「猫が噛む」という意味を持つキャットニップ。その名のとおり、猫を寄せ付けて興奮させるネペタラクトンという精油成分を含んでいる植物です。虫が嫌う香りがあるため、「虫除けハーブ」として人気の園芸ハーブでもあります。

今回は、キャットニップの育て方から使い方、効能まで詳しく解説します。

キャットニップはどんな植物?

キャットニップ

画像協力:ポタジェガーデン

キャットニップは、シソ科ネペタ属の多年草ハーブです。本来「ネコハッカ」と訳すべきところを、日本に渡来した折、なぜか「イヌハッカ」とされ、現在まで続いています。長野県筑摩(現在の松本市あたり)で多く見られるので、「チクマハッカ」とも呼ばれています。

小早川愛さんプロフィール画像

小早川さん

紀元前8世紀から紀元前1世紀ごろ、イタリア南部にあった都市国家エトルリアの特産品として知られ、調味料や医薬品として重宝されてきたハーブです。キャットニップの学名にはエトルリアの街「Nepeti」が採用され、「Nepeta catarina L.」と呼ばれ、その後、ハーブに注目が集まるギリシャ・ローマ時代に引き継がれたといわれています。

ヨーロッパからアジア南西部に広く分布するハッカの仲間で、見た目がミントにそっくりなハーブです。レモンバームと同様にミツバチを呼び寄せる効果があり、のこぎり状に縁取られた卵形の葉には、マタタビのような猫が好む芳香もあります。葉の表面はふさふさと羽毛のような軟毛におおわれているのが特徴です。

丈夫で寒さに強い性質で、初心者でも栽培しやすいハーブですが、庭植えする際は猫に荒らされないよう、注意が必要です。6月~7月にかけて、茎の先端に白い花穂をつけます。開花時期になると、草丈は40~60cmまで生長します。

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なお、キャットニップはキャットミントと混同されることがありますが、「キャットニップ(学名:Nepeta catalia)」と「キャットミント」(学名:Nepeta mussinii)」は同じネペタ科ではありますが、は属が違うので、別種です。

キャットニップの栽培のはじめ方

キャットニップの栽培のはじめ方

「種まき」もしくは「苗」から育てる

キャットニップは、種まきからでも苗からでも育てられます。

種まきに適した時期は、4~5月か、9月中旬~10月下旬の年2回訪れます。種まきにふさわしいのは気温が20℃前後の風の穏やかな午前中を選ぶとよいでしょう。

キャットニップの種まきは、育苗ポットで始めるとスムーズです。まず、約9cmほどの育苗ポットに入れた培養土の表面に、2~3か所浅いくぼみをつけ、それぞれのくぼみに2~3粒ずつ種をまきます。種はゴマよりも小さく軽くてすぐに流れてしまいます。蒔く前に育苗ポットにたっぷり水を与えましょう。種を蒔いたらうすく土をかぶせて手で押さえます。その後、水勢のおだやかなジョウロで軽く水やりをします。

発芽後、本葉が5~6枚生えてきた頃に、生育状態のよい株を残して他を間引きます。草丈が15cmほどに育ったら、鉢や庭に植え付けます。

苗の植えつけ栽培も可能です。苗が出回る時期は、4月~6月または9月~10月。茎が間伸びしたり葉が黄色くなったりしていない丈夫な株を選びましょう。

キャットニップ苗

画像協力:ポタジェガーデン

「鉢植え」と「地植え」のどちらでも育てられる

キャットニップは、鉢植えでも地植えでも育てられます。

鉢植えで育てる場合は、ぜひ寄せ植えに挑戦してみてください。上に向かって伸びる立ち性のハーブですので、ほふく性のハーブや草丈の短いハーブと組み合わせると、立体感をもたらしてくれます。生育旺盛で大株になりやすいので、鉢は大きめのものを用意しておくとよいでしょう。

