アオムシより小さいコナガの幼虫。実はコナガは農薬への抵抗力が強いといわれており、駆除するのがとても厄介な害虫です。放っておくと、どんどん葉っぱを食べられてしまい、最悪の場合、光合成ができずに枯れてしまうので見た目以上に注意が必要です。
コナガの被害に遭わないために、本記事ではコナガの予防法と駆除方法を詳しく紹介していきます。両方を併用して、植物の成長を手助けしましょう。
コナガは「小菜蛾」という文字通り、アブラナ科の植物が大好物な害虫です。
幼虫のころの見た目はアオムシと似ていますが、コナガの体長は1㎝程度しかなく、触ると落ちてしまうところがアオムシとの違いです。また、葉から落ちる時に白い糸を吐く、シャクトリムシのように歩かないなどの特徴もあります。
コナガは薬剤の抵抗力があり、ほかの害虫とは駆除方法が異なるので、見分けられるようにしておきましょう。
コナガの卵は0.5 mm程度の楕円形で、一度に数百個産み付けます。卵から孵化して、幼虫になり食害したあと、葉の裏に糸で繭を作りサナギになります。羽化して成虫になり、死ぬまでが約2週間で、一年の間に10~12回の世代交代があります。
日本各地に生息しているコナガですが、北日本で天敵のクモや蜂がいない環境だと発生しやすくなります。1年中休眠しないため年中の対策が必要ですが、発生しやすい時期は、春から初夏と秋です。
コナガは休眠しないため、寒さに弱く北海道や東北では越冬できないといわれています。しかし、風に乗って1000キロ以上大移動することもあるので、春先には北海道でも確認することができます。
コナガは、キャベツ、白菜、ブロッコリー、ダイコン、カブ、コマツナなどのアブラナ科の植物を好んで食べます。
若齢幼虫の場合は、葉の中にもぐりこみ葉の内側を食べるので、外から姿が見えないこともあります。中齢幼虫は葉から出て、葉の裏から葉の表に向けて食害します。葉肉だけを食べるので表皮が残り、レース状に穴が開きます。
葉を食害されると、まだらに穴が開くのが特徴ですが、被害が拡大すると、葉脈を残してすべてを食べられてしまうこともあります。
コナガが葉を食べてしまうと、植物は光合成が行えなくなってしまうので、成長に大きな影響を与えます。葉を食べる野菜は、食害されることで出荷できなくなる場合もあるので、厄介な害虫です。
コナガは農薬に耐性を持っている個体が多いので、大量に発生してしまうと駆除するのが大変です。そのため、コナガを予防することが重要です。ここでは、コナガの予防方法について紹介します。
コナガの被害を予防するには、成虫に卵を産ませないのが一番です。卵を産ませないためには、防虫ネットや寒冷紗を植物にかけるのがもっとも一般的です。
寒冷紗は、夏の直射日光を防ぎ温度上昇を防いだり、冬の保温効果もあるので、多くの用途があります。
コナガが入らないようにするには、なるべく網目が細かいものを選びましょう。すきまができないようにするのがポイントです。
コナガは光の反射を嫌うので、防虫ネットに反射材が付いていると、コナガが寄り付かなくなります。
植物が大きくて防虫ネットがかけられない場合には、シルバーマルチを利用したり、支柱に反射テープを貼るという方法もあります。
コナガはキク科やセリ科の匂いが嫌いといわれています。キク科のレタスや春菊、セリ科のセロリやニンジンなどを、育てたい植物の近くに植えるとコナガを寄せ付けない効果があります。
なお、レタスを食害するタバコガはアブラナ科の植物を嫌います。レタスとアブラナ科を近くに植えることで、お互いの害虫を予防する効果があります。
しかし、防虫ネットで防ぐ方法よりは効果が薄いので、補助的に使いましょう。
クローバーはコナガが嫌う植物ではありませんが、コナガの天敵であるクモやゴミムシをおびき寄せる効果があります。コナガを捕食してくれる益虫を集めてくれるので、コナガが近づいてきても繁殖を予防できます。
雑草にはナズナ、タネツケバナ、イヌガラシといったアブラナ科の植物があります。
雑草がコナガの住処になることもあるので、雑草をこまめに取り除くことも重要です。雑草を減らすことで、ほかの害虫も減らせます。
コナガのオスは、メスが放つ性フェロモンにおびき寄せられる性質があります。そのためフェロモン剤を使ってオスを強力に誘引する方法があります。これにより、オスはメスにたどり着くことができなくなり、交尾ができなくなります。
ただし、フェロモン剤の有効範囲はそれほど広くないため、広い畑には複数個のフェロモン剤を仕掛ける必要があります。
予防できなかったコナガは、駆除することで植物への被害を最小限に抑える必要があります。
少数のコナガであれば一番確実で、安全性が高い方法が、手で駆除する方法です。
卵を見つけたときには、手でつぶしてしまうと一度に多くのコナガを駆除できるので効率的です。幼虫を見つけた場合は、手でつぶしても良いですが、割りばしやハサミでつぶしたり、ペットボトルに封印しても良いでしょう。
コナガは葉の表面よりも裏面にいることが多いので、裏面も確認しながら駆除していきます。特に成虫を見つけた場合、卵がないか葉の裏を入念に確認しましょう。
コナガには、捕食する天敵と、寄生する天敵がいます。
捕食する天敵には、クモ、ゴミムシ、ハサミムシ、鳥類などがいます。ゴミムシは肉食性でコナガの幼虫を捕食してくれますが、少量の毒があるので、素手で触らないようにしましょう。
寄生する天敵には、卵に寄生するメアカタマゴバチ、幼虫に寄生するコナガコマユバチ、サナギに寄生するナガチビヒメバチなどがいます。
このような益虫を殺さないようにすると、コナガを駆除できます。
コナガは水に弱く、雨に当たったり、水たまりに落ちただけで死んでしまうこともあります。薬剤を使いたくない人は、幼虫に霧状の水を吹きかけるだけでも効果があります。
また、定期的にじょうろやシャワーなどで散水してあげると、コナガを予防できます。ただし、水のあげすぎで作物が病気にならないように注意しましょう。
コナガの駆除に効果的な薬剤としては、チョウ類専用の農薬や、除虫菊由来の殺虫剤を主成分とした薬剤などが上げられます。
コナガは薬剤耐性が強い害虫なので、同じ薬剤を使っていると効果がなくなってきます。効果を持続させるために、種類の違う薬剤をローテーションして使うようにしましょう。
ただし、農薬によって、コナガの天敵まで減少してしまうと、コナガが増えてしまうこともあるので、薬剤の使いすぎには注意が必要です。
コナガは薬剤に抵抗力があるので、大量に発生すると駆除することが難しい害虫でもあります。そのため、予防が重要です。
コナガを駆除するには、天敵に任せるのが一番手間がかかりませんが、うまくいかないことも多いので、ここで紹介したさまざまな方法を、ぜひ試してみてください。