「水切れ」はガーデニングでよく起こるトラブルです。
水は植物が生きていくうえで欠かせないもの。水切れが起こると、植物は弱って枯れてしまうでしょう。気温が高い日が続いたときや、旅行で2、3日家を空けるときなどは特に注意が必要です。
この記事では、水切れについて解説していきます。水切れになった植物の症状や復活させる方法、水切れしにくい植物にも触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
「水切れ」とは、植物が水不足の状態に陥っていることです。与える水が少なすぎたり、暑さで土の水分が蒸発してしまうと起こります。
水切れは、地植えよりも鉢植えやプランター栽培で起こりやすいです。鉢やプランターでは土の保水量が限られており、水分が植物にすぐ吸収されたり、土の表面から蒸発量が多かったりするため、土が乾燥しやすくなります。鉢植えやプランターで植物を育てている場合は、特に土の乾き具合に注意を払いましょう。
ただし、水切れを心配するあまり大きすぎる鉢を選ぶと、水分が過剰になって根腐れを引き起こすリスクが高まります。
地植えは水切れを起こしにくいですが、全く起こらないわけではありません。日差しが強い日が続き、地面がカラカラに乾いていたら要注意です。適度に水を与えてください。
水切れを起こした植物は、ぐったりとしおれてしまいます。いきいきと伸びていた葉や茎が下を向き、目に見えて元気がなくなります。そのまま放っておくと枯れてしまうでしょう。
葉がしおれる程度であれば、適切に水を与えることで回復します。しかし、水切れの状態を放置すると、鮮やかな緑色だった葉が黄色や茶色に変色し、触れるとカサカサと乾いていて簡単に落葉してしまいます。水分が不足して葉まで水分が行き渡らなくなり、葉から枯れてしまうのです。
少ない水分を主要な茎に集中させ、なんとか延命している状態です。とても危険で、すぐに対処しないと枯れてしまうでしょう。
札埜さん
一時的な水分不足で葉がしおれる土の水分量は「初期萎凋点(しょきいちょうてん)」、水を与えても回復しなくなる限界点を「永久萎凋点(えいきゅういちょうてん)」と呼びます。永久萎凋点を超えてしまうと、いくら水を与えても植物は回復できずに枯れてしまうため、水切れを放置しないようにしましょう。
水切れを起こしてしまっても、まだ諦めないでください。枯れているように見えても、すぐに水を与えれば復活できるかもしれません。
水切れを起こした植物には「腰水(こしみず)」でたっぷりと水を与えましょう。腰水とは、バケツなどの大きな容器に水をはり、鉢植えごと浸す方法です。水の量は、鉢が半分〜2/3ほど浸る程度が目安です。
しおれていた植物が元気を取り戻して、また茎や枝を延ばすようであれば復活できるかもしれません。うまくいけば、1〜2日ほどで復活しますよ。
腰水は長期間続けないよう注意します。あまり長い間腰水していると、根腐れを起こしたり土が腐敗したりする危険があります。これは根も呼吸しており、酸素が必要だからです。鉢を水につけておくのは2〜3日ほどにしておき、その後は土を乾燥させてください。
特に夏の腰水は注意が必要です。高温で水が悪くなって、植物に悪影響を及ぼします。定期的に水換えをしてください。また、冬は水が凍ってしまう恐れがあります。屋外での腹水は避けた方がいいでしょう。
水切れを防ぐには、正しく水やりをします。基本的に、水をあげるときはたっぷりと与えましょう。鉢底から水が出てくるくらい与えれば十分です。水は、植物の上からかけるのではなく、根元の土にかけるようにすると水が行き渡りやすくなります。
札埜さん
それでも土がすぐに乾燥してしまう場合は、一度水を与えて鉢底からの流出が止まった後、もう一度鉢底から水が出るまで水を与えてみてください。2回に分けて水を与えることで、土全体に十分な水分が行き渡り、乾燥するまでの時間を伸ばすことができます。
また、水やりのタイミングも大切です。基本的には朝に行いましょう。ただ夏場は乾燥しやすいので、土が乾いていれば夕方にも水やりします。