地植えでは、鉢植えよりもいっそう生育が旺盛になります。他の植物との間隔をしっかりと確保して植え付けてください。

猫よけをしたいなら囲いを設置

キャットニップを屋外に植える際の注意点は、なんといっても猫を寄せ付けやすいこと。その名が「猫が噛む」を意味するとおり、キャットニップは猫が好む香りを持っています。

すべての猫が惹きつけられるわけではありませんが、キャットニップに含まれているネペタラクトンという成分が、猫を興奮させるため、庭を荒らされかねません。この成分はマタタビにも含まれている成分といわれています。

よって、キャットニップを地植えする場合は、金網の囲いを設置するのをおすすめします。屋外で鉢植えしたりする際は、猫が届かない高いところに置くなど対策が必要です。

キャットニップの育て方|適した環境

キャットニップ

画像協力:ポタジェガーデン

キャットニップが好む日当たり・温度

キャットニップは、日当たりのよい場所を好みます。寒さにも強く、北海道や東北でもよく育ちます。多年草なので、冬に枯れても翌春にまた新芽を出し、さらに大きく生長します。なお、土が凍るほど寒冷になる地域の冬越しは、霜対策で、落ち葉やワラでマルチングしておくと安心です。

キャットニップの水やり

キャットニップの水やりは、地植えの場合はほとんど必要ありません。真夏の高温期に乾燥する日が続くような場合は、土や植物の様子を見て水やりしてください。

鉢植えの場合は、春~夏の生育期、土の表面が乾いたタイミングで水やりします。鉢の底から水がしみ出すくらい、たっぷりの水を与えましょう。水やり後は、根腐れを防ぐために、鉢皿に残った水は必ず捨てておきます。冬場は休眠期のため、土が乾いてから月に2回を目安に水やりを。

キャットニップの育て方|土・肥料

キャットニップを育てる土・肥料

キャットニップの土

キャットニップの土は、水はけがよければ土質はあまり選びません。地植えでは、やせた土壌でも無理なく育ちます。鉢植えで栽培する場合は、市販のハーブ用培養土を使えば足ります。土を自作するなら、赤玉土:腐葉土:川砂=6:3:1の割合で配合するとよいでしょう。

キャットニップの栽培におすすめの土

赤玉土小粒 3L

赤玉土小粒 3L

木の葉100%腐葉土 25L H

木の葉100%腐葉土 25L H

川砂 20kg

川砂 20kg

キャットニップの肥料

開花時期から1か月ほど前の2月上旬から3月下旬と、花が終わった後の8月頃に、追肥をします。地植えの場合は発酵油かすなどの有機肥料が適しています。鉢植えの場合は固形の化学肥料が適しています。使用上の注意をよく見ながら適量を与えましょう。

キャットニップは、非常に丈夫なので肥料を必要とせず育てやすいハーブです。肥料をやりすぎると香りが悪くなったり茎が間伸びしたりします。植物の状態を見ながら、与える肥料の量を調整してみてください。

キャットニップの栽培におすすめの肥料

醗酵油かす(中粒) 600g

醗酵油かす(中粒) 600g

キャットニップの育て方|日々の手入れ

キャットニップの手入れ

キャットニップの植え替え

キャットニップは、鉢植え栽培の場合は根詰まりを起こしやすい生育旺盛なハーブです。鉢の大きさにもよりますが、1~2年に1回のペースで、一回り大きな鉢に植え替える必要があります。植え替えのタイミングは、真夏や真冬を避けて行いましょう。

小さい鉢から大きい鉢に植え替える際は、根鉢を崩さないように引き抜き、1/3ほど古い土を払い落します。このとき、弱った根や古い根を切り取って、健康な根が育ちやすいよう整理しておきます。

大きめの鉢に土を敷きつめ、根鉢を置きます。次に、株元が鉢の縁から3~4cmにくるよう高さを調節しながら、土を流し入れます。なお、鉢の縁から土の表面までの間を3~4cmあけておくのは、水が土に吸水されるまで貯めておくウォータースペースを確保するためです。

