海岸の砂浜や潮だまりなどで出会えることのあるヤドカリ。貝殻を拾うと中にいることもあり、そのかわいさから飼ってみたくなる方も多いようです。
ヤドカリは基本的に丈夫で、きちんと環境を整えてあげればとても飼いやすい生き物といえます。しかし、その「きちんと」というのがわからず、不十分な環境ですぐに死んでしまったという声も聞きます。
そこでこの記事では、ヤドカリの上手な飼い方を注意点と併せて解説します。これからヤドカリを飼う方も、飼い始めで疑問や不安が残る方も、ぜひ参考にしてみてください。
ヤドカリはエビやカニと同じ「十脚目」に分類される甲殻類です。漢字で「宿借」と書くように、主に貝殻を宿として生活しています。貝殻内に体を収めているのは、外敵だけでなく、水温・塩分の低下・乾燥といった厳しい海辺の環境変化から身を守るためで、貝殻に合わせて腹部がねじれているのが特徴です。
ヤドカリは貝殻の中に隠れているため全身を見る機会は少ないですが、腹部に大きな特徴があります。ヤドカリの腹部は、エビやカニと違って柔らかく、目立った節がありません。また、多くの種は、貝の巻きに合わせて右にねじれています。
「十脚」目の名の通り、ヤドカリには胸脚が合計10本(5対)あります。貝の外から見るとハサミ脚2本(1対:第1胸脚)、歩脚4本(2対:第2・3胸脚)しかないように見えますが、実は貝殻の中にもう4本(2対:第4・5胸脚)隠れています。貝殻の中の胸脚は、貝殻内のゴミをかき出したり、貝殻を支えたりするのに役立ちます。ハサミ脚は左右の大きさが同じ種類と違う種類がおり、左右が同じ、あるいは左のほうが大きいのはヤドカリ科、右のほうが大きいのはホンヤドカリ科です。
雌雄の区別は脚のつけ根をよく見るとわかります。メスは(ハサミ脚を入れて)第3胸脚の付け根に、オスは第5胸脚の付け根に生殖孔があります。一部の種では、オスの生殖孔に突起物(精管)がついています。ほかにも、メスは産んだ卵を幼生が孵化するまで抱卵するため、腹部にオスよりも発達した腹肢がついています。
ヤドカリは日本を含め世界中の海に分布しており、なかには河川と海水が接触する汽水域にいる種類もいます。
石原さん
広義のヤドカリ(十脚目異尾下目)には淡水に進出したグループもいますが、いわゆる貝殻を背負うタイプの狭義のヤドカリは、原則、塩分のない場所では生活できません。しかし、バヌアツ共和国にいるヨコバサミ属の Clibanarius fonticola は例外で、唯一淡水に生息しています。
ペットとして人気のオカヤドカリの仲間が熱帯地方に生息しているため、わりと温かい場所を好むと思うかもしれませんが、東北地方が南限といわれる北方系の種類も知られています。
ヤドカリは普段私たちが目にできない深場の海底や、深海で暮らしているほか、干潟や海水浴場の岩場などで見られる種類もたくさんいます。ビーチなどを堂々と闊歩しているのは陸棲のオカヤドカリの仲間でしょう。とはいえ、オカヤドカリもエラが乾燥すると呼吸できなくなるため、いつでも水場に行ける海岸や浜辺から出ることはありません。
ヤドカリは雑食性で、自然界では藻類や魚の死骸などをハサミでつまんで食べています。また、水中に漂う有機物(懸濁物)を長い触角に引っ掛けて食べる種類も知られています。飼育下ではほかの魚の餌の食べ残しを食べてくれることも。この食性から、カニやエビと同じく「海の掃除屋」と呼ばれています。
ちなみに代表的な天敵はタコで、タコから身を守るために毒のあるイソギンチャクと共生している種類もいます。
ヤドカリは10年以上生きる寿命の長い生き物です。飼育下では天敵に食べられる心配がないため、20年ほど一緒に暮らすことも可能でしょう。
十脚甲殻類の腹部には、卵を抱える「腹肢」という脚があります。ヤドカリのメスも、我が子が孵化するまでの間は腹肢で卵を抱いて守ります。孵化したばかりのヤドカリは成体とまったく異なる姿で、海中を浮遊するプランクトン生活を送ります。これを「ゾエア幼生」と呼びます。
幼生の餌は自分より小さなプランクトンで、脱皮を繰り返して親に近い形に変態しますが、まだ体はよじれていません。この時期を「グラウコトエ幼生」といい、グラウコトエ幼生が貝殻を背負うようになると、再び脱皮を経て親と同じ形の「稚ヤドカリ」に変態します。さらに脱皮を繰り返し、体の成長に合わせて自分の体の大きさに合う貝殻を探して引っ越しします。