昼の水やりは避けてください。昼間は気温が高く、あげた水が熱せられて植物に大きなダメージを与えるおそれがあります。また、高温下では水分が蒸発しやすく、根に十分な水が届かない可能性もあります。
夜もおすすめできません。実は、植物の根は夜に成長します。成長するときに水が少ない方が、根が水を探して長く伸びるのです。さらに、夜に水を与えると、湿った環境を好むナメクジなどの夜行性害虫を引き寄せる原因にもなります。
水ゴケに水を含ませ、土の表面を覆うことで水切れの予防ができます。鉢植えにおすすめの方法です。土の水分は毛管現象によって土の表面まで引き上げられ、そこから蒸発していきます。表面を水ゴケで覆うと、土と水ゴケの境界で毛管が遮断されるため、水分の蒸発を抑えることができます。
水ゴケは、ホームセンターや園芸店などで入手できます。乾燥した状態で売られているので、水に浸して湿らせましょう。たっぷりと水を吸わせたら、土の表面を覆うように被せます。
給水器を使うのもいい方法です。容器に水を入れ、土に挿すことでゆっくりと水を与えられます。
容器の大きさによって、水がもつ日数が異なります。500mlのペットボトルであれば、2〜3日ほどです。旅行で数日間家を空けるときでも、水切れの心配がなくなりますよ。
たくさんの植物を育てている方は、自動灌水機の導入もおすすめです。タイマー付きで管理できたり、ソーラーパネルで充電できたりと種類も豊富です。水切れ防止のために、好みのものを取り入れてみてください。
水切れ対策として、最初から水切れしにくい植物を選ぶのも一つの手です。乾燥に強く、水やりの頻度が少なくても丈夫に育つ植物を紹介します。
代表的な観葉植物である「パキラ」は、乾燥に強く水切れしにくいです。耐陰性や耐寒性にも優れていて、ちょっとやそっとでは枯れません。乾燥にも過湿にも比較的強く、とても丈夫なため、初心者の方でも育てやすい植物です。
「ガジュマル」は沖縄に自生している木です。「精霊が宿る木」と言われ、昔から神聖な木として扱われてきました。日光を好むので、よく日が当たる場所に置きます。頻繁に水をあげなくても水切れしませんが、極端に乾燥すると葉が落ちたり、幹がしぼんだりしますので注意してください。
乾燥地帯に生えているため、水切れしにくいのが「ユッカ」です。丈夫でよく育ち、ぐんぐんと伸びる姿から「青年の木」とも呼ばれています。多少水やりを忘れても枯れにくいので、安心して育てられますよ。
多肉植物もおすすめです。代表的な多肉植物であるサボテンは砂漠などの乾燥地帯に自生する丈夫な植物です。多肉質の葉は水分の蒸散を抑える構造を持ち、水分を内部に蓄えることができるため、少々乾燥した状態が続いても水切れしにくく、簡単には枯れません。サボテンの他にも、アロエやハオルシアなどは人気の高い多肉植物です。
(右)乾燥しているのでトリコームの外周が立ち上がっている
エアプランツは、チランジア属の植物の総称です。土を必要とせず、葉から空気中の水分を取り入れて生きています。チランジアの茎や葉の表面には無数の「トリコーム」と呼ばれる特殊な構造があり、これが空気中の水分を吸着し、植物体内に水分を取り込む役割を果たしています。トリコームは乾燥時には外周が立ち上がっており、水分を吸収すると平らになるという特性があります。
札埜さん
春や秋であれば、週に2〜3回霧吹きで水を与えるだけで育てることができます。水切れしにくいうえに、おしゃれでかわいいものが多いので、グリーンインテリアとしてもおすすめですよ。
植物は水がなければ生きていけません。水切れしないよう、日ごろのお世話を怠らないようにしましょう。初めから水切れしにくい植物を選ぶのもひとつの手です。
もし水切れを起こしてしまったら「腰水」をしてみてください。弱った植物を復活させられるかもしれません。水切れには十分注意して、ガーデニングを楽しみましょう。
札埜さん
一般的には、鉢の直径は株の広がりの1/2〜2/3程度、高さは株の高さの1/3〜1/2程度が目安とされます。