突然ですが、枕の本体を洗ったことはありますか?
枕カバーの洗濯に比べると、枕本体を洗濯したことがある方は、そう多くはないかもしれません。
実は、枕の素材によっては、洗濯機で丸洗いが可能なのです。
ただし、正しい洗い方や干し方をしないと、失敗してしまうことがあるので注意が必要です。
洗濯の専門家、神崎健輔さんの監修のもと、枕の正しい洗濯方法について詳しく解説します。
神崎健輔
クリーニング師の国家資格も持つ染み抜き職人。「洗濯ハカセ」として雑誌やFacebook・twitter・instagram等のSNSなどで家庭向けの洗濯のアドバイスを行い、勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。
枕を洗濯したいときは、まず洗濯表示を確認しましょう。洗える枕には「洗濯桶マーク」または「タンブル乾燥マーク」が表記されています。
洗濯桶マークに書かれている数字は、洗濯に適した水温です。下線がない場合は通常モードで洗濯できますが、線が入っている場合は手洗いのみを表しています。
一方でタンブル乾燥とは、自宅の乾燥機能やコインランドリーの乾燥機を使用できるマークのことです。丸の中に書かれている点の数によって、上限温度が変わります。このマークがある枕は、乾燥機の使用も可能です。
主にポリエステルの綿・パイプ・ビーズが洗濯できる素材です。ポリエステルの綿は人工繊維でできており、枕の素材として多く使われています。一方パイプはストロー状の筒を細かく切ったもので、繰り返し洗っても劣化しにくい点がメリットです。
ビーズは、耐久性のあるマルコビーズであれば洗濯できます。ほかにも、ミニボールやダウンなども洗濯可能ですが、一部洗えない素材もあるため必ず洗濯表示をしましょう。
低反発枕に使用されるウレタンやそばがらは洗濯できない素材です。ウレタンは洗濯すると反発力が低下し、本来の機能を発揮できなくなります。
そばがらは乾きにくく、カビが発生しやすい素材です。生乾き状態が続くと、素材自体が腐敗してしまう可能性もあります。
ほかにも、羽毛やスノー低反発などは注意が必要です。
人は睡眠時にたくさんの汗をかくほか、皮脂やフケなどの汚れが出るため、枕には汚れが溜まります。汚れた状態のまま放置するのは、ダニの繁殖やカビが発生する原因です。
汚れや雑菌はカバーだけでなく、枕本体にも染み込んでいきます。次第にイヤな臭いを発するほか、肌や髪のトラブルにつながることも少なくありません。
神崎さん
実は、ダニ対策のための洗濯は効果がほとんどありません。ダニも生き物なので、洗濯中は繊維にしがみついて7割以上のダニが生き残ります。ダニを対策したい場合は、まずは乾燥機で乾燥させてから汚れを落とすために洗うといった方法がベターです
枕は定期的に干すだけでなく、半年に1回を目安に洗濯をしましょう。あまり頻繁に洗濯してしまうと、中の素材が傷んでしまいます。
枕カバーは週に1〜2回洗濯し、枕本体は消臭スプレーなどを使って毎日お手入れするのがおすすめです。枕は乾きにくいため、洗濯はカラッとした天気のよい日に行いましょう。
洗濯機に水を張ったら、洗剤を入れてよく溶かします。粉末の洗剤は溶け残りやすいため、液体タイプを使うのがベターです。枕を長持ちさせたいなら、おしゃれ着用洗剤をチョイスしましょう。
汚れが気になるときや、漂白剤を使用したいときは、酸素系漂白剤がおすすめです。デリケートな素材の枕でも、ダメージを最小限におさえて洗濯できます。
神崎さん
枕は変色していることが多いです。カバーをしてしまうので見た目を気にする必要は無いかもしれませんが、気になる場合は酸素系漂白剤を使ってつけ置きし、対応しましょう
枕のカバーを外し、洗濯ネットに入れてから洗濯機に投入しましょう。洗濯ネットのサイズは大きすぎず、枕に合ったものを使用してください。
万が一中身が飛び出したときや、ほつれなどの劣化を防ぐためにも、ファスナーはしっかり閉めましょう。洗濯ネットがなくても洗えますが、型崩れや劣化の原因につながるので使用するのがおすすめです。
「ドライコース」や「手洗いコース」ばど、水流が弱いコースで洗濯しましょう。枕は強い力で洗ってしまうと傷んだり、中身が飛び出したりしてしまいます。
