作物を植えている土の表面を各種資材で覆うことをマルチングといいます。比較的簡単に設置が可能で効果は絶大なので、家庭菜園初心者にもおすすめです。
ここでは、マルチングのメリット・デメリットとマルチング材の種類について解説します。マルチングをするだけで、今までの悩みが解決することもあるので、マルチングをして、園芸や菜園を成功させましょう。
マルチング資材で土を覆うと、雑草の成長や繁殖を防げることができます。特に黒色のビニール製マルチを使えば、雑草が生えても光合成ができず、ほとんど育ちません。ビニールマルチの内側の照度がビニールマルチの外側(上側)の8%以下であれば、雑草はほぼ完全に防除されるとの研究結果があります。
雑草は、作物の生長に必要な土中の栄養分を吸収してしまううえ、丈が高い雑草やつる性の雑草は日光を遮って、作物が光合成するのを妨げます。また、炎天下での草むしりは身体に大きな負担になるので、上手にマルチングをすることをおすすめします。
マルチングで土を覆うと、土の温度変化が穏やかになります。植物の株は急激な温度変化に弱いものも多いため、マルチングをすることは株を守ることに繋がります。
また、冬に黒マルチを使うと太陽光で土が温まります。夏場も直射日光が土に当たらなくなって、温度上昇が穏やかになるメリットもあります。
マルチングによって土を上から覆うと、水分が土から蒸発してもマルチング内に留まり、空気中に水分が蒸発しにくくなります。これにより、土中の湿度を一定に保ちやすくなります。特に、直射日光で乾燥しやすい夏場は効果を実感できるでしょう。
マルチングをすると、害虫が土の中に入るのを物理的に防げます。害虫が土の中に入らなければ、植物は病気になりにくくなります。雨が激しく降ると泥がはねて作物の葉の裏に付きます。泥はねにより土に潜んでいた病原菌が作物に移り、病気が発生することがあります。マルチングは泥はねを防ぎ、こうした原因での病気も減らせます。
また、厄介な害虫のひとつであるアブラムシは、太陽光の反射を嫌います。シルバーのビニールマルチを使うと、太陽光が反射してアブラムシを寄せ付けない効果を得られます。
長期間強い雨が降り続くと、畑に水たまりができたり、畝から水とともに土や肥料が流れ出てしまうことがあります。特に、土を土壌改良した後で土がふかふかだと、流れ出てしまう可能性が高くなります。
そんなとき、畝立てをした後にマルチングをしておくと、畝を守り、用土や肥料の流出を防いで、植物が育ちやすい環境を保ちやすくなります。
雨が降って土が塗れると、徐々に土が硬くなっていきます。土が固まると、水はけがよくなくなって植物の根に悪影響を与えるほか、苔などが生えやすくなります。
そこでマルチングをしておくと、雨が直接土に触れることがなくなり、土が硬くなるのを防いでくれます。近年、日本各地でゲリラ豪雨が発生するようになり、雨粒が土の表面に激しくぶつかることによる土の硬化が以前よりも多くなっていると思います。豪雨から畑や花壇の土壌を保護するにはマルチングが効果的です。
メリットが多いマルチングですが、デメリットも存在します。
マルチングで物理的に土を覆うと、肥料が与えづらくなります。ビニールマルチの上から肥料を与える場合は、マルチを部分的にはがすか、小さな切れ込みを入れる必要があります。
札埜さん
ビニールマルチを剥がしたり、切れ込みを入れたりしたくない場合は、植え穴に粒状肥料を与えることになりますが、その際は粒状肥料が作物に直接触れないように注意してください。
追肥を減らすためには、マルチングをする前に長期間にわたって効果が持続する緩効性の肥料を施しておくとよいでしょう。
ビニールマルチは使用後にゴミになってしまうので、適切な処理が必要になります。自治体によっては、土が付いていると燃えるごみとして出せない場合もあるので、しっかり確認しておきましょう。
マルチング材を天然由来のものに変えることで、使用後に土壌の中で分解され、ゴミにならないものもあります。ゴミを出したくない人は、土壌中で分解される生分解性マルチ材などを使うと良いでしょう。
札埜さん
ただし、生分解性マルチは作業中にクワなどが引っかかるだけで簡単に裂けるので、いつもより丁寧に作業する必要があります。また、経年劣化しやすいので、なるべく早く使い切ることをおすすめします。
