野菜や花を育て終わったあとに、ポツンと残るのは土が入ったままのプランター。次の季節に新しい植物を育てるまでに、この植物を育て終わった土に手を加えてほしい作業があります。それは、土のリサイクルです。この記事では、土のリサイクルの方法についてわかりやすく解説します。
家庭菜園やガーデニングで植物を育て終わった土は、栄養失調の状態。適切な方法で土をリサイクルして、新たな植物を育てる準備を進めることが重要です。土のリサイクルをおすすめする具体的な理由としては、以下の5つが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
植物は根から有機物や肥料など土壌の栄養を吸収して成長するので、一度植物を育て終わった土は栄養が不足している状態です。栄養がない古い土で新たに植物を育てると、栄養が足りずに順調に生育させることが難しい可能性があります。
一度植物を育てた土の中には、たくさんのゴミが混ざっています。ゴミの中には育て終わった植物の根に加えて雑草の根や種、枯葉などさまざまなものが想定されます。
植物の生育中はもちろん、植物を育て終わった土も目にみえずとも病気に感染していたり、害虫の卵が眠っていることがあります。病害虫の影響が次の植物に移ってしまわないように土のリサイクルで対処しましょう。
土のリサイクルには、同じ科の植物を何度も続けて栽培すると育ちにくくなる「連作障害」を防ぐ意味合いもあります。上記の1~3とも関係がありますが、連作障害の主な原因としては、土壌中の肥料分の偏り、植物自身が分泌する毒素、特定の病害虫の増加などが考えられます。
植物の栽培に適しているのはフカフカの土です。粘土、砂、腐植などが集まって固まったものを団粒と言いますが、この団粒でできている土には適度な隙間があり(一般的に土の中の隙間の割合が60%程度が適当と言われています)、保水性に富みながら水はけに優れた柔らかいフカフカの土となります。
札埜さん
マメ科以外の植物を栽培した後の古い土は団粒構造が崩れてしまい、土の粒がバラバラな状態(単粒)になります。単粒構造の土は、水はけが悪く硬くなりやすいため、根腐れなどの障害が起きやすくなります。
使い終わった土は、捨てずにリサイクルしてみましょう。手順に沿って解説します。
栽培し終えたプランターは、土をカラカラに乾燥させます。その後、かたくなった土は支柱などでほぐしながら、荒目→中目→細目の順番にふるいにかけて、目に見える害虫や植物の根、枯葉などのゴミを取り除きます。
左から荒目、中目、細目
新しい植物が根を張るときの邪魔になるので、ゴミは念入りに取り除いておきましょう。
ふるい作業(使用した土をふるいにかけている様子)
次に、ふるいにかけた土を消毒します。古い土には害虫や土壌病原菌、ウイルスが潜んでいる可能性があり、新しい植物が病気や食害されないためには殺菌が重要です。ここでは、寒い時期と暖かい時期で殺菌方法を分けてご説明します。
焼土消毒(使用後の土に水をかけバーナーで焼く消毒方法)の様子
ポリ袋に広げた土に熱湯を全体に万遍なくかけて、すぐにポリ袋の口を閉めて手で転がしたり押したりして全体を蒸らします。このとき、やけどをしないよう、十分に注意してください。その後、屋外に置いて霜と寒さにさらします。2~3週間に1度かき混ぜたら、完了です。
太陽光消毒(温室内の土に水をかけビニールで覆っている)の様子
夏は太陽熱で土を高温にして消毒します。黒いビニール袋に広げた土を水で湿らせ、直射日光に当てます。コンクリート上に置くと地熱が上がり効果的です。その後、1週間に1回程度、袋をひっくり返して土に万遍なく光が当たるようにします。土が乾いていれば、必ず湿らせることがポイントです。1ヶ月ほど経てば、完成です。
札埜さん
このように、土の消毒には熱を利用することが一般的です。病害虫の死滅温度と死滅に必要な継続時間は詳しく調べられており、大部分の病害と雑草の種子は60℃以上で40分以上、アザミウマ類やハモグリバエ類は45℃以上で1時間以上、コナジラミ類は40℃以上で5日間以上の熱処理で消毒効果が得られると言われています。
古い土は、団粒構造が崩れていて単粒構造になっているので水はけが悪い状態です。また、上記の熱消毒は病害虫だけではなく土づくりに欠かせない有用な微生物も死滅させてしまいます。そのため、土のリサイクル材(土壌改良剤)か、堆肥や腐葉土などの有機物を混ぜて土のバランスを整えることが重要です。有機物は古い土の半分程度混ぜると良いでしょう。
古い土は、前に育てた植物が栄養をたくさん吸収しているので生長に必要な肥料が不足しています。雨によって栄養分が流れ出てしまっていることも考えられます。そのため、元肥となる緩効性の肥料を混ぜておきましょう。
上記①〜④が済んだら土のリサイクルの作業は完了です。新しい植物を育てはじめましょう。
土のリサイクル材(土壌改良剤)は、土をリサイクルする上で欠かせない資材です。
いろいろな商品がありますが、今回おすすめしたいのは「ふっかふかによみがえる ふるい土のリサイクル材」。この商品は苦土石灰、牛糞堆肥、木炭の3つの配合素材でできていて、古い土が本当にふかふかな状態に。一度使った土に混ぜるだけなので手間がかからない使い勝手の良さも魅力です。
もっと詳しく>>古い土がふっかふかによみがえる! 花ごころの「失敗しない、失敗させない」土づくりとは
新しく育てる植物のために栄養を補給したり、根を張りやすい状態にしたり、土の水はけをよくするために土のリサイクルはぜひ取り入れてほしいテクニックです。
植物を育て終わったを捨てずに再利用することは、環境問題の改善にも寄与するすてきな取り組みですよね。土のリサイクルが済めば、新しく育てる植物もきっと嬉しい気持ちになるはず。さあ、新たな気持ちで家庭菜園やガーデニングをスタートさせて、さらに楽しい園芸ライフをお過ごしください。
札埜さん
育て終わった植物の根や茎の一部が残っていると、そこには病気の元になるカビやさまざまな雑菌が潜んでいることもありますし、そこから新しく植える植物の成長を妨げる物質(アレロパシー)が放出される可能性もありますので、育て終わった植物やゴミは極力取り除いてください。