石原さん
甲殻類の幼生期にはさまざまな名前がついており、「グラウコトエ幼生」はヤドカリ類に独特の呼び名です。最近ではカニ類と同じく「メガロパ幼生」と呼ぶことがあります。グラウコトエとメガロパは同じ発達段階の個体を指します。
ヤドカリは日本だけでも300種類以上、世界には800種類以上いるといわれていますが、ペットに向いている観賞用のヤドカリはごく一部です。ここでは、ペットショップで扱われることの多い種類をいくつか紹介します。
なお、ヤドカリは自然採集も可能ですが、天然記念物に指定されている種類もいます。たとえばオカヤドカリ類は、オカヤドカリ以外も全種が天然記念物であり、採集してはいけません。したがって、ヤドカリを飼うならペットショップで販売されているものを購入したほうが無難です。
体長 | 約6cm |
主な分布 | 小笠原諸島、四国、九州、紀伊半島南部 |
生活様式 | 陸棲 |
寿命 | 10~30年 |
値段 | 300~1,000円 |
オカヤドカリは、沖縄県のビーチではおなじみといえるヤドカリです。名称通り陸棲で、飼育水をあまり必要としないため飼いやすいといわれています(水中では数時間で溺れ死んでしまいます)。
サイズは最大でも6cmほど。外見は全身が褐色です。夜行性のため夜になると活発になり、木に登ることもあります。
決してレアな種類ではなく安価で購入できますが、同じオカヤドカリの仲間であるムラサキオカヤドカリやナキオカヤドカリよりも流通量は少なめ。
体長 | 約6cm |
主な分布 | 小笠原諸島、四国、九州、紀伊半島南部 |
生活様式 | 陸棲 |
寿命 | 10~30年 |
値段 | 300~1,000円 |
ムラサキオカヤドカリは、その名の通り紫の体色をしているオカヤドカリの仲間です(ただし、小型個体は赤・白・薄い茶色などさまざまな色をしています)。浜辺で見かけるのは多くがこのムラサキオカヤドカリで、オカヤドカリや後述するナキオカヤドカリは珍しいかもしれません。
分布はオカヤドカリ・ナキオカヤドカリと重なりますが、ムラサキオカヤドカリのほうが北のほうに広がっています。
オカヤドカリと違って発音器を持ち、ストレスや身の危険を感じるとギチギチという音を立てます。飼い方はオカヤドカリと同じで、値段もそう変わらないためペットとして人気です。
体長 | 約6cm |
主な分布 | 小笠原諸島、四国、九州、紀伊半島南部 |
生活様式 | 陸棲 |
寿命 | 10~30年 |
値段 | 300~1,000円 |
ナキオカヤドカリは、鳴くヤドカリと知られているオカヤドカリの仲間です。ムラサキオカヤドカリと同じく、ストレスを感じると貝殻の中で音を出します。
ムラサキオカヤドカリと非常によく似ていますが、眼柄(目の付いている柄状の部分)下の模様の有無で見分けられます。暗い模様があるのがナキオカヤドカリ、ないのがムラサキオカヤドカリです。ペットショップでは区別なく売られているケースもあるため、どうしてもナキオカヤドカリが欲しければ眼柄をチェックしましょう。
体長 | 約1cm |
主な分布 | 日本各地の近海 |
生活様式 | 水棲 |
寿命 | 3~4年 |
値段 | 数百円 |
ホンヤドカリは日本近海で幅広く見られる小型のヤドカリです。磯遊びなどで見つけたことのある方もいるでしょう。ハサミ脚は右側のほうが大きく、体色はダークグリーンと控えめ。黒い触角に破線が見られることや、歩脚の先端に白い帯が見られるのも特徴です。
オカヤドカリと違い自然採取が可能で、ペットショップでも数匹まとめて数百円程度で販売されています。入手しやすい観賞用ヤドカリですが、水棲のため飼育難易度は少し上がります。寿命も3~4年と、オカヤドカリに比べると早いお別れが来ます。
体長 | 約1cm |
主な分布 | 日本各地の近海 |
生活様式 | 水棲 |
寿命 | 3~4年 |
値段 | 数百円 |
