柑橘類のなかでもとくに有名なみかん。主にあたたかい地域で栽培されており、甘くて酸味のある果肉が特徴です。農園で育てられているイメージが強いかもしれませんが、実は家庭でも栽培可能です。
この記事では、みかんの木の育て方について詳しく解説します。家庭での栽培のコツや、摘果や剪定についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。みかんの木を育てて、自家製のみかんを楽しみましょう。
今回は、グリーンギャラリーガーデンズ店長の堀田裕大さん監修のもと、みかんの木の育て方について詳しく解説していきます。
堀田裕大
1300坪の敷地に花苗、植木、観葉植物をはじめ、植木鉢や雑貨を世界中から取り揃えているガーデニングショップ「GreenGalleryGardens」の店長。2017年日比谷公園ガーデニング賞コンテナガーデンコンテスト農林水産大臣賞を受賞した。
みかんの木はミカン科ミカン属に属する常緑樹です。一般的に「みかん」と言えば、ウンシュウミカンを指します。原産地は日本や中国。樹高は1〜4mほどで、春に白い小さな花を咲かせます。果実は秋に実り、最初は緑色をしていますが、徐々にオレンジ色に熟していきます。
みかんの実は栄養価が高く、ビタミンCやプロビタミンA、βクリプトキサンチン、食物繊維などが豊富に含まれています。甘酸っぱい果肉が特徴で、そのまま食べてもおいしいですし、ジュースやジャムなどに加工しても楽しめる人気の果物です。
早生みかんの代表的な品種です。比較的育てやすく、たくさんの実を収穫できます。収穫は10〜12月ごろ。甘みと酸味のバランスがよい実がとれますよ。
極早生みかんの一種です。比較的寒さに強く、丈夫で育てやすい品種として知られています。収穫は9月頃。早生みかんの中では甘みの強い実がとれます。
みかんの木は苗木から育てます。健康で根がしっかりはっているものを選びましょう。ホームセンターや園芸店で入手できます。植えつけ適期は3〜4月頃です。植えつける前に、根の部分を水につけて十分吸水させておきましょう。
みかんの木は、鉢植えでも地植えでも栽培可能です。鉢植えの場合は、深さと広さがある大きな鉢に植えてください。バランスが心配な場合は、支柱を立ててヒモで縛って固定します。
地植えの場合は、十分な深さの穴を掘って植えます。直径50cm、深さ50cmほどの穴が適しています。ただし接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分まで埋めてしまわないように注意してください。
みかんの木は、よく日が当たる風通しの良い場所で育ちます。栽培適温は15〜18℃ほど。気温-5℃以下では育ちませんので注意しましょう。
みかんは、常緑性で暖かい地方が原産なので、強い寒さに当たってしまうと幹から生えた枝の先端が傷んでしまい、開花しない、もしくは実付きが悪くなってしまうことがあります。防寒対策として、鉢植えの場合は鉢の土を凍らさないように保護する必要があります。鉢を二重にしたり、藁を巻きつける『こも巻き』などをすると良いでしょう。枝を縄でまとめ、葉を霜から守る方法もおすすめですので、寒さの強い日は試してみて下さい。
みかんの木は、成長に応じて水やりの方法が異なります。苗木を植えつけてすぐは、地植え・鉢植えともに毎日たっぷり水を与えましょう。
苗木が根付いて生長したら、地植えの場合は自然の雨だけで十分です。ただし、夏場に乾燥が続くようなら適宜水を与えてください。
鉢植えの場合は乾燥しやすいため、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。秋から冬にかけては、水やりの頻度を減らして乾燥気味に育てると、実が甘くなるためおすすめです。
みかんの木は、水はけと水もちのバランスがよい土を好みます。市販の果樹用培養土を使うのが手軽でおすすめです。自分で調合する場合は、赤玉土(小粒)と腐葉土を7:3の割合で混ぜて土づくりをします。
