カラフルな体色にぐりぐりとした目がチャームポイントのカメレオン。トカゲ好きな方はもちろん、「初心者だけどちょっと変わったトカゲを飼ってみたい」という方にとっても気になる存在ではないでしょうか。
一般的に、カメレオンの飼育難易度は高いといわれています。ほかのトカゲより神経質だったり、餌の食いつきが悪かったりするのが主な理由ですが、なかには飼いやすい種類のカメレオンもいるためご安心ください。また、それらの懸念点を解消するためのコツもあります。
今回は、カメレオンの上手な飼い方を初心者の方向けにまとめましたので、実際にお迎えする前にぜひ参考にしてみてください。
カメレオンは、有鱗目(ゆうりんもく)カメレオン科という独立したグループに属するトカゲの総称です。トカゲのなかでも特徴的な外見や生態をしており、トリケラトプスを思わせるような角やフラップ(皮膚飾り)は特に特徴的です。また、有名な特技として、周囲の色と同化する「変身能力」に惹かれている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、カメレオンの生態について紹介します。
主な生息地 | アフリカ、南アジア、マダガスカルなど |
生活様式 | ・昼行性 ・基本的に樹上棲 |
食性 | 肉食よりの雑食 |
性格 | ・基本的に温厚 ・神経質 |
寿命 | 5~10年 |
カメレオンという名前は「樹上のライオン」を指すギリシャ語に由来するといわれており、実際にほとんどの種類が樹上棲です。足先は木の枝や葉をつかみやすいよう二股に分かれ、獲物を狙う際や天敵から身を護る際には器用に移動します。地上を歩くのはうまくないといわれていますが、砂漠に住む地上棲のカメレオンもいるため、一概にはいえません。
カメレオンが色を変えられるのは、皮膚の下にある「色素胞」という細胞からなる層が関係しています。色細胞には白、赤、黄、黒などの色の粒があり、光や熱を浴びると一つひとつが反射する仕組みです。
カメレオンは外的な要因に応じて色を変えている(擬態している)とは限らず、単に気分によって変色していることも分かっています。たとえば、オスがメスに求愛するとき、オス同士が喧嘩するとき、敗北して「降参」を意思表示するときなどがそうです。
ちなみに、カメレオンは死ぬとその場の環境に応じた色になります。植物が茂った日の当たる場所で死ねば緑色になり、暗い場所で死ぬと灰色や暗い茶色になります。
カメレオンの目は大きく突出しており、左右の眼球を非対称に360度動かすことができます。左右別々の視点で獲物を発見できるため、木の上でじっと動かず目だけを動かして周囲を観察しています。
多くのカメレオンは主に昆虫を食べます。前述した目を駆使して獲物を見つけ、離れた位置からでも長く伸びる舌で獲物を捉えます。なお、大型種のなかには鳥類や哺乳類を襲う種類もいます。
また、ペットとして人気のエボシカメレオンは葉や果物などを食べることもあります。全体として、カメレオンは「肉食寄りの雑食」といえるでしょう。
多くのカメレオンは温厚で、人間に対して噛みついたり引っ掻いたりして威嚇することはほとんどありません。ただし神経質な個体が多く、なかなか飼い主さんに慣れない子もいます。カメレオンを飼うのが難しいといわれる理由の一つです。
ペットとして飼われるカメレオンは3~10年生きることが多いです。幅があるのは種類に関係しているほか、飼育環境によって大きく異なるためです。早ければ3年を待たずして亡くなる子もいます。愛情を込め、快適で暮らしやすい環境を整えてあげましょう。
初心者の方でも比較的飼いやすい、またはペットとして人気のあるカメレオンをいくつか紹介します。
学名 | Chamaeleo calyptratus |
原産 | アラビア半島 |
大きさ | 45~65cm |
寿命 | 5~7年 |
値段 | 8,000~4万円 |