土を流し入れたら、株元を手の平で上から押さえて安定させます。最後に、ジョウロでたっぷりの水をやれば、植え替え完了です。

キャットニップの剪定

キャットニップは、日当たりを好み、葉が繁りすぎると蒸れて病気が発生しやすくなります。梅雨入りする前に、株全体の1/3程度まで剪定しておくとよいでしょう。

また、キャットニップは、気温が上がると盛んに花が咲き乱れます。花を楽しむよりも葉を多く収穫したい場合は、伸びてきた茎を1/3程度の長さまで刈り取りましょう。

キャットニップの育て方|収穫のコツ

キャットニップの収穫

キャットニップの収穫時期と方法

キャットニップの収穫時期は、4月~12月と、長期にわたります。乾燥して保存する場合は、つぼみがつき始めるにかけて、株元から株全体を刈りとるようにして収穫します。サラダや料理の彩に利用するなら、都度収穫してフレッシュな状態で使えるようにするとよいでしょう。

キャットニップ使い方と効能

乾燥させたキャットニップは、より香りが強くなります。猫を飼っている方は、これを利用して、猫のおもちゃ「キャット・トイ」を作ってみてください。作り方は、好きな大きさ・形の袋状の布に綿を詰め、乾燥させたキャットニップを少量入れて袋の口を縫い合わせるだけ。個体差もありますが、猫が夢中で遊べるおもちゃになります。

小早川愛さんプロフィール画像

小早川さん

ネズミのカタチでできている手作りキャット・トイは猫好きのなかではギフトとしても喜ばれているそうです。

また、キャットニップの葉や茎には、胃腸障害を和らげる効果があることが知られており、飲用や食用にも利用できます。

小早川愛さんプロフィール画像

小早川さん

ヨーロッパでは、紅茶が普及する前はキャットニップがティーとして飲まれていたほどだったそうです。また、ハーブで身体と心を整えることを目的としたハーブ療法の本場イギリスでは、薄めたハーブティーを水分補給の代わりに、乳幼児に与えるそうです。むずがりや、興奮状態、落ち着きのなさ、発熱を和らげるのだとか。
子供だけでなく、私たち大人の緊張、鬱屈や高ぶった感情も解き放つような優しさがあります。フレッシュな口当たりは、体を冷やす効果があるといわれています。

キャットニップのハーブティーは、生の葉からでも乾燥させた葉からでも作れます。生葉で作る場合は、お湯を注いで5分ほど蒸らします。乾燥葉で作る場合は、ティーポットに入れる前に茶葉を手で揉んで香りを立たせ、お湯を注いで2~3分ほど蒸らして飲みます。

フレッシュなキャットニップを収穫できるなら、サラダや料理の彩に、生のキャットニップを使うのもおすすめです。

キャットニップの育て方|注意したい病害虫

キャットニップは、病気や害虫に強いハーブです。とくに、独特な香りがあるため害虫はほとんど寄せ付けません。虫よけ効果もあるほどです。

病気は、まれに灰色かび病にかかることがあります。灰色かび病にかかった株は、葉に小さな白い斑点が現れ、徐々に斑点が灰色に変色しながら範囲を広げていきます。

湿気の多い時期にそなえて適時に剪定しておけば、灰色かび病の予防としては十分です。万が一かかってしまったら、り患した部分を早期に取り除きます。取り除いた葉や茎は、株の周辺に残さず、必ず処分してください。

落葉した枯れ葉や花がらも、灰色かび病の菌の発生源になります。きちんと取り除き、株周りをきれいに保つよう心がけましょう。

まとめ

キャットニップ

画像協力:ポタジェガーデン

いかがでしたか。お茶からクラフトまで、さまざまに活用できるキャットニップ。虫よけにもなるので、夏のガーデンにはうってつけです。

キャットニップは猫を寄せ付けるため、庭の猫対策は必須になりますが、生育旺盛で育て方自体は非常に簡単です。愛猫家の方々は、キャットニップを使ったおもちゃ作りにも挑戦してみてくださいね。

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