パンノキは、熱帯地域では主食として食べられるほどポピュラーな果物ですが、日本ではなかなか食べることができない木の実です。
パンノキの実は、見た目はドリアンのようですが、焼くとパンのような食感と香りと芋のような味を楽しめます。寒さ対策をすれば育てるのはそれほど難しくないため、初心者でも育てられますよ。
そこで今回は、パンノキの育て方を紹介していきます。大きく育てて、たくさん収穫してみましょう。
パンノキはポリネシア原産のクワ科の植物で、最大10mまで育つ常緑高木です。雌雄異花で、同じ木に球形の雌花と棒状の雄花の両方が付くため、一本でも果実が成ります。ポリネシアでは主にオオコウモリが受粉の媒介を行うとされています。果実には種ありと種なしがあり、種なしは種ありを品種改良したものです。
名前の由来は、食用である果実を焼いて食べると、パンのような香りとふわふわした食感がするためです。地球上で最も収穫量が多い食用樹のひとつとされ、一年間に数百個の実を付けることもあります。
パンノキはハワイでもなじみのある木で、ハワイでは「ウル」と呼ばれています。裕福の象徴とされており、ハワイアンキルトのデザインとしてパンノキの葉を見かけたことがあるという方も多いことでしょう。幹はサーフボードやフラダンスのドラムなどに加工され、現地の生活に密着しています。
パンノキは苗からでも種からでも育てられます。苗を選ぶときは、病害虫が付いていないことを確認します。病害虫が付いていると、最悪の場合、他の植物にうつってしまう可能性があるので注意しましょう。
種から育てる場合は、乾燥してしまうと発芽しにくくなるため、湿っているものを購入します。
パンノキは寒さには弱いため、日本では屋外で冬越しするのは難しく、基本的には鉢植えで育てます。ただし、沖縄では地植えでも冬越しできる場合があります。
パンノキは日光が大好きなので、屋外の日当たりが良い場所で育てましょう。原産地では日よけとして用いられています。一方、耐陰性が弱いため、日光の当たらない日陰で育てるのは難しいです。
ただし、まだ小さく葉の色が薄い苗は、真夏の強い日差しに当たると葉焼けを起こす可能性があります。小さいうちは半日程度日陰になるような場所で育てるか、遮光ネットなどを使って遮光すると良いでしょう。
パンノキを室内で育てる場合は、可能な限り明るくて風通しの良い場所で管理します。ただし、エアコンの風が直接当たる場所は避けましょう。
熱帯地域が原産のため、生育温度は20~30℃と少し高め。暑さには強い反面、寒さには弱く冬越しには注意が必要です。
気温が10度以下になると枯れてきてしまうので、最低気温が15度を下回る季節になったら室内で管理し、暖房機器を使って保温しましょう。
パンノキは葉が大きく、夏の間は日光に当てて管理を行うため水切れしやすいです。そのため、土が乾ききる前にたっぷりと水やりします。ただし、午前中に水やりすると蒸れてしまうので、夕方から夜に行いましょう。春と秋の間は土の表面が乾いたらたっぷりと水やりします。
パンノキは水はけの良い環境を好みます。根腐れをしないように水はけのよい土を選び、鉢底には鉢底石を入れて水はけを良くしておきましょう。
おすすめは、市販の観葉植物用土を使う方法です。簡単かつ確実です。
パンノキは肥料を与えなくても育ちますが、与えたほうが早く育ちます。4~6月と9~10月に緩効性の化成肥料か、液体肥料を規定の分量施しましょう。
真夏や冬は生長が鈍るので、肥料を与えると肥料焼けを起こす可能性があります。肥料を与えすぎた場合は、水やりを多くし洗い流してあげます。
パンノキは剪定をしないと主幹ばかりが伸びてしまい、枝が出ないことがあるので、ある程度主幹が伸びたら清潔なハサミで先端を剪定します。先端を剪定することで、葉の付け根から新しい枝が生えてきて、枝数を増やすことができます。
樹が大きくなり枝が多くなったら、古くなった葉や枝を剪定し、通気性をよくしましょう。剪定の適期は4~5月か9月です。
夏や冬に剪定を行うと枯れる可能性があるので、おすすめしません。ただし、小さな枝や少しの葉であれば一年中剪定しても大丈夫です。また、湿度が高い日に剪定すると、切り口が乾かずにカビなどが発生する可能性があるので控えましょう。
パンノキは生長が非常に早い植物のため、基本的には1~3年に1度の植え替えが適しています。鉢の中が根でいっぱいになり根鉢の状態になると、根腐れを起こして枯れてしまうことがあります。
植え替えや植え付けの時期は、5~7月が適期です。植え替えの際は、ひと回り大きい鉢に植え替えましょう。
パンノキは実生か根伏せで増やせます。
実生の場合は、収穫した果実から種を取り出し、種を乾燥させずにそのまま撒きます。根伏せの場合は、切った根を土の中に表面から数ミリ出る状態で縦に挿して、新しい芽が出たら鉢に植え替えます。
パンノキは、春に開花し、夏に果実を収穫します。果実の大きさは10~30cm。青いまま収穫してすぐに食べる場合は、焼いたりあげたりして食べましょう。収穫して数日たつと皮が茶色くなり柔らかくなります。
食べるとジャガイモや甘くないサツマイモのような味がします。
パンノキは1日1個食べれば生きていけると言われるほど栄養満点の果物で、でんぷん質だけではなく、タンパク質も豊富です。原産地では、パンノキの実を主食としている国もあります。
パンノキは病気になりにくい植物です。ただ、水をやりすぎると根腐れが起こりがちです。たっぷり水やりをしたら、受け皿の水を捨てるように心がけましょう。
パンノキにはハダニやカイガラムシが付きやすい品種です。
ハダニは乾いた環境が好きなので、季節の変わり目や風の通りの悪い所で発生します。葉から吸汁して樹を弱らせるので、見つけたら駆除しましょう。ハダニは水に弱いので、葉水をすることで予防できます。
カイガラムシは幹から吸汁したり、排泄物が原因ですす病になったりするので厄介です。見つけたらすぐに駆除しましょう。歯ブラシやヘラを使ってこすり落とすのが効果的です。
パンノキは雌雄異花の常緑高木です。果実は夏に収穫ができ、焼いて食べるとパンのような食感と芋のような味が楽しめます。収穫量も栄養価も高いため、原産地では主食として食べられています。
パンノキは熱帯地域が原産のため、暑さに強い反面、寒さには弱いので温度管理が重要です。また、日当たりが悪い場所では育ちにくいので、日が当たる場所で育てましょう。水やりは季節によって頻度を変える必要があります。
日本ではパンノキの果実を食べる機会がないため、味わうためには自分で育てるしかありません。育てるのはそれほど難しくないので、ぜひチャレンジしてみてください。
岩瀬さん
この期間は乾燥具合を見ながら給水を行いますが、2〜3日の間隔で良いかと思われます。冬の間は生長が遅くなるので、水やりを少なめにし、土の表面が乾燥してから2〜3日後に水やりをします。また、水やりのほかに葉水を毎日行うと、葉の乾燥による痛みや、ホコリ、病害虫を予防できます。