ホンヤドカリの近縁種であり、磯を代表するホンヤドカリ属の一種です。分布もほぼ重複しており、姿かたちも似ていますが、ケアシホンヤドカリはホンヤドカリよりも明るい緑色で、歩脚が細かな毛で覆われています。また、歩脚やハサミ脚には小さな黒い点がたくさんあります。触角が真っ赤に染まっていることからも区別可能です。
石原さん
ケアシホンヤドカリにはそっくりのホシゾラホンヤドカリ / P. maculosusという別種がいます(長い間同種だと考えられていました)。ホシゾラホンヤドカリも、緑の体に赤い触角を持ちますが、体の表面の点が黒ではなく青白いことで見分けられます。
ホンヤドカリよりも大食漢で、水質の悪化に弱いという声もあり、飼育するには一定の注意を払う必要があります。
撮影者:𠮷川晟弘 特任研究員 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室
体長 | 約1cm |
主な分布 | 本州以南の近海 |
生活様式 | 水棲 |
寿命 | 3~4年 |
値段 | 数百円 |
特に太平洋側では、ホンヤドカリ・ケアシホンヤドカリと並ぶメジャーなヤドカリです。サイズ感はよく似ていますが、イソヨコバサミは触角が青く、歩脚には白く目立つ帯が見られます。よく見ると目に白い点がたくさんあり、とてもキラキラしています。ハサミ脚の大きさが左右ほぼ同じなのも、ホンヤドカリとの大きな違いです。
飼育難易度はホンヤドカリと大差ありません。むしろ、ホンヤドカリより穏やかな性格で飼いやすいという声もあります。
ここでは、上手なヤドカリの飼い方を飼育アイテムとともにまとめました。ヤドカリの種類が陸棲か水棲かで異なりますが、陸棲ではオカヤドカリ、水棲ではホンヤドカリを想定して紹介しています。
■飼育アイテム一覧
まず、ヤドカリを入れる飼育容器はガラス製がおすすめです。プラケースでも飼育はできますが、床材として砂を入れるため細かな傷が付いてしまいます。強度面を考えるとガラス製がよいでしょう。気密性にも優れています。
ヤドカリがストレスなく動き回れるよう、横幅は最低でも30~45cm程度は欲しいところです。大きめの容器は水質が安定しやすく、同種のヤドカリやほかの生き物と同居をさせやすい点がメリットです。
上記はフィルター(ろ過装置)付きの水槽で、ホンヤドカリを飼うのに便利です。
オカヤドカリの場合は容器だけでも問題ありません。ただ、壁やレイアウト材をよじ登って脱走にチャレンジする恐れを考慮し、蓋付きの容器のほうが望ましいです。
脱走しかけたナキオカヤドカリ
下記の商品のように、蓋は別売りしているケースもあるため注意しましょう。
足場には砂を敷きます。オカヤドカリの場合、乾燥などの環境変化や脱皮時の無防備さから身を守るために、砂に潜る習性があります。粒が荒すぎると潜れないので、細かい砂を貝殻を含んだ体長の2~3倍の厚さになるよう準備しましょう。また、長ければ数か月潜るため、潜った後もずっと湿度を保てるように、適度に砂を湿らせておくことも大切です。
材質は特に問いませんが、見た目のきれいさやメンテナンスのしやすさから、サンゴ砂が人気です。
ヤドカリは自分の成長に合わせて適した大きさの宿に引っ越しします。適切な宿がないと脱皮しても十分成長できませんし、ときには貝殻を脱いで「野宿」することになり、そのまま死んでしまうかもしれません。
引っ越し用の貝殻は市販のものでもよいですが、自然にある貝を好む個体もいます。いろんな形やサイズを複数用意してあげ、気に入った宿を選ぶ姿を観察するのも、ヤドカリを飼う楽しみの一つです。
ちなみに、オカヤドカリは砂に潜るときに邪魔にならないよう、突起物が少ない貝を好むようです。
ヤドカリが登ったり降りたりと、アスレチックができるレイアウトを作るのが理想です。流木、岩、ホンヤドカリにはライブロック(風化したサンゴの骨格にさまざまな生物が付着・繁殖したもの)やサンゴ、海藻類などを入れてあげましょう。
これらは必要なときに身を隠せるシェルター代わりにもなります。特に臆病な性格のオカヤドカリには必須ですし、あまり物怖じしないホンヤドカリも、脱皮の際には岩陰などに隠れます。
