られます。冬に葉が多く落ちる場合は、光合成を行うための葉緑素の原料であるマグネシウムの欠乏かもしれません。マグネシウム自体が不足していたり、カリウムが多いためにマグネシウムの吸収が抑えられていたりする場合もあります。
国吉さん
マグネシウムの欠乏が見受けられた場合には、冬に苦土石灰などを使うと良いでしょう。
国吉さん
葉全体が黄色くなるのではなく、葉脈に緑が残る場合には、光合成を助けるマンガンの欠乏かもしれません。マンガン欠乏の際には、マンガンを含有する肥料を使うと良いですが、初期段階ならば、マンガンを含んだ窒素・リン酸・カリウム以外の微量要素を含んだ液体の活力剤などを使うと良いでしょう
また肥料切れのほかに、日照不足や寒さに当たった時にも、黄色くなることがあります。肥料以外の原因がないかも確認しましょう。土がアルカリ性に傾いている場合にもマンガンが吸収されないため、葉脈が黄色くなります。
肥料は根からだけではなく、葉からも栄養分を吸収することも可能です。肥料切れのサインが出ているなら、速効性がある葉面散布が有効です。葉面散布は、特に窒素とマンガンを吸収しやすい特徴があるため、葉の色が薄くなった時に最適です。
国吉さん
水に溶かした肥料を、枝葉にかけることを葉面散布と言います。市販の園芸用尿素や液体肥料を水で希釈して使用しますが、市販の液体肥料の多くには、マグネシウムや、マンガン、ホウ素といった微量要素も含まれています。
国吉さん
使用方法は、水で1,000倍に希釈したものを霧吹きなどに入れて葉に散布するだけです。葉の表だけではなく、裏面にもかけるとさらに効果的です。
リン酸が少し多めの、窒素:リン酸:カリウムが、6:10:5くらいのものがおすすめです。また、園芸用の尿素を使うこともできます。粉末タイプを300倍に薄めて使いましょう。
肥料を与えすぎると肥料焼けを起こします。特に土の量が少ない鉢植えの場合には注意が必要です。
新しい葉がしおれて、株全体が元気がない場合には、肥料焼けすると、根から水を吸収できず、葉がしおれてしまったり、実が成らないことがあります。ひどい場合には枯れてしまうので注意しましょう。
元気がないからといって、肥料を与えるのは禁物です。肥料が多い場合、鉢のフチや土の表面に白っぽい結晶が現れることがあります。注意深く観察して、肥料切れなのか、肥料焼けなのかを判断しましょう。特に高温が続く真夏、寒さで元気を失われる真冬には特に肥料のやり過ぎに注意しましょう。
肥料焼けをしていた場合には、いつもの水やりの5倍くらいを一気に与えます。肥料分が水に溶け出して、他の場所に流出するので、濃度が薄まります。
これを5日間くらい続けてから様子を見ます。まだ肥料焼けが続くようであれば、同じことを繰り返します。植え替え時期であれば、新しい土に植え替えてしまっても良いでしょう。
レモンは肥料だけではなく光合成によっても栄養補給しています。そのため日当たりはとても大事です。
日当たりが主食、肥料はおやつと考えて、日当たりを最優先にしましょう。
レモンはかなりの肥料食いのため、大きな実をたくさん収穫するには肥料が重要です。
肥料を与える時期は年に5回あり、それぞれ役割が違うので、タイミングや量を把握しておきましょう。緩効性化成肥料か、有機質肥料を伸びている根の先に施すのがポイントです。
レモンは、肥料が少なくても、あげ過ぎても、実が大きくなりません。実を大きくするには、適切な量の肥料を心がけましょう。肥料を正しく施せば、長い期間収穫を楽しめますよ。
国吉さん
そのために十分な枝葉を伸ばすため、しっかりとした根が張るように、そして果実がたくさんなるようにバランスの良い肥料が必要です。