鶏ふんを「臭い」だけの有機肥料だと思っていませんか? 確かに、未発酵の鶏ふんは独特のにおいがあり敬遠されがちですが、ペレット鶏糞や炭化鶏糞のように、限りなくにおいを抑えた鶏ふんも存在します。
また、鶏ふんは即効性に優れ、元肥だけでなく追肥としても使用できるのも大きなメリットです。
できるだけ化学肥料は使わずに野菜を育てたい、という方に鶏ふんはおすすめ。
発酵鶏糞だけで育てたブロッコリー
この記事では、鶏ふんに含まれる成分や、他の有機肥料との違い、鶏ふんの使い方などについてご紹介します。
鶏ふんは、鶏のフンを乾燥させて作った低コストな有機肥料です。
作物の成長に必要な三大栄養素のチッ素・リン酸・カリを豊富に含み、肥料効果に優れ、即効性もあります。カルシウムやマグネシウムなどの微量要素を含むため、作物にとっては欠かせない肥料と言えるでしょう。
鶏ふんに豊富な栄養が含まれる理由は、鶏の餌にあります。栄養豊富な餌を食べている鶏は、フンにもたくさんの栄養が詰まっているという訳です。
一般的に、鶏ふんに多く含まれる栄養素はリン酸です。リン酸は、実をつける野菜に効果がある成分。ナスやピーマン、トマトなどがたくさん収穫できるのは、リン酸のおかげでもあります。
リン酸が不足すると花の数が減り、実つきが悪くなります。葉や茎も小さくなり品質の低下につながります。その点、鶏ふんにはリン酸が豊富に含まれているので、鶏ふんを与えれば、不足する心配はないでしょう。
ただ、与えすぎも悪影響を及ぼすのは間違いありません。適量を守って正しく散布するようにしましょう。
牛ふんは、牛のフンに稲ワラやもみ殻を混ぜて発酵させたもので、肥料分はかなり少なめです。土をふかふかにする土壌改良効果が大きいのが特徴です。一方、鶏ふんは栄養濃度が高く肥料効果に優れますが、土壌をふかふかにする効果は牛ふんほど大きくありません。
鶏ふんの次に肥料分が多いのが、豚ふんです。
肥料効果と土壌改良効果、両方あるのが特徴。さらに微量要素も含んでいるので、有機肥料として使いやすい種類ではないでしょうか。
雑食のためにおいがきつく感じる人もいるかもしれませんが、しっかりと発酵が進んだ豚ふんは、さらさらしていて嫌なにおいはしません。
鈴木さん
養豚場が近くにあるなど、身近に豚ふんが手に入る環境であれば使ってみるのもよいでしょう。もちろん、ネットショップで入手する手もあります。
ペレットタイプ
油かすとは、タネや大豆などを搾って、油を取った後の残りかすのことです。有機肥料の中で、特にチッ素を多く含みます。一般的に、成分比率は、チッ素5~7%、リン酸1~2%、カリ1~2%です。
鈴木さん
チッ素は野菜全般の成長に欠かせない成分で、特に茎や葉の発育を促します。ほうれん草やチンゲンサイなどの葉物野菜はもちろん、大根や人参などの根菜類にとっても重要です。
鈴木さん
有機肥料を使う場合、チッ素を多く含む油かすが効果的ですが、価格が高めなので、予算に応じて選んでくださいね。
また、微生物が住みやすい土を作れるので、土壌改良効果も期待できます。肥料として使う場合は、効果が現れるまで少し時間がかかるので、元肥に向く肥料と言えるでしょう。
乾燥鶏糞は、熱風で鶏のフンを乾燥させたものです。粉状で、土に混ぜ込んでから発酵が始まり、発酵が進むにつれにおいは弱まっていきます。
鶏の餌によって栄養素は変わりますが、一般的にはチッ素4〜6%、リン酸5〜6%、カリ2〜3%の比率です。
鈴木さん
鶏ふんに限りませんが、成分比率はメーカーさんによって多少異なるので、購入前によく確認してくださいね。
鶏糞ペレットとは、発酵させた鶏ふんを高温で処理し、ペレット状にしたものです。ペレットとは、「小さなかたまり」や「小さな玉」という意味があります。風があっても飛散することなく散布できるのがメリットです。
乾燥鶏ふんと比べると、チッ素分が少なく、リン酸とカリウムが多いのが特徴的。また、完全に発酵されている鶏ふんは、においも少なくなります。
炭化鶏ふんは、高温で処理された鶏ふんで、一般的に500~700℃程度の温度で炭化されます。この過程で窒素成分の多くは揮発し、含有量が大幅に減少する一方、リン酸やカリウムが比較的豊富に残るため、花や実のつきを促進する効果が期待できます。