ただし、力強く成長したヤドカリたちは、ライブロック上のサンゴを落としたり、レイアウト目的で入れた海藻類を食べたりとイタズラ(?)をすることがあります。頻繁にレイアウトを崩して困る場合は、「サンゴ用接着剤などで固定する」「そもそも海藻類は入れない」といった対応で様子を見ましょう。
水皿はオカヤドカリを飼うために必要なアイテムです。オカヤドカリは陸上で生活しますが、貝の中の水分が不足すると呼吸ができずに窒息してしまいます。いつでも水分補給できるよう、真水用と海水用の2つを設置してあげてください。水皿選びのポイントは次の通りです。
真水用と海水用の2つを用意する理由は、オカヤドカリが脱皮前などに好んで海水に浸かることがあるためです。真水には必ずカルキ抜きが、海水には人工海水の素が必要です。また、水皿の水はできるだけ毎日交換してあげてください。
水棲のヤドカリには飼育水が必要ですが、ホンヤドカリは海水でなければ飼えません。天然の海水を調達できればよいですが、難しい場合は人工海水の素で作成しましょう。天然海水に含まれるミネラルを豊富に含んだものや、小分けになって使いやすいものなど、さまざまなタイプがあります。
水は水道水を利用しますが、そのままでは塩素が入っているため、カルキ抜きをしましょう。市販のカルキ抜き剤(水質調整剤)を使うか、バケツなどに汲み半日~1日寝かせてから使用します。
なお、人工海水は天然海水の塩分濃度と比重を意識して作らなければなりません。一般的に、アクアリウムでおすすめの比重は1.020~1.024といわれています。比重計を使って測定しましょう。
ホンヤドカリを飼うならフィルターはあったほうが便利です。フンや餌の食べ残しを取り除け、水替えの頻度を下げられます。一口にフィルターといってもさまざまなタイプがあるため、初心者の方は水槽とセットになっているものを選んでもよいでしょう。
ホンヤドカリを飼うならエアレーションもあったほうが便利です。陸棲のヤドカリと違い水中でも呼吸できますが、水中に酸素がなくなると酸欠になってしまいます。ただし、水をろ過する過程で酸素を送り込めるフィルターもあるため、水槽の立ち上げ環境によります。
ヤドカリは雑食性で、餌選びの選択肢は広いです。シラスや小魚といった魚介類のほか、果物や野菜、海藻類(味付けされていないもの)も好んで食べます(オカヤドカリはポップコーンも大好物なのだとか)。人工飼料は個体によって好き嫌いがあるようですが、基本的には食べてくれます。ヤドカリ専用フードはもちろん、ザリガニの餌でもかまいません。
これらを2日に1回程度、少しずつ与えてください。ヤドカリは基本的に夜行性のため、夜になってから与えるほうが餌の新鮮さを保てます。また、残餌は水質や飼育環境を悪化させる原因になるため、傷む前に取り除きましょう。
ヤドカリが餌を食べない場合は、食事内容にバリエーションを持たせてみましょう。ヤドカリは基本的に何でも食べますが、なかにはグルメな子もいるためです。餌を食べないのは、ワンパターンなメニューに飽きているせいかもしれません。
冬場や気温変化の激しい季節の変わり目は、ヒーターで温度を保ってあげましょう。特にオカヤドカリは暖かい気温を好みます。15℃を下回ると極端に動きが悪くなり、10℃以下になると死んでしまう確率が高いです。
ホンヤドカリは水温変化に比較的強いものの、狭い容器の中ではショックが大きく、調子を崩してしまいます。
容器の下に敷くパネルヒーターや、飼育水に入れる投げ込み式のヒーターを使うとよいでしょう。
温度をチェックするための温度計は、飼育容器内に張り付けられる小型タイプがおすすめです。鑑賞やレイアウトの妨げになりにくいでしょう。
必須アイテムではありませんが、オオヤドカリはガジュマルが大好きです。入れてやると上に登ったり、その上で昼寝したりします。また、葉を食べることもあります。飼育レイアウトに余裕があれば入れてあげてもよいでしょう。ただ、園芸店などで購入したガジュマルは農薬がかかっていることがあります。オカヤドカリは有機溶剤にとても弱いので、必ず確認してから購入しましょう。
ヤドカリを上手に飼うための注意点を解説します。命にかかわることもあるため、初心者の方は特に注意して守ってください。
水棲のヤドカリはもちろん、陸棲のヤドカリもコミュニケーションが取れるペットではありません。爬虫類では可能なハンドリングも、ヤドカリには非常にストレスになります。