バークチップやウッドチップなどのマルチングをした場合、かえって害虫が増える場合があります。
植物性のマルチは水分を吸収しやすかったり、通気性が悪かったりするため、水やりが多いと湿気がたまり、害虫にとって快適な環境になってしまいます。風通しの良いところで使用し、マルチング材を乾燥気味にしてあげることで解消します。
マルチング材を買うにはお金がかかります。広範囲に利用する場合には、メリットと金額の兼ね合いを考慮してマルチング材を選択しましょう。
お金がかからない方法として、雑草をわらマルチの代わりにする方法もあるので、チャレンジしてみても良いでしょう。
なお、マルチング材として利用できる雑草は、種がない若い雑草だけです。種を持った雑草は、雑草が増える要因になるので、処分しましょう。
マルチングの効果は、マルチング材によって多少異なります。ここでは、代表的なマルチング材の種類と効果を紹介します。
家庭菜園にはビニールマルチが向いています。ビニールマルチには、黒、シルバー、透明のものがあり、それぞれ効果が異なります。
黒マルチ(タマネギ生産)
太陽光を吸収するため保温効果が高く、遮光効果も高いため雑草が生えにくい特徴があります。直射日光が土に当たらないので、土の温度上昇が穏やかになるものの、夏場は黒マルチ自体が高温になるので、地面が高温になり作物の成長に悪影響を及ぼすことがあります。
シルバーマルチ(施設でのイチゴ生産)
太陽光を乱反射するため、アブラムシなどの害虫予防に効果的です。太陽光の熱が土に伝わりにくいでの、黒マルチや透明マルチに比べて土の温度が低くなります。
太陽光の熱が土に伝わりやすく、保温効果が高いので、寒い時期に土の温度を上げて作物を栽培するのに適します。ただし、雑草防除の効果はありません。
ウッドチップは、スギやヒノキなどの木材を細かく砕いたマルチング材で、観葉植物や街路樹などに使用します。木材のいい香りがするので癒やしの効果があり、消臭効果も期待できます。ヒノキやスギの香りを嫌う害虫の予防にもなります。
スギチップ(花壇)
ウッドチップの効果としては、土の乾燥を防いだり、雑草を予防したり、雨や乾燥により土が固まるのを防ぐ効果があります。湿気には弱く、腐ったりカビが発生したりするので、乾燥気味に管理しましょう。
バークチップは、赤松や黒松の樹皮を砕いたマルチング材です。バークチップを発酵させて作ったバーク堆肥もマルチング材として利用できます。
効果はウッドチップとほぼ同じですが、粒が大きいので、広範囲への使用に適しています。
バーク堆肥でのマルチング(花壇)
ビニールマルチと違い、ウッドチップやバークチプ、バーク堆肥は作物を植えた後にマルチングをすることができるので、植栽デザインが複雑で、植え付ける間隔が一定ではない花壇で利用できます。
藁(わら)は、昔から使われているマルチング材で、適度な隙間が空いているため、空気が循環し、土の温度・湿度の上昇を防いでくれます。藁の厚さで温度調節ができるので、夏野菜の育成に向いています。
藁は、役目を終えたら土と混ぜるだけで、自然にかえっていき、養分となるのでゴミが出ません。
札埜さん
手に入れるのが難しいかもしれませんが、日本では昔から使われてきた、言わば環境に配慮したマルチング材なので、機会があれば利用してみてください。
土壌改良に使われる腐葉土は、マルチング材としても活躍します。表面に3~5cmの厚さでまくだけで、土表面の通気性、保水性、保肥性を高められます。
なお、腐葉土は微生物によって分解されていくので使用後もゴミになりません。ただ、乾燥すると軽いため、強風で飛んでいってしまうのが難点です。
マルチングにはいくつかのデメリットはありますが、得られる効果が大きいので、ぜひ活用したい資材です。家庭菜園において除草剤を使わずに雑草を効率的に防除したい場合はマルチングが最も有効な方法です。マルチングをすることで、今までの悩みが解決できるかもしれません。
また、マルチング材をいくつか紹介しました。それぞれ、効果が少しずつ違うので、目的によって使い分けると、より効果的です。費用のわりに効果が大きく、コストパフォーマンスが良いので、ぜひ試してみてくださいね
札埜さん
また、雑草の成長や繁殖を防ぐ効果は、ビニールマルチを取り除いた後も数か月間は継続することが分っています。