汚れがなかなか取れないときは、洗濯前に予洗いをしておきましょう。中性洗剤を汚れに直接つけ、手で軽くたたいて染み込ませます。その後、水で洗い流してから洗濯することで汚れが落ちやすくなりますよ。
脱水後は枕の形を均一に整えてください。中身が片寄ったまま干すと、枕の変形や生乾きの原因につながります。
特にポリエステルの綿は脱水で片寄りやすいため、手でほぐしてから干しましょう。
洗濯機に入らない枕や型崩れしやすいものは、手洗いがおすすめです。桶やボウルのほか、洗面所や浴槽など枕がしっかり入るサイズを確保しましょう。
ぬるま湯または水をため、中性洗剤を溶かします。洗剤が枕につくとシミになるので、溶け残りがないようしっかり溶かしましょう。
枕全体を水に浸したら、やさしく揉み洗いをします。強い力で揉んでしまうと枕を傷めてしまうため、ゆっくりやさしく洗うことを意識してください。
汚れている部分はつまみ洗いをし、洗い終わったら洗剤の泡が出なくなるまですすぎます。何度も水を入れ替えながら、しっかりすすぎましょう。
手洗いの場合、脱水も手でやさしく行います。両手で押し出すように水を切り、バスタオルやバスマットを使って残った水分を拭き取りましょう。何度も水気を切ることが、手早く乾かすコツです。
最後にたたいて形を整えたら、しっかり乾かします。
コインランドリーで枕を洗うのもひとつです。洗濯はもちろん、乾燥機を使用することで早く乾かせられる点が大きな魅力。時短になるほか、ダニや雑菌にも効果があります。
ただし、コインランドリーによってはまれに枕の洗濯を禁止している場合があります。枕の素材によっても異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
ポリエステルの綿・パイプ・そばがら・マルコビーズ・小豆などの素材は、天日干しが適しています。一方、低反発ウレタン・羽毛・ビーズは陰干しがベターです。
素材によっては、紫外線による染料の分解・変色が起きることがあります。特にウレタンは紫外線に弱く、天日干しには向いていません。
枕を天日干しをするなら、夏は2時間、冬は3時間ほどを目安にしましょう。陰干しの場合は、風通しのよい場所で3〜6時間ほど干すのがベストです。どちらも完全に乾くまで時間がかかるため、1〜3日かけてしっかり乾かしてください。
もし、洗濯できない枕を洗ってしまったら、早急に適切な対処が必要です。枕全体をバスタオルなどで包み、やさしく押して中の水分を取り除きましょう。
その後は、風通しのよい場所で1週間ほど陰干しをします。ウレタン素材の場合、濡れると破れる可能性があるので、取り扱いには十分注意してください。
カビや雑菌の発生を抑えるために、定期的に干して湿気を取り除きましょう。天日干しなら週に1回、陰干しなら可能な限り毎日行うのがベターです。
室内で干す場合は、扇風機やサーキュレーターの風を当てて、通気性を高めましょう。
布団に使用する「布団クリーナー」も枕のお手入れには有効です。こまめに使用することで、ダニやハウスダストの発生を抑制できます。干した後に布団クリーナーを使用するのもより効果的です。
UVランプ機能がついたものであれば、汚れだけでなく殺菌効果も期待できます。天日干しができない素材の枕はもちろん、梅雨の時期や外に干せないときにもうってつけです。
神崎さん
布団クリーナーも一時的な対処法と言えます。ほこりなどは取り除けても、染み込んだ汗や皮脂などは残留しますので、清潔に保つためには定期的な洗濯をおすすめします
神崎さん
枕は洗えても、困るのは意外と『乾燥』させるときではないでしょうか? そんなときに役立つのが、まくら乾燥用の宙吊りを行うアイテムです。枕だけではなく、ぬいぐるみなど、さまざまな物を宙吊りにして乾燥させることができるので、1つあると便利です
神崎さん
枕を洗う際は、ビーズなどの詰め物が飛び出てもいいように、細かい目の洗濯ネットを使用して洗いましょう。生地の劣化や縫い目のほころびによって中身が飛び出て洗濯機の中が悲惨なことになる場合があります。また、水気を絞りづらいこともあるので、脱水は長めに2回かけると良いです