エボシカメレオンは、トサカが烏帽子(平安時代からの伝統礼服)のように縦長の形状をしているカメレオンです。美しいグリーンを基軸カラーとし、白や褐色の縦帯が入っているのも特徴です。
多くのカメレオン同様、昆虫を主食とする肉食ですが、エボシカメレオンは果物や葉も食べるため、餌の選択肢が広がります。
流通している個体はブリード個体であり、価格は幼体で8,000円~、生態では2~4万円で販売されていることが多いです。オスは最大65cmほどに成長するため、大きな飼育ケージを用意しましょう。
学名 | Pygmy Chameleons |
原産 | アフリカ・タンザニア共和国やケニア共和国 |
大きさ | 6~9cm |
寿命 | 2~5年 |
値段 | 5,000~2万円 |
コノハカメレオンは、名前の通り木の葉のような見た目と大きさをしているカメレオンです。成長しても6~9cmほどにしかならないため、飼育スペースの確保が難しい方におすすめできます。
谷渕さん
地上傾向も強いため、高さのあるケージも必要ありません。
また、販売価格は約5,000円と、入手しやすい価格帯であることが多いです。とはいえ、エボシカメレオンほどメジャーな存在ではなく、一般的なペットショップで見かけることは少ないかもしれません。
なお、「スペクトラル コノハカメレオン」「ソマリ コノハカメレオン」などの亜種も人気です。
学名 | Furcifer pardalis |
原産 | マダガスカル |
大きさ | 40~50cm |
寿命 | 5~7年 |
値段 | 3~6万円 |
パンサーカメレオンは、ヒョウのような美しい模様で知られるカメレオンです。同じマダガスカル島でも住んでいる場所によってカラーリングが異なり、「アンバンジャ」「ノシベ」「アンビローブ」などさまざまなモルフ(※柄・色の特徴が確立されている品種のこと)がいます。どのパンサーカメレオンも個性があって色鮮やかなことから、「爬虫類の宝石」と呼ばれることもあります。
パンサーカメレオンはカメレオンのなかでも人慣れしやすく、また丈夫なので初心者の方でも比較的飼いやすいでしょう。ただし成長すると40~50cmになるため、広めの飼育スペースが必要です。
販売価格の相場は3~6万円ですが、高い個体では10万円を超えることもあります。
ここでは、カメレオンの飼育に必要なアイテムを紹介します。樹上性のカメレオンであれば基本的に共通しているため、ぜひ参考にしてみてください。
ケージ選びで大切なのは次の3つです。
ケージ内には登り木をはじめとするレイアウト素材を配置することになるため、ある程度の面積があるものを用意しましょう。エボシカメレオンであれば、狭くても60cm四方以上は欲しいところです。反対に、コノハカメレオンのような小型種であれば、小型のケージでも問題ありません。
通気性が悪いと湿度が高くなり、カビが生えやすく不衛生になります。その点、メッシュケージや金網ケージであれば湿度がこもることは少ないでしょう。もっとも、金網ケージは大型のカメレオンでないと、隙間から脱走してしまうため要注意です。
また、掃除などのためにケージ内に手を入れるとき、上からアクセスするとカメレオンが驚いてしまいます。扉開きや観音開きのように、できるだけ横から手を入れられるケースを選びましょう。
野生のカメレオンは木の上で生活しているため、登り木や流木、自然を感じられる観葉植物などを設置してあげましょう。葉の多い植物はシェルター代わりになるほか、カメレオンによっては餌にもなります。
とはいえ、せっかく用意したレイアウト素材を食べられてしまうと再び用意しなくてはならないため、ダミーの人工植物を置く方も多いです。
床面にはあまり降りてこないため床材はなくても構いませんが、ペットシーツや古新聞を敷くと排泄物の掃除が楽になります。
カメレオンは動くものにしか興味を示さない習性があり、これは水も同じです。お皿などに貯めた水は水だと認識しないことが多いため、爬虫類専用のドリップボトルを用意しましょう。
