ヒメマルカツオブシムシは乾燥食品や衣類を食害する害虫の一種です。大切な衣類に穴を開けてしまうこともあるため、特に春から夏への季節の変わり目にはしっかり対策をしていきましょう。今回は、その駆除や予防の方法を詳しく解説します。
カツオブシムシ類とは、コウチュウ目Coleoptera、カツオブシムシ科Dermestidaeに分類される昆虫の総称です。日本で見られる害虫として代表的なものには、ヒメマルカツオブシムシとヒメカツオブシムシの2種が挙げられます。
カツオブシムシ類の成虫には、花の蜜や花粉を餌とする種、幼虫と同様のものを食べる種、成虫になるとほとんど何も食べない種が知られています。幼虫は、名前のとおり、かつお節などの乾燥食品(動物性たんぱく質)を好み、ウールや絹など動物繊維を使用した衣類も食害します。ヒメマルカツオブシムシとヒメカツオブシムシは見た目に違いがあるものの、発生時期や餌などに共通した部分が多いです。それぞれの特徴を押さえておきましょう。
ヒメマルカツオブシムシの成虫は体長1.7~3.2mm程度で、黄色、黒色、灰色のまだら模様が特徴です。マーガレットやハルジオンなど白っぽいキク科の花を好み、花の蜜や花粉を餌としています。成虫は5~6月ごろに発生し、1個体あたり20~120個程度の卵を産みます。
幼虫の体長は4~5mm程度で楕円形をしており、茶色い短毛で覆われているのが特徴です。食性は広く、かつお節や煮干し、粉ミルクといった乾燥食品、衣類などに使われる繊維素材などにおよびます。
ヒメカツオブシムシの成虫は、体長2.8~5.3mm程度とヒメマルカツオブシムシよりやや大きく、楕円形で光沢感のある真っ黒な姿が特徴です。成虫は5~6月ごろに見られ、20~140個ほどの卵を産みます。
幼虫の体長は9mmほどで細長い芋虫のような形をしています。ヒメマルカツオブシムシと同様、幼虫は衣類や乾燥食品、虫の死骸などを餌とします。寒い時期に幼虫は暗い場所に潜んでいて、3~4月に蛹化します。
岩田さん
カツオブシムシ類は餌がほとんどなくとも長期間生き延びることができるため、一度入り込むと根絶が難しい場合もあり注意が必要です。
カツオブシムシ類による被害は、成虫が家の中に入って産卵することや、幼虫が付着しているものを持ち込むことが原因で引き起こされます。考えられる侵入経路としては、外に干している洗濯物に成虫が付着していてそのまま取り込んでしまうケースや、外出時に衣類に付いた成虫を連れ込んでしまうケースなどが挙げられます。
成虫は白や淡い色、明るい色に飛来することがあるので、こうした色の衣類を干したり身に着けたりする時には注意が必要です。日当たりや風通しの悪いところに住み付きやすく、虫の死骸、髪の毛や皮脂などを含んだ埃も餌にします。成虫を家の中に入れないことも大切ですが、幼虫が繁殖しにくい環境を整えることも食害防止のために大切なことです。
食害を引き起こすのは主にカツオブシムシ類の幼虫です。幼虫が食べるものは、ウール・絹などの動物性繊維や綿・麻などの植物性繊維で、衣類や寝具、じゅうたんなどが被害に遭うこともあります。食べ物の破片、髪の毛、皮脂などを含む埃が付着したじゅうたんなどをそのままにしておくと発生することもあるため、洗濯やクリーニングを適切に行いましょう。
また、かつお節をはじめ、煮干しや粉ミルクなどの乾燥食品も狙われます。カツオブシムシ類の幼虫は包装を食い破ることもできるので、保管方法に注意しましょう。
駆除する方法には、殺虫剤やスチームアイロンなどを用いる方法が考えられます。ここではカインズ編集部が考える一例を紹介していますので、使用場所や被害状況に合わせて適切な方法を選びましょう。
駆除に使用される殺虫剤には、スプレータイプのものや燻煙タイプのものがあります。スプレータイプのものは見つけたカツオブシムシ類に直接吹きかけます。手軽な方法であるため虫の数が少ない場合は効果的ですが、大量に繁殖していたり、見えない隙間に隠れていたりして標的が見えない場合には、完全に駆除することが難しいです。また、食品や直接肌に触れる衣類には使えない場合もあるので、使用前に安全性や使用方法をよく確認することが大切です。
燻煙タイプのものは殺虫成分を含んだ霧や煙が部屋中に広がるため、狭い隙間まで薬剤が届き、一度に広範囲の駆除を行うことができます。
岩田さん
ただし、タッパーの中や梱包されている袋の中など煙が行き届かないところまでは駆除ができないので、注意が必要です。
それぞれの薬剤には特性があるので、用法用量を確認し、適切に使用することが大切です。
