ゴキブリ対策にハーブは効果があるの?

知らない人はいない、おそらく日本で一番有名で身近な虫、ゴキブリ。殺虫剤もあるけれど、赤ちゃんやペットなどの影響を考えて、天然素材でゴキブリ対策したいニーズが増えています。

アロマティカスとクローブ

ネット検索をすると、多肉植物としても人気があるハーブのアロマティカスや、スパイスとして知られるクローブが、ゴキブリの忌避に効果がある模様。もしも、生ゴミの前にアロマティカスを置いたり、窓際にクローブを置いたりしておくことでゴキブリ避けになるのだとしたらうれしいですよね。

でも実際のところ、どれほど効果があるのでしょうか……?

磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員で「ゴキブリスト」としても知られる、ゴキブリの専門家の柳澤静磨さんに、ズバリ真相を伺ってみました。

磐田市竜洋昆虫自然観察公園職員でゴキブリストとして知られる柳澤静磨さん

「ゴキブリ対策に、アロマティカスやクローブを置くことは、効果がありますか?」

柳澤静磨さん

柳澤さん

方法によりますね。

慎重な姿勢で答える専門家の真意を探るためには、まずはゴキブリの生態から知る必要があるようです。

日本に住むゴキブリの特徴とは?

一口にゴキブリと言っても様々な種類があるそうなので、日本にはどんなゴキブリが生息しているのか聞いてみました。

柳澤さんによると、ゴキブリは世界に4600種以上、日本には64種いるなかで、家に出没するゴキブリは主に以下の3種類があげられます。

日本で見られる三大ゴキブリ

クロゴキブリは、日本のゴキブリの代表的存在です。成虫の体長は25〜33ミリ。寒い時期に休眠することができます。

チャバネゴキブリは、成虫の体長が10〜12ミリ。クロゴキブリの半分に満たないの大きさで、全体的に明るい茶色をしています。寒さに弱いため、レストランや地下街など、年中暖かい場所で見られるのが特徴です。

ワモンゴキブリは、チャバネゴキブリと同じく暖かい場所を好むゴキブリ。成虫の体長は約30〜40ミリと大きく、胸に輪のような模様があることから「輪紋」と呼ばれています。

3種のゴキブリは、どこの国からやってきたのかハッキリ言い切れないほど、日本では古くから住んでいる虫なのだそうです。

柳澤静麿さん

柳澤さん

江戸中期に発刊された百科事典「和漢三才図会」の虫の巻には、チャバネゴキブリらしい姿が収められていて、「人家の壁の間」「釜戸の下」などで見られると記されているんですよ。

文献を調べるゴキブリストの柳澤静麿さん

これら3種のゴキブリは、場所によって違いはありますがどの種も屋内に出没する可能性があります。ゴキブリに分類される昆虫は他にもいますが、乾燥に弱かったり、壁を登れなかったりと、家屋内での移動には適さなかったようです。

1カ所に1種類しかいないわけではなく、例えばクロゴキブリとチャバネゴキブリは一緒に見つかる場合もあります。対策の上ではどんなゴキブリが生息しているのか知ることも重要です。

なぜゴキブリにハーブが効くといわれるのか

しかし、なぜゴキブリにアロマティカスやクローブが効くという情報が広がっているのでしょうか。

柳澤静麿さん

柳澤さん

アロマティカスやクローブに含まれている成分は、ゴキブリが嫌がるという実験結果はあるんです。しかし、実験はどれも濃度の高い精油で行われているので、植物そのものでは、効果はあまり期待できないと思います。

実際、アロマティカスにはチモール、クローブにはオイゲノールと呼ばれる、ゴキブリの忌避に有効な成分が含まれています。ただ、アロマティカスをちぎって撒いたり、クローブを生ゴミのそばに置いたりするだけでは、ゴキブリ除けの効果は薄いという見解でした。

また、ゴキブリに対して密室で精油を使った実験は複数あり、精油であれば、それなりの効果が認められた例も報告されています。オイゲノールもチモールもゴキブリにとっては毒物で、単に匂いを嫌うだけではなく、ゴキブリに塗ると死んでしまったという研究結果もあります。

ゴキブリの好む場所まとめ

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリが潜伏しそうな場所に、オイゲノールやチモールを含む精油を水で希釈してスプレーで噴射することは、一定の効果が期待できると思います。

ちなみに、ゴキブリが生きている植物の葉を食べる可能性は低いため、アロマティカスやハーブを育てている環境が逆にゴキブリを引き寄せてしまう原因になるわけではないとのことです。

ゴキブリの巣になるかも。ダンボールにも要注意

天然成分でゴキブリ対策をするなら、精油スプレーが効果があるかもしれないと分かったところで、できるだけ遭遇の機会を減らしたいのが私たちの願い。ゴキブリの特徴を知ることで、出会わないようにできないのでしょうか?