カメレオンもトカゲの仲間なので、紫外線を浴びて骨の育成に必要な成分を作らなければ病気になってしまいます。毎日のように日光浴させるのが難しいでしょうから、飼育下では紫外線ライトを用意するのが定番です。
保温にはバスキングライトや保温球、ペットヒーターなどを用います。飼育ゲージ全体を温めるほか、局所的に温かい「ホットスポット」を用意してあげてください。
主食はコオロギやワームを与えます。水と同じく、動いているものしか認識しないため、必ず生き餌の状態で与えましょう。コオロギは爬虫類ショップでまとめて入手できるほか、自分で繁殖させる方法もあります。いずれにしろ、常に生き餌を与えるためには、餌も同時に飼育することになると考えてください。
なお、コオロギやワームだけだと栄養が偏る恐れがあるため、爬虫類用のカルシウム添加剤をまぶしてから食べさせるのが一般的です。また、個体によっては違う餌も食べたがるグルメな子もいます。たまにはバッタやカマキリ、セミなども食べさせてあげましょう。エボシカメレオンであれば野菜や果物も食べてくれます。
カメレオンは比較的丈夫なトカゲですが、「生き餌しか食べない」「止水を水と認識しない」「神経質でストレスを溜めやすい」「視野の広さから視点にも気をつける」といった特徴から、飼育難易度が高いといわれてきました。しかし最近は飼育方法が確立され、事前知識さえあれば初心者の方でも飼えるペットになりつつあります。
この項目では、カメレオンを上手に飼うコツを注意点と共に紹介します。
樹上棲のカメレオンは、高い場所からほかの生き物を見下ろしています。飼い主さんに対しても、基本的には見下ろせる位置にいないと落ち着かず、ストレスを溜める可能性が高いです。したがって、飼育ケージは飼い主さんの目より高い場所に置いてあげてください。
お迎えするカメレオンによって適温が異なるため、よく確認しておきましょう。たとえばエボシカメレオンは標高1,200~2,000m級の森林に生息しており、26~29℃が適温です。飼育ケージ内の温度を上げすぎないように注意しましょう。現地の夜を想定すると昼夜の温度差をつけたほうが自然ですが、それでも20℃を下回らないほうがよいといわれています。
また、カメレオンの多くは多湿を好みますが、同時に通気性の良い環境を好みます。湿度は水容器を設置したり、飼育ケージ内に霧吹きをかけたりして保つとよいですが、通気性が悪いと空気がよどんでしまいます。だからといって小型のファンなどで風を送ると、今度は保温が難しくなるというデメリットも……。
いろいろと加減が難しいところですが、照明器具、ヒーター、エアコン、加湿器などを適宜用いて微調整してあげてください。
カメレオンは動く水しか認識しない傾向があります。必要な道具の段落で紹介した爬虫類専用のドリップボトルで解決できることが多いですが、それでも水を認識しない場合は、次の方法で水があることを教えてあげましょう。
餌の頻度は、幼体であれば毎日、成体には2~3日に1回与えます。昆虫だけではカルシウム不足に陥るため、パウダー状の爬虫類用サプリメントをまぶして与えるのが基本です。
カメレオンのサイズに合ったコオロギをケージの内に入れると、元気なカメレオンであれば舌を伸ばして捕獲します。勢いよく食べるからといって与えすぎないようにしましょう。
反対に、食いつきが悪い場合は体調不良かもしれません。温度や湿度は適温か、適度に飲水しているか、飼育ケージ内は衛生的かなど、カメレオンにとって住みよい環境かどうかを再チェックしてください。
谷渕さん
カメレオンは皮膚の色や握力などで体調不良を把握することができるので、一体何が原因なのかを知ることも重要になってきますね。
また、単純に同じ餌に飽きている可能性もあります。神経質な個体であれば、サプリメントがまぶしてある餌を嫌がっているかもしれません。餌の食いつきにムラがあるのもカメレオンの飼育が難しいといわれるゆえんですが、昆虫の種類を変えたり、レイアウトを変えたり、飼育ケージの置き場所を変えたりすることで、すんなり食べてくれることもあります。カメレオンが気分転換できるような状況を作ってあげることが大切です。
