アスプレニウムは、壁や天井から吊るして飾ったり、フラワーアレンジメントの材料に使ったりと、さまざまな形で楽しめる観葉植物です。
シダ植物の中でも比較的乾燥に強く、耐陰性もあるので置き場所を選ばないインテリアグリーンとして人気があります。品種が多いので、人とは違う個性的な一品を育ててみたい方は、アスプレニウムを選ぶと良いかもしれません。
ここでは、アスプレニウムを育てる環境や、お手入れの方法、気をつける病気や害虫などを紹介します。
アスプレニウムは、熱帯から亜熱帯地域に自生するウラボシ科のシダ植物です。東南アジアを中心に、世界中に約700種が存在し、日本では伊豆諸島や沖縄などで多く見られます。
現地では、岩の上や樹木に着生している着生植物で、茎の中心から葉を放射状に広げる姿が大変ダイナミックな印象を与えます。「オオタニワタリ」という品種をご存知の方も多いかもしれません。
5センチほどの小さなものから、1.5メートルを超える大きな品種までさまざまあり、耐陰性もあるため室内でも問題なく育てられます。
シダ植物なので花が咲くことはなく、ツヤのある美しい緑の葉を楽しむ観賞用の植物です。
アスプレニウムは世界に約700種が自生していて、品種によって大きさや形、葉の色が違います。ここでは人気の3種を紹介しますので、苗を選ぶ際の参考にしてください。
葉全体が大きく波打ち、肉厚で光沢のある姿が特徴の品種です。葉の長さは40〜60センチほどで、日本に自生する「タニワタリ」の園芸品種となります。非常に丈夫で、寒さや日陰にも強く、初めてでも育てやすいアスプレニウムです。
エメラルドウェーブという名前の通り、ウェーブした葉が特徴的な品種です。他の品種よりも葉の色が淡く、太陽の光を当てると美しさがさらに際立ちます。苔玉にして吊るして楽しむこともできるアスプレニウムです。
葉の先端に多くの切れ込みが入った個性的なアスプレニウムです。他の品種よりも耐寒性に優れ、5℃ほどまでなら耐えられます。ライトグリーンの明るい葉が、お部屋の雰囲気を明るくしてくれるでしょう。
アスプレニウムは、苗を購入して育てるのが一般的です。園芸店や大きめのホームセンターで購入でき、とくにネット通販ではさまざまな品種が揃っています。
数百円から数万円まで幅広いラインナップがあるので、お気に入りを探してみてくださいね。
アスプレニウムは季節によって置き場所を変えるため、鉢植えが育てやすいです。軽い鉢と用土を使用して、吊り下げて育てても良いでしょう。
また、着生する性質を生かして、板や流木に着生させて壁に飾るなど、さまざまな方法で楽しめるのもアスプレニウムの魅力です。
アスプレニウムは、直射日光が苦手で葉焼けを起こしやすいです。
屋外では一日を通して明るい日陰に置き、室内ではレースのカーテン越しに置くと良いでしょう。
耐陰性はあるものの、明るさが足りないと間延びしたり、葉が長くのびたりツヤがなくなったりします。本来の鮮やかでツヤのある葉を楽しむには、ある程度の日差しも大切です。
夏場は、ホームセンターや園芸店で購入できる「遮光ネット」を使うと管理しやすいでしょう。50%ほど遮光できるものを選ぶと良いでしょう。
寒さには弱いので冬は必ず室内で管理します。寒さに耐えられる温度は品種によって違いますが、5℃程度のものが一般的です。
室内では10℃以下にならないよう、エアコンや暖房器具で調整してください。エアコンの風が直接当たったり、窓際の冷気が当たらない場所に置きましょう。
アスプレニウムは湿った環境を好みますが、根腐れを起こしやすく、水の与えすぎには注意が必要です。
春から秋の成長期は、土の表面が乾きはじめたら鉢底から流れ出るくらい、たっぷり水やりをします。夏場はとても乾燥しやすいので毎日与えてください。
冬は成長が緩やかになるので水やりの回数を減らしますが、乾燥の具合を確認し、土の表面が乾いてから2〜3日後に水やりをします。乾燥気味に育てた方が寒さに強くなります。
葉水は一年を通して行ってください。近くに霧吹きを置いて、気づいたら葉水するくらい頻繁に行っても大丈夫です。
一般的に、植物の水やりは葉に水がかからないようにしますが、アスプレニウムはシダ植物のため葉にも水を多くかけてあげた方がよく育ちます。