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリは棲みついていなくても、うっかり入ってきてしまうことがあります。100%会わないようにする方法はありませんね。

残念ですが、ゴキブリとはいつか出会ってしまう運命のようです。でも、ゴキブリが好む環境をなるべく作らなければ、その可能性を下げることはできるはず。ゴキブリが、住処にしやすい場所を聞いてみました。

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリは、暗くてジメジメしたところを好むのですが、段ボールは適度に湿気を保てるので、ゴキブリにとっては都合がいいですね。特に、段ボール板の波型の隙間が、幼虫にピッタリなんですよ。

ゴキブリの最高の隠れ場所になる段ボール

なにかと便利な段ボールですが、ゴキブリ対策の面では、保管しない方がよいでしょう。また、タンスの裏などの隙間も、巣になりやすいとのこと。巣とはいっても環境が良いから集まっているだけで、1カ所に集まっているとも限りません。

ただ、好ましくない環境であれば、その場を去る場合もあるので、段ボール置き場やタンスと壁の隙間など、定期的にオイゲノールを含む精油スプレーを吹きかけておくとよいそうです。

毒餌は効果ある? ゴキブリの知られざる生態

十分に対策をしたとしても、ゴキブリとの遭遇を避けられない。遂にそのときが来てしまった瞬間、柳澤さんはどうしているでしょう。

柳澤静麿さん

柳澤さん

カップで捕獲します。

自宅でたくさん虫を飼育している柳澤さんは、殺虫剤を使うことはなく、昆虫の飼育ケースとしても使われるカップを上から被せて捕まえています。潰してしまうより安全で、逃すリスクも低いのだとか。

ゴキブリ捕獲用の透明なカップ

柳澤さんが捕獲に使っているカップは、直径10センチほどのもの。なければペットボトルの頭を切ったり、糊の入れ物を使っても良いとのこと。ゴキブリを捕まえるのは難しそうですが、何かコツはあるのでしょうか。

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリのお尻の部分にある、尾肢(びし)が、空気の振動を察知するので、振動を感知されないようにするのが大切です。カップを5〜6センチくらい上までゆっくり近づけて、真上から一気に下ろします。

上からカップをかぶせたら、横から紙などフタになるものを差し込んで出口を塞ぎ、ひっくり返せば捕獲完了。でも、ゴキブリって急に飛んだり、素早く走ったり、予測のつかない動きが怖いですよね。

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリは危険を感じていない通常時はゆっくり動いています。一方、自身に危険が迫ったときは、素早く動くことができます。ゴキブリも命がかかっているので、必死に走っているんです。

人間に遭遇することは、ゴキブリにとっても非常事態。触角を動かしていたり、体を持ち上げていたりするときは、移動先を探しているサインなので、様子を見るのが得策なのだとか。柳澤さんでも、どちらに飛ぶか、どの方向に走り出すかは、予想できないといいます。

ゴキブリと毒餌のイラスト

ゴキブリの生態といえば、防除方法の1つである毒餌タイプはゴキブリが共食いする習性を利用していると聞いたことがあります。しかし、ゴキブリの“生の葉っぱは食べない習性”があるなら、同じく生きている仲間も共食いしないのではないでしょうか?

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリは、死んだもしくは弱った個体に限っては、共食いします。元気な仲間を食べることはほとんどありません。

毒餌タイプは餌を食べて弱ったか、死んだゴキブリを食べたゴキブリにまで効果を発揮する仕組み。ゴキブリの好みそうな場所に設置しておくと、一定の効き目が見込めそうです。

ゴキブリ対策におすすめの方法まとめ

今からできるゴキブリ対策

ゴキブリ対策には毒餌や設置型のアイテムもありますが、遭遇したくない場合には、家具の隙間や湿気がこもる場所に、ゴキブリが嫌う成分を含む精油スプレーをまくと効果的な可能性があると分かりました。

柳澤さんの話を聞いていると、誰もが知っている虫なのに、知らないことがたくさんあることに気づきました。ゴキブリって、そもそもどんな虫なのでしょうか?

柳澤静麿さん

柳澤さん

ゴキブリは、自然界では落ち葉などを食べる「分解者」です。食べられる側の生き物なので、天敵を上げたらキリがありません。生きたまま、アリに襲われることもあるんですよ。

ここも、文字が続くので、画像を入れてみました。

ゴキブリは家の中では脅威でも、自然界の食物連鎖に不可欠な存在。なんだか見え方が変わってしまいそうですが、そういえばカップで捕獲した後、柳澤さんは、どうしているのでしょうか?

柳澤静麿さん

柳澤さん

冷凍して、標本にします。

急にハードルが上がりました。さすがにわたしたちは真似できそうにないので、あとは個々人の行いやすい方法で対処するのがよさそうです。それにしてもなぜ、わたしたちはゴキブリを恐れているのでしょうか?

柳澤静麿さん

柳澤さん

人間の目線からゴキブリを見ると、ゴキブリの目が見えないので、それが怖さにつながっているのかもせんね。ただ、横から見れば目が見えますし、観察していると、触角を丁寧に舐めて体の手入れをする、生き物らしい姿を見ることもできますよ。

最も身近だけど、できれば会いたくない昆虫、ゴキブリ。どんなに人間が嫌おうが、アロマティカスやクローブと同じように、ゴキブリも自然界の一員です。ほどよい距離を保って生きていけたらいいですね。

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