みかんの木は、生長にあわせて定期的に肥料を与えていきます。与える肥料は、市販の果樹用肥料がおすすめです。かんきつ類専用の肥料を使うと手軽で安心ですよ。
まずは植えつけ前の3月ごろに、緩効性肥料を元肥として与えましょう。次は6月ごろ、果実を生長させるために追肥します。最後は9〜10月ごろ、木を回復させて来年もたくさんの実を収穫するために施肥しましょう。
みかんの木の剪定は2月下旬〜3月ごろが適しています。4月下旬には新芽が出てくるので、その前に行いましょう。みかんの木の剪定は、苗木を植えてから経過した年数によって異なりますので、成長に合わせて適切に整えてください。
苗木を植えた年は、切り戻し剪定を行います。植えつけてすぐ、地面から40cmほどの高さに切りましょう。細い枝は間引き、太い枝も切り詰めます。この剪定により樹高が低くなり、収穫しやすい木になります。
2年目に入ったら、育ちのいい枝以外を剪定していきます。太い枝を3〜4本残し、残りの細い枝は根元から切り取りましょう。残した太い枝も、先端から1/3ほどのところで剪定します。切るときは、外芽(枝の横や下から出ている芽)の先で切りましょう。
3年目は、2年目の剪定から伸びた枝を剪定していきます。残すのは地面に平行に伸びている枝です。上に向かって伸びている枝は切り取りましょう。
4年目以降になると樹形はほぼ完成するため、不要な枝を適宜間引き剪定していきます。枯れている枝や、病気や害虫に侵された枝は優先的に切り落としましょう。細い枝や上方に伸びた枝、下方に垂れた枝も不要なので剪定します。
みかんの花芽は春に伸びる枝につきます。夏や秋に伸びた枝は実がつきにくいため、枝の付け根から切りましょう。すでに実をつけた枝も次の年は実をつけないので、1/3ほどまで短く切ります。
みかんの木を育てるときは、実った果実を間引く「摘果」を行います。摘果をして育てる実の数を制限することで、残った実に栄養が行きわたります。摘果をしないと翌年の収穫量が減ってしまうため、摘果は必ず行いましょう。
摘果は7月と8月にそれぞれ1回ずつ行います。未熟な実を手やハサミで摘み取ってください。残す果実の目安は、鉢植えの場合は枝に1〜2個、地植えの場合は葉っぱ20〜30枚につき1個です。
摘果の時は、色や形が悪い果実から取り除きます。他の果実よりも小さいもの、傷ついているものも摘み取ってください。摘果したみかんも食べられますので、ジュースやジャムにしておいしくいただきましょう。
みかんの木を鉢植えで栽培している場合、根詰まりを防ぐために定期的な植え替えが必要です。1〜2年に1回のペースで植え替えを行いましょう。適期は3〜4月です。みかんの木は大きく成長するため、ある程度まで育ったら地植えに切り替えるのもおすすめです。
みかんの木は、「挿し木」や「接ぎ木」で増やします。挿し木は、若い枝を切り取り、下部の葉を取り除いてから土に挿して根付かせます。
接ぎ木は、他の木にみかんの枝をつなげて増やす方法です。からたちの木の幹に切れ込みを入れ、その切り口にみかんの木の若木を接ぎ合わせます。その後、成長を促しながらみかんが育つのを待ちます。
みかんは植えてから5年ほどで収穫できるようになります。品種によって異なりますが、一般的には10〜12月頃が収穫期です。オレンジに色づいた実から摘み取っていきましょう。
お正月過ぎまで実をつけたままにしておくと、翌年花付きが悪くなり収穫量が減ってしまいます。みかんは1月〜2月に盛んに分化するので、なるべく早めに収穫しましょう。
みかんの木を育てるときに気を付けたい病気は、そうか病、かいよう病、黒点病などです。病気になると、葉や果実に異変が発生することが多いため、みかんをよく観察しましょう。そしてもし病気を見つけたらすぐに薬剤などで対策します。
みかんの木につきやすい害虫はミカンハモグリガやカイガラムシ、アブラムシなどです。とくにカイガラムシやアブラムシは大量発生の危険があるため、見つけたらすぐに徹底的に駆除しましょう。
柑橘類専用の肥料です。元肥、追肥はこれだけで十分でしょう。