りんごは、甘くてみずみずしい果実が特徴の人気のある果樹です。農園での栽培が一般的ですが、実は家庭でも育てられますよ。栽培ポイントを押さえて、自宅でおいしいりんごを楽しみましょう。
この記事では、りんごの育て方を紹介します。栽培におすすめの品種や、剪定、受粉のやり方についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
今回は、グリーンギャラリーガーデンズ店長の堀田裕大さん監修のもと、りんごの育て方について詳しく解説していきます。
堀田裕大
1300坪の敷地に花苗、植木、観葉植物をはじめ、植木鉢や雑貨を世界中から取り揃えているガーデニングショップ「GreenGalleryGardens」の店長。2017年日比谷公園ガーデニング賞コンテナガーデンコンテスト農林水産大臣賞を受賞した。
りんごは、バラ科リンゴ属に属する果樹です。原産地はアジア西部。品種の数は1万5000種以上と言われており、世界中で親しまれています。涼しい気候を好む傾向がありますが、品種を選べば温暖な地域でも栽培できます。
りんごは4〜5月ごろになると白い花が咲きます。収穫時期は品種によって異なりますが、一般的には8〜11月ごろです。りんごの果実は栄養価が高く、生で食べてもおいしいですし、ジュースやジャム、お酒やスイーツなどにも幅広く利用されています。
日本を含め、世界各地で栽培されています。晩生種のりんごで、収穫時期は11月上旬〜12月下旬ごろです。甘みと酸味のバランスがよく、みずみずしい食感が特徴です。
早生の代表的な品種です。収穫時期は8月下旬〜9月中旬ごろ。果汁が多く、酸味が少ない甘口の果実が特徴です。
早生種のりんごです。収穫時期は8月中旬〜9月上旬ごろ。やや酸味が強く、ジューシーで口当たりがよい果実が特徴です。
果実の大きさが5cmほどのミニりんごです。1本でも実をつけるため、家庭栽培におすすめの品種です。収穫時期は10月中旬〜下旬にかけて。果実は小さいですが、甘みと酸味のバランスがよい実を楽しめます。
りんごは苗から育てはじめましょう。ベランダなど、限られたスペースで栽培するときは矮性台木(わいせいだいぎ)に接木された苗がおすすめです。樹高がおさえられ、日々のお世話や管理がしやすくなりますよ。植え付け適期は、厳冬期を除いた11〜3月ごろです。
りんごは鉢植え・地植えの両方で栽培できます。鉢植えの場合は、深さ30cm以上のプランターを用意しましょう。1つの鉢に植えられるのは1本の苗木までです。
地植えの場合は直径50cm、深さ50cmの穴を掘って植えましょう。深植えは避け、接ぎ木の部分が埋まらないように注意します。最後に、支柱を立ててしっかりと固定してください。
りんごは日光を好む果樹です。日当たりがよく、風通しもよい場所に植えましょう。生育適温は6〜14℃です。寒さに強い特徴を持ち、-25℃まで栽培可能です。暑さにはそれほど強くありません。西日の長く当たる場所は焼けてしまうので避けるようにしましょう。適切にお手入れすれば暖地でも十分育てられますよ。
りんごの水やりは、基本的には土が乾いた時に行います。鉢植えの場合は、鉢底から流れ出るくらいたっぷり水を与えてください。
地植えの場合は雨水を利用できるため、水やりはほとんど必要ありません。ただし夏場など晴天が続く場合には、必要に応じて適宜水を与えます。とくに花が咲いてから収穫までの期間は、乾燥が続かないように気を付けましょう。
りんご栽培には、水はけと水もちのバランスがよい土が適しています。市販の果樹用培養土を使うのが手軽でおすすめです。自分で調合する場合は、赤玉土(小粒)と腐葉土を8:2の割合で混ぜて作ります。
りんごの栽培では、年に2回肥料を与えます。最初は植え付けの時です。地植えも鉢植えも、11〜2月ごろに緩効性化成肥料を施しましょう。追肥は、果実がみのる9月ごろに行います。化成肥料や有機質肥料を与えてください。家庭で出る生ゴミを利用するのもおすすめです。