ヤドカリに限りませんが、殺虫剤の多くは魚毒性のある「ピレスロイド系」という成分が入っています。哺乳類は平気ですが、ヤドカリは神経が麻痺して死んでしまうため、ヤドカリがいる近くでは使用しないようにしましょう。
水棲のヤドカリを飼う楽しみの一つが、ほかの魚との混泳でしょう。飼育容器内に数種の生き物が仲良く過ごす姿に癒やされる方もいるのではないでしょうか。
ただし、同居させる生き物によっては注意が必要です。ヤドカリの餌を奪ったり、ヤドカリ自体を襲ったりと、油断のならない生き物もいます。特にカニやヒトデのなかには肉食傾向が強い種類もいるため、混泳させる前によく調べましょう。
なお、同種のヤドカリの多頭飼いは基本的に問題ありませんが、「十分な餌がある」「豊富な宿(貝殻)がある」「大きさが同程度である」という条件が前提です。
オカヤドカリを飼う容器内は常に湿らせてあげてください。70%前後が理想です。乾燥しているとエラが乾き、呼吸できなくなるためです。水皿を用意するのはもちろん、底砂にも霧吹きをかけるなどして湿らせておきましょう。
ただし、砂の中に止水ができるほど濡らすのは危険です。止水には酸素が含まれていないため、嫌気性細菌が増殖する恐れがあります。結果、硫化水素の発生につながり、酸欠死の危険性が高まります。
オカヤドカリの飼育容器がにおう場合、原因のほとんどはフンや餌の食べ残しの放置です。高温多湿状態であればあっという間にカビが生えます。フンを見つけたら都度取り出し、食べ残しは翌日に捨てるのが理想です。また、砂の洗浄も1~2か月に1回はしてあげましょう。洗った砂は天日干しするとよいです。砂の中には脱皮中のオカヤドカリがいる場合があるため、タイミングを見計らってください。
ヤドカリを飼うにあたっての疑問や不安をQ&A形式でまとめました。役立ちそうなものがあれば、ぜひ参考にしてください。
A.バリエーションのある食事を与えているのに食欲が減退した場合は、脱皮の前兆の可能性があります。また、何らかのストレスで体調を崩している可能性もあります。しばらくそっとして様子見し、温度、湿度、水質など飼育環境に問題がないか確認してみてください。
A.健康なヤドカリであれば、何度か脱皮を繰り返すことで徐々に元通りになるため問題ありません。心配なのは、脚が取れてしまった原因がどこにあるかです。スキンシップによるストレス、細菌感染症などの病気、多頭飼いによる喧嘩、あるいは混浴させているほかの生物による影響(実は捕食されかかり、命からがら逃げ延びた)など、何がいけなかったのか探りましょう。
石原さん
脱皮の失敗によって、大きくさせるはずだった新しい脚を脱皮殻の中に置いてきてしまうこともあります。また、極度に調子を崩し、死ぬ間際のヤドカリは次々と脚が取れることもあります。
A.原則として、ヤドカリに限らず、自分で飼育した生き物は最後まで責任を持って飼いましょう。どうしてもやむを得ない場合、自然採集したヤドカリであれば元いた場所にそっと戻してあげてもよいでしょう。お店で購入した個体は、種が何であれを自然界に返すのは絶対に止めてください。
たとえばオカヤドカリは沖縄のビーチでよく見かけますが、ペットショップで購入したそのオカヤドカリの元いた場所が沖縄だとは限りません。また、実は国産のオカヤドカリではないかもしれません。
ヤドカリが陸棲か水棲かで飼い方や飼育アイテムが異なりますが、飼育難易度はそこまで高くありません。餌は何でもよく食べてくれますし、掃除の手間もほかのペットと比べるとかからないほうでしょう。貝殻をたくさん用意してあげれば、一生懸命お気に入りの貝殻を探すキュートな姿を鑑賞できます。
石原さん
ヤドカリは飼育しやすく、観察にも適した生き物です。温度や湿度などにも気を付け、長く元気に飼ってあげてください。種類にもよりますが、オカヤドカリの場合、長寿であれば20年以上一緒に暮らせます。
石原さん
あまり知られていませんが、ツノガイヤドカリやカンザシヤドカリなど、腹部がまっすぐのヤドカリもいます。これらのヤドカリは、巻貝とは少し違う貝の仲間のツノガイや、カンザシゴカイ古巣など、曲がっていない宿を利用しています。