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斜め上に向かってプッシュするだけで薬剤が広がり害虫を駆除するというものですが、特に幼虫は物陰に隠れていることが多いので、薬剤が虫体に触れるように注意して使う必要があります。部屋の広さに合わせた回数をプッシュするという使い方も特徴の一つです。
岩田さん
事前準備や使用後の掃除も必要なく、使用中も室内で過ごすことができるとのことですが、薬剤が食品に付着しなないように配慮したり、人に向かって噴射したりすることがないよう注意が必要です。また、バリア効果が約一か月間続くとのことですが、網戸が開け放しになっていたり、物に付着したりしている虫は入り込んでしまうので、併せて侵入予防に気を配るとより高い効果が得られると思います。
カツオブシムシ類の食害対策だけでなく、コバエ類の発生やクモ類の侵入などにも併用ができるとのことです。空間にスプレーすることで手軽に使用できますが、食品や人へ向けて発射しないなどの配慮は同じく必要です。やはり、幼虫に薬剤が触れるように使用する必要があります。
2WAYノズルを備えているのが特徴で、狭い隙間にノズルを差し込んで噴射することで、手が届きにくい場所にいる虫に薬剤をかけることができます。また、虫に直接薬剤をかけることができなくても、約一か月間は効果が続くとのことです。隙間に薬剤を噴射してしばらくすると潜んでいたものがはい出てくることもあるので、その後の確認作業も大切です。
1.5畳あたり1プッシュすることで害虫を駆除できる空間噴射式の殺虫剤ですが、毛布の中に生息しているような幼虫には薬剤が届きにくいので使い方に注意が必要です。部屋にいながら駆除できるとのことですが、子どもやペットに吹きかからないように使用時には注意しながら使うことが大切です。
多くの薬剤が家庭用として市販されていますが、それぞれの薬には効果の範囲と正しい使い方があるので、必ず各薬剤の取り扱い説明書をよく読み、用法用量を守って使用する必要があります。
岩田さん
特にカツオブシムシ類の幼虫は、餌となる食品や衣類の中に生息していることが多いので、虫に薬剤が直接かかりにくい場合もあります。説明書には専門的でわかりにくい部分もあると思いますので、販売しているお店の方に確認することも大切です。また、人への影響が低いとされている薬であっても、個人個人で薬のにおいの感じ方などに違いがあったり、過敏症状が出たりすることもあるので、薬の使用時やその後に体調に変化がないかなどにも気を配ることが大切です。
ヒメマルカツオブシムシの幼虫は、餌となる衣類の中に潜んでいることもあるので、殺虫剤が虫まで届かないこともあります。そのような時は卵から成虫まで、どの成育ステージにも有効な高温処理による駆除方法が考えられます。
ヒメマルカツオブシムシは成虫では60℃に8分、幼虫では50℃に5分さらされると死滅するとされ、適切に高温処理することで駆除することができます。加熱による駆除方法には、スチームアイロンやスチームクリーナーなどを用いる方法が考えられます。どちらも化学薬品を使わないため、人や動物への影響を軽減できます。
スチームアイロンは、かけ面から出る高温の蒸気を利用して衣類のシワを伸ばすアイテムです。ニットやウールなど幅広い素材に使用できるのが特徴で、高温のスチームによって衣類に付いたヒメマルカツオブシムシを死滅させることができます。ただし、熱に弱い素材には使用できないため、あらかじめ衣類の洗濯表示を確認しておきましょう。
スチームクリーナーは高温の蒸気を吹き付けることで汚れを緩ませて落とす清掃道具です。主に床や壁、キッチン周りの清掃に使われ、使用できる場所は製品によって異なります。ヒメマルカツオブシムシの駆除に使用するのであれば、畳やカーペット、ソファなどの布製品への使用が考えられますが、やはり高温によって変色、変形などしてしまう材質には使用できません。
アイロン台を使わずともハンガーにかけたまま使用することができる2WAY仕様のスチームアイロンもあります。繊維の奥深くまで浸透するきめ細やかなスチームが特徴で、頑固なシワも根本からほぐします。かけ面温度は3段階で調整でき、さまざまな素材に対応します。衣類だけでなく、ソファやクッション、カーペットなどにも使用できるため、洗濯が難しい布製品の害虫対策にも活用することが考えられます。
本格ボイラーを搭載したケルヒャーのスチームクリーナーです。ボイラー式ならではの安定したパワフルスチームが特徴で、約100度の高圧蒸気を圧縮して噴射し、頑固な汚れをしっかり落とすことができます。さまざまな場所に対応できる豊富なアタッチメントや、手を汚さずに交換できるクロスなど、便利な付属品もあります。害虫対策だけでなく普段のお掃除にも活用できます。
岩田さん