りんごの剪定は夏と冬に行います。夏剪定は、7〜8月ごろに切り戻し剪定を行いましょう。不要な枝を切り詰めながら樹形を整えていきます。樹形は「側枝水平仕立て」がおすすめです。
冬剪定は1〜2月ごろに行います。冬は花芽が判別しにくいため、最低限の枝のみを切り取りましょう。枯れた枝や成長を妨げる枝など、明らかに不要なものだけを取り除きます。
おいしいりんごの果実を収穫するために、捻枝(ねんし)を行いましょう。捻枝とは、新しく伸びた枝をひねって下向きに曲げることです。枝の成長を抑制し、果実や花芽に優先的に栄養を送れるようになります。捻枝の適期は5月上旬です。
堀田さん
リンゴはバラ科なので、『頂芽優勢』といって、高い位置にある芽に優先的に栄養が送られる性質があります。冬場に枝をなるべく平行にすることで、均等に栄養が送られるように仕立てます。ヨーロッパでよく見かける立体的なかたちのエスパリエ(Espalier)仕立ては、見た目もオシャレなのでチョレンジしてみるのも良いかと思います
基本的に、りんごは単体では実をつけません。果実を収穫するには、人工授粉を行うか、別品種のりんごの木を植えて自然受粉させる必要があります。なので購入の際は2品種以上の購入をおすすめします。確実に結実させるには人工受粉がおすすめです。
自然受粉させる場合は、別品種のりんごの木を近くに植え、風やハチによる受粉を待ちます。人工授粉を行う場合は、りんごの花を摘み、異なる品種の花にこすりつけて受粉させましょう。受粉は、りんごの花が咲いてから10日以内に行うのが理想的です。
受粉をする際は品種の組み合わせに注意が必要です。品種同士の相性が悪く結実しない組み合わせもありますので、育てる前によく確認しましょう。受粉が心配な場合は、ミニりんごの「アルプス乙女」など、単体でも結実する品種を選ぶのもひとつの手です。
りんごの果実がみのったら、摘果を行いましょう。良質なりんごを収穫するためには、つきすぎた果実を適切に間引く必要があります。
摘果は2回行います。1回目の摘果は開花後30日頃です。中心の最も大きい果実を残し、それ以外を取り除きましょう。2回目の摘果は開花後60日頃です。小さな果実や傷ついた果実、形の悪い果実や病害虫の被害を受けた果実などを取り除きます。
摘果が終わった後は、残した果実に袋かけを行います。これにより、シンクイムシなどの害虫や黒斑病などの病気から果実を守れます。袋かけは、摘果直後の晴れた日に行いましょう。袋かけ用の袋は市販のものが一般的ですが、新聞紙などでも代用可能です。
収穫の1カ月前になったら、りんごにかけた袋を外しましょう。果実に光を当てることで、美しい色合いが出て甘みも増します。
鉢植えで育てているりんごは、定期的な植え替え作業が必要です。根詰まりを防ぐためにも、2〜3年に1回の頻度で大きめのプランターに植え替えましょう。適期は11〜3月です。
りんごの収穫時期は、品種によっても異なりますがだいたい9〜10月ごろです。実が十分に色づいたものから、ハサミを使って収穫します。りんごは完熟しなくても食べられるので、早めに収穫して食べ始めても大丈夫です。
りんごが罹りやすい病気には、黒斑病、斑点落葉病、炭疽病、黒星病などがあります。これらの病気は葉や果実を傷め、放っておくと被害が広がり続けます。りんごに異変を見つけたら、すぐに薬剤などで対処しましょう。そして病気に侵された部分は取り除きます。
りんごに発生しやすい害虫には、シンクイムシ、アブラムシ、リンゴハダニ、キンモンホソガなどがいます。これらの害虫は葉や果実を食い荒らすため、予防が非常に重要です。あらかじめ薬剤を散布して害虫を寄せ付けないようにしましょう。
堀田さん
有機分たっぷりで、実を成らすための栄養が入った肥料なのでおすすめです。元肥や追肥にも使用しやすいです
ぜひこの記事を参考にして、りんごの栽培に挑戦してみてくださいね。
堀田さん
矮性台木に接木されているりんごは、木は小さくても身の大きさ、味は変わりません。通常に比べ収穫ができるまでに木の生育年数も2年ほど早くなり、樹高も2.5メートルほどのものもあるので非常に扱いやすく、家庭果樹としても気軽に楽しめます