カメレオンのフンや食べ残しのコオロギを見つけたら、できるだけ早急に取り除きましょう。カメレオンの病気や部屋に悪臭が漂う原因になります。
また、カメレオンに限らず、爬虫類はサルモネラ菌を保菌している恐れがあります。カメレオンに触れた後はもちろんですが、掃除後もよく手を洗いましょう。
カメレオンは神経質なので、単独飼育が基本です。特にオスは、別のオスがいると喧嘩を始める可能性が高いでしょう。複数匹を飼いたい場合は、お互いが視界に入らないよう工夫してください。
谷渕さん
レイアウトやケージの置き場所などで慣らすことも可能です。
カメレオンの雌雄の見分け方ですが、オスのカメレオンは尾の付け根がやや太く、小さな膨らみも見られます。反対に、メスの尾は細めで、付け根部分の膨らみもありません。また一般的に、色鮮やかに変化するのはオスであり、体長もオスのほうが大きいです。
カメレオンはトカゲのなかでも臆病で神経質なので、ハンドリングには向きません。赤ちゃんの頃から適度に接していると慣れることもありますが、人間に触れられるのは好まないことだと知っておきましょう。無理に触ろうとすると、身を護るために攻撃される恐れもあります。
谷渕さん
基本的に「慣れる」<「耐える」という考え方で接するイメージだと思ってもらえればよいと思います。
また、ジロジロと見るのもストレスの原因になります。鑑賞性の高いペットではありますが、基本的にはそっとしておいてあげてください。
谷渕さん
舌から捕食する習性なので嚙みついてくることはありませんが、慣れないうちは口を開けて威嚇してくるかもしれません。
カメレオン独特の個性でもある眼球ですが、木の枝や葉で傷ついたり、ゴミが混入したりして角膜が損傷することがあります。また、ウイルス・細菌の感染により結膜炎になることも少なくありません。
谷渕さん
脱皮不全からの眼球感染症もあるため、目元に脱皮が残っていたら手伝ってあげるのも一つの手です。
このように、カメレオンならではの傷病にかかることもあるため、カメレオンを診察してくれる動物病院は必ず探しておきましょう。近くに動物病院があるからといって、カメレオンを診てくれるとは限りません。なかには犬や猫、鳥といったメジャーなペットしか診察対象でない動物病院もあります。
なお、カルシウム不足で起こる骨の病気「くる病」や、複合的な要因で起こる脱皮不全、バスキングライトの管理ミスによる火傷など、トカゲ全般に起こり得る傷病はカメレオンにも当てはまります。ほかに、カメレオン特有の目が窪む「脱水症状」もあります。異変を感じたらすぐに動物病院に相談し、早期治療を心がけましょう。
カメレオンの飼育方法は、徐々にではありますが、確立されてきています。特にペットとしてメジャーな種類は入手できる情報が多いため、カメレオンを育てたことがない方でも大失敗することは少ないでしょう。
とはいえ、カメレオンがほかのトカゲより神経質で、ハンドリングも嫌がる子が多いです。手のかかるペットであることは事実であり、必要になる道具も、よりメジャーなトカゲに比べると多いと感じるかもしれません。
カメレオンの飼い方に触れ、「ちょっと難しそう……」と感じる初心者の方は、まずは別の爬虫類から始めてみてはいかがでしょうか。反対に、「問題ない!」と思った方は、ぜひカメレオンがいる生活を楽しんでください。感情豊かに体を変色する姿は何度見てもカッコいいし、かわいいものですよ。
谷渕さん
カメレオンはほかの爬虫類と比べると異質に思われがちですが、コツさえつかめば比較的楽に飼育可能になります。まずは「生体を見てみる」「生体に触れてみる」ところからスタートしてみてください!その愛らしさにきっと魅了されると思います!
谷渕さん
カメレオン食のカメレオンという、もっと変わった種類もいます。