加熱処理は駆除に効果的ですが、虫がいる場所(地点)の温度が高温(温度65℃以上)に達していないと十分な効果がありません。マフラーやじゅうたんなどは折りたたんだままではなく、広げた状態で処理した方が熱は伝わりやすくなります。
岩田さん
また、一瞬高温となっただけではほとんど効果はありません。高温に達した状態を1箇所あたり5分以上維持しなければいけないので、時間と手間についても考える必要があります。
カツオブシムシは一度繁殖してしまうと被害が大きく、駆除に手間もかかります。被害に遭わないためにもしっかり予防を行い、繁殖を防ぎましょう。
カツオブシムシによる食害予防には、洗濯と掃除を徹底すること、防虫剤や密閉容器を使い適切に食品を保管することなどが大切です。ここでは、予防のポイントを解説するとともに、おすすめの防虫用品と密閉容器をご紹介します。
ヒメカツオブシムシはダニの死骸や皮脂など有機物を含む埃や食べかすを餌とします。衣替えの時や長期間着る予定のない衣類をしまう前には念入りに洗濯をし、これらを取り除いておきましょう。また、洗濯時に幼虫の抜け殻が付着していないかを確認することも大切です。
こまめに部屋の掃除を行うことも予防につながります。床面だけでなく、部屋の隅やカーペット、サッシのレールなども忘れずに掃除機をかけましょう。衣類を収納するタンスや食品を納めるパントリー内にも髪の毛や食品カスが落ちていないか確認し、幼虫の餌を残さないことが大切です。掃除中に幼虫の抜け殻が見つかることも多いので、痕跡を見落とさないよう注意しましょう。
ここでは、カインズで販売している防虫剤と防虫カバーの一例を紹介します。
揮散性の高い成分と高活性殺虫成分のW処方、薬剤が拡散しやすいオープンエッジ構造が特徴の防虫剤です。高い防虫効果が広範囲に届くため、ウォークインクローゼットでの使用も考えられます。薬剤が効果を発揮する広さには限界があるので、説明書をよく読み確認しましょう。また、クローゼットを開け放したまま防虫剤を使用したのでは本来の効果を発揮できないので注意が必要です。
コートやドレスに被せておくだけで大切な衣類を害虫やカビ、埃から守ることができる防虫カバーです。通気性の良い不織布を使用しているため、湿気がこもらず、10カ月間衣類を保管できます。マチがあるため厚手のコートもゆとりを持って被せることができるでしょう。前開き仕様で出し入れも簡単です。
和紙包装に包まれたタブレットタイプの引き出し用防虫剤です。包装から出さず、そのまま衣類の上や間に置くだけで使用できるため、薬剤が衣類に直接触れることはありません。大容量タイプなので、主にタンスや衣装ケースで衣類を保管している方におすすめです。一度に使いきれない場合はファスナーを閉じて保存でき、無駄なく使用することができます。
岩田さん
防虫剤を使用しても、保管容器が開け放したままであったり、有効期間を過ぎていて防虫剤の袋が空になっていたりしたのでは効果が期待できません。防虫剤も殺虫剤と同じく説明書をよく読み、用法用量を守って正しく使うことが大切です。
ヒメマルカツオブシムシの幼虫はビニールなどの包装を食い破ることがあり、袋に穴が開いてしまうと他の害虫も侵入する恐れがあるため、密閉容器を使用して保存すると良いでしょう。
におい移りが少なく密閉性が高いビン製の保存容器です。また、長期間保存しても食材の色が移りにくいのも特徴です。かつお節や粉もの、ジャムや佃煮などの保存に向いています。
他のサイズとも重ねて収納できる密閉保存容器です。容器本体に三井化学独自のTPX樹脂を使用することで、ガラスのような透明性を実現しました。変色しにくい点や汚れ落ちの良さも魅力の製品なので、色移りしやすい食品や油分の多い食品の保存にもおすすめです。フタをしたまま電子レンジで加熱でき、食洗機にも対応しています。電子レンジでの加熱は、食害の可能性がある食品に対する殺虫としても効果があります。
ヒメマルカツオブシムシは繊維製品や乾燥食品を食害するカツオブシムシ科の害虫です。被害に遭わないようにするためには、5~6月ごろに発生する成虫を家の中に入れないよう注意し、産卵させないようにしましょう。
繁殖を防ぐためには、こまめな清掃を心掛け、食べられやすい動物の毛などでできた衣類や乾物など食材を適切に保管することが大切です。それでも幼虫が発生し、被害が見られた場合には、殺虫剤やスチームアイロンなどを使って早めに駆除を行う必要があります。適切な対策を行い、大切な衣類や食品をヒメマルカツオブシムシの被害から守りましょう。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
岩田さん
ビニール袋に孔を開けて被害を拡大することもあるので、生息に気づいたら早めに駆除する必要があります。