岩瀬さん
とくに株の中心にある成長点は、常に湿った状態にするように水分を保つようになっているので、水分を保つとキレイな新芽を出してくれます。
アスプレニウムの自生地は、保水性・通気性・水はけの良い「腐植質の土」で覆われていて、その環境を再現できれば上手に育てられます。
もっとも手軽なのは、市販の観葉植物の土です。観葉植物の土は、用土がバランス良く配合されていて初めてでも簡単に使用できます。
小粒の赤玉土と腐葉土を6:4の割合でブレンドし、川砂を少量混ぜ混んだ自作の用土でも問題なく育ちます。腐葉土の代わりにココチップを配合するとコバエの予防にもなります。
吊り下げて飾りたい場合は鉢を軽くするために、小粒の赤玉土やピートモス、パーライト、バーミキュライトを5:3:1:1くらいの割合でブレンドすると良いでしょう。ココチップのみで植え込んでも育成が可能です。
春から秋の成長期には、新芽を多く出して旺盛に成長するので、肥料を与えると良いでしょう。
2か月に1回ほど固形の緩効性肥料を与えるか、10日に1回ほど2000倍程に薄めた液体肥料を与えます。冬は成長期ではないため肥料は必要ありません。
なお、コバエの発生を防ぐために、有機肥料ではなく化成肥料を使うのがおすすめです。
アスプレニウムは基本的に剪定は必要ありません。ただ、枯れた葉を放置すると見た目が悪くなるため、根本から切り取るようにしましょう。
枯れた葉は自然と落ちることはありません。自生地の雰囲気を再現するために、あえて枯れ葉を取らないという手法もあります。
アスプレニウムは成長スピードがゆっくりなので、植え替えは2〜3年に1度で大丈夫です。もし鉢底から根が出てきたり、根鉢気味になっているようなら早めに植え替えを行います。5月〜10月が植え替えに適した時期です。
観葉植物の土か、小粒の赤玉土・腐葉土・ココチップ・川砂をブレンドした土を使いましょう。古い根をほぐすときに水につけながら行うと、根を傷めずキレイにほぐせます。
ひと回り大きい鉢に植え替えたら、たっぷりと水やりをしましょう。下葉を2割ほど落とし根を少しほぐしておくとスムーズに根付いてくれます。
アスプレニウムは「株分け」で増やせます。「胞子」で繁殖培養させる方法もありますが、家庭で行うのはかなり難しく、株分けが一般的です。
鉢から株を取り出したら、同じ大きさになるように株を分けます。中央の成長点を分割するイメージで行いましょう。
岩瀬さん
成長点が小さいものは2つに、大きいものは4つに分けられますが、あまり小さく分けないようにしてください。
新しい鉢に植え替えたら水をたっぷり与えます。鉢ごとポリ袋で覆い水分を保ち、明るい日陰で管理しましょう。新芽と新しい根が出るまで約1か月かかります。
アスプレニウムは「炭疽病(たんそびょう)」にかかることがあります。炭疽病はカビを原因とする伝染病で、水分を保つ管理をするため葉に茶色や灰色の斑点があらわれ、最終的には穴があいてしまいます。
高温多湿の時期に発生しやすく、感染力が強いため、発病した葉はすぐに取り除いてください。炭疽病に有効な殺菌剤を使用しても良いでしょう。風通しと日当たりの良い環境に置くことでも予防できますが、直射日光には注意をしてください。
アスプレニウムを外で管理していると「ナメクジ」がつくことがあります。ナメクジは新芽を食べて葉に穴をあけてしまう害虫で、見つけ次第取り除くか、ナメクジ専用の殺虫剤で退治します。
4月〜6月と9月〜10月の湿気が多い時期に発生しやすいため、とくに注意深く観察しましょう。また、ナメクジには寄生虫がいる可能性があるので、取り除くときは必ず割りばしを使ってください。
アスプレニウムは、亜熱帯地方を中心に自生するシダ植物です。比較的乾燥に強いため、鉢植え以外にも、吊るしたり着生させたりしても楽しめます。
暗すぎなければ室内でも十分育てられるので、お部屋にインテリアグリーンを取り入れたい方にもおすすめの植物です。
さまざまな品種の中から、あなたに合ったお気に入りを見つけてくださいね。
岩瀬さん
特に薄い緑のタイプは葉焼けを起こしやすいです。