また、炭化により鶏ふん特有のにおいが抑えられ、家庭菜園や住宅街でも使いやすいのが特徴です。施用量は作物の種類や土壌の状態によって異なるため、使用する際は製品のラベルを参考にしてください。
通常は元肥として利用しますが、追肥としても使用可能です。ただし、即効性の窒素供給源としての効果は限られるため、必要に応じて他の窒素肥料と組み合わせるとよいでしょう。
乾燥鶏糞を元肥として使う場合は、散布後1ヶ月ほどあけてから植え付けを行います。
その理由は、鶏ふんが発酵する過程で、アンモニアガスや発酵熱が発生するからです。これらは作物の根にダメージを与え、生育に悪い影響を及ぼします。
元肥として使う場合は、植え付けの1ヶ月前に散布し、よく耕しておきましょう。
また、発酵鶏糞の場合は、アンモニアガスの発生が少なく、植え付けの2週間前に散布しておけば大丈夫です。
元肥に向いている作物は、生育期間が短いほうれん草や小松菜などの葉物野菜です。
鶏ふんは分解が早く、即効性がある肥料です。そのため追肥としても使用できます。
追肥の方法は、ウネの間や株の間など根が伸びていく先に穴を掘って鶏ふんを撒き、土をかぶせます。作物の根に触れないようにするのがコツです。
作物の根に触れると、肥料分の強さが原因で肥料焼けを起こしてしまいます。
なお、追肥する場合は必ず完熟の鶏ふんを使ってください。未発酵のものはアンモニアガスが発生し根を傷める原因となります。
鶏ふんは使いすぎに注意しましょう。鶏ふんにはカルシウムが含まれており、過剰に施用すると土壌に蓄積され、栄養バランスが崩れるためです。栄養バランスが偏ると、他の養分が作物に吸収されにくくなり、生育に影響を与える可能性があります。
また、鶏ふんと苦土石灰を同時に施すと、カルシウムが過剰になり、作物の根の養分吸収を妨げることがあります。そのため、鶏ふんを使う際は、石灰の使用を控えるか、量を調整することが大切です。
鶏ふんを元肥として使う場合は、家庭菜園で1㎡あたり300g〜500gを目安に施し、追肥として使う場合は1㎡あたり100g〜200gを目安にしましょう。ただし、土壌の状態や作物に応じて適量を調整し、適切な施用を心がけてください。
鶏ふんは水分を含むとにおいがきつくなります。自宅で保管する場合は、雨の当たらないところに保管してください。
また、ホームセンターなどでは雨ざらしになって販売されていることも多いので、中身が濡れていないか、ダマになっていないかをよく確認して購入しましょう。
鈴木さん
使いきれなかった鶏ふんは、翌年も使うことができますが、保管方法によってはベタベタして使えない状態になる場合があります。ちなみに、ダマになると元に戻りません(笑)。
できるだけシーズン中に使い切るようにして、持ち越す場合は湿気の少ない場所で保管しましょう。
未発酵鶏糞はにおいが強いのが特徴です。鶏ふんは散布してから2〜4週間はにおいが続きます。発酵が進むと徐々ににおいは減ってきますが、住宅地などで使用する場合は注意してください。
少しでもにおいのない鶏ふんを使いたい場合は、炭化鶏糞がおすすめ。炭化鶏糞は、においがないだけでなく通気性の向上や、根腐れ防止、ミネラル補給など、さまざまな効果が期待できる肥料です。
鶏ふんや牛ふんをはじめ、有機肥料にはたくさんの種類があります。それぞれの特徴を理解して、美味しい野菜づくりをはじめましょう。
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一部、オンラインショップで取り扱っていない製品もありますが、そういった商品は店舗での取り置きがおすすめです。注文をしてから店舗に向かえば、売り切れる心配もなく、確実に購入できます。
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鈴木さん
栄養成分が高い肥料を大量に使うと肥料焼けを起こす恐れがありますが、牛ふんは鶏ふんよりも多めに施用しやすい特徴があります。それぞれ役割が異なるため、互いのメリットを生かしながら、鶏ふんと牛ふんを混ぜて使うのもよいでしょう