農家で起こる、一輪車がフラフラして転倒する問題

突然ですが、皆さんが「一輪車」と聞いて思い浮かべるのは、どんな製品でしょうか?

遊ぶ方の一輪車のイメージ

おそらく大多数の方が“遊ぶやつ”を思い浮かべるんじゃないかと思いますが、今回のテーマは“運ぶやつ”。

運ぶ方の一輪車

そう、農業や土木作業のときに使われる、通称“ネコ”と呼ばれる運搬用の一輪車です。

この運搬用一輪車、実際に触れたことのある人は少ないかと思いますが、パッと見た感じで使いやすそうに見えますでしょうか?

お察しのとおり、重いものを載せると途端に操作が難しくなり、その道のプロと言える農家の方や土木作業員の方でも慣れるまでに時間がかかります。ましてや高齢の方になると、筋力や体力も落ちているので、スイスイ動かすのは至難の業。使い勝手がよいとは決して言えませんでした。

そしてある日、そんな運搬用一輪車について考えさせられる事件が……。

この記事では、カインズの新商品“フラフラしづらい一輪車”の魅力と、その開発ストーリーをお届けします。

『コンテナを載せやすい浅型一輪車』開発のきっかけ

自己紹介が遅れましたが、私、カインズの小澤浩次と申します。新卒でカインズに入社し、店長などの経験を経て、本部で13年ほど商品開発業務に勤しんでいます。

私、自宅が埼玉県内にありまして、近所に畑や田んぼも多く残っています。昨年の春頃、自宅近くの畑の前を散歩していると、高齢のおばあちゃんがフラフラしながら運搬用一輪車を押していました。

よく見ると、フラフラの原因は運搬用一輪車の上に積んでいるコンテナ。荷台部分より大きいコンテナを、傾いた状態で積み重ねているので、コンテナがずっと不安定だったんです。

コンテナが傾いて不安定な状態

こういう状態

そのときは転倒することもなく、無事に農作業を済ませていらっしゃいましたが、このおばあちゃんにとってはこの先もずっと続いてしまうお悩み。ましてや、高齢化の一途をたどる現代においては捨て置けない話です。

「もっとコンテナが安定する運搬用一輪車はないんだろうか?」

私のような商品開発も手がけるバイヤーにとって、こういうお悩みとの“出会い”は、新商品を生み出す絶好のチャンス。ましてや農業や土木業などの業界においては、一般向けの家庭用品などと比べて商品開発のサイクルが遅く、はるか昔に開発された製品が使い続けられているというケースも少なくありません。

この出会いと気づきから、『コンテナを載せやすい浅型一輪車』の開発が始動しました。

リサーチを進めると、これまでは農家さんや土木・建築系の作業者さんしか使っていないと考えられていた運搬用一輪車が、重い荷物運びやゴミ捨てなどの際に、一般の方にも使われていることが判明。

この事実を踏まえ、新型一輪車のコンセプトは「運搬用一輪車の扱いに慣れていない方も使いやすいように」と設定。長所である操作性は殺さない範囲で、筋力が衰えたご年配の方や、使い慣れていない一般の方でもストレスなく使える──そんな商品を目指しました。