驚くほど多彩で、美しい花を咲かせるミスミソウ。春を告げる花として古来から親しまれてきました。現在も優れた品種が登場し、世界でもその美しさが注目されています。
この記事では、ミスミソウの特徴と性質、主な種類や育て方などを詳しく解説します。
正月から早春にかけて開花株が流通し、小さな鉢植えとしてよく栽培されます。春をいちはやく知らせる花として知られ、北国では雪解けとともに開花します。
ユキワリソウの名でもよく知られますが、他にも同名の植物があります。ユキワリソウは、サクラソウ科の高山植物(Primula farinosa subsp. modesta)の正式な和名です。混同されることが多いので注意してください。
花が比較的大きく丈夫なオオミスミソウが多く栽培されます。山形県から北陸にかけての日本海側に分布し、おもに落葉樹林の斜面などに自生します。冬から春は日なたが適しますが、夏の直射日光を嫌います。
美しい花はバリエーションも豊富で、花色は赤やピンク、青、紫、白などがあります。また二段や三段咲き、八重咲きや複色の花もあります。花が無い時期は、葉の模様も楽しめます。
変異が多く、種から育てると様々な形質の株がでてきます。古典園芸植物として古くから栽培され、様々な品種が作られてきました。現在でも熱心な愛好家により栽培され、新品種が登場しています。観賞価値の高い品種が作り出され世界的にも人気を集めており、新しい園芸植物として注目されています。
ミスミソウの仲間は、北半球の温帯に8〜9種類が知られています。以前はヨーロッパやシベリア原産のノビリスの変種などとして分類されていました。またアネモネ属に分類されることがあります。
神奈川県以西から四国、九州北部までの広い地域に分布しますが、海に近い地域が多いです。オオミスミソウより小型です。花は白やピンクが多いですが、黄色もあります。
東北から千葉や神奈川県までの海沿いの地域に分布します。花は白やピンクがあります。
中部・近畿地方と瀬戸内海沿岸に分布し、光沢のない葉には毛が生えています。花は白や薄紅色、紅色などがあります。
近年日本でヘパティカ属の新種が発見されています。神奈川県の箱根外輪山に分布するアシガラスハマソウ、宮城県蔵王山系で発見されたザオウスハマソウがあります。
落葉樹の木の下のような環境が適します。冬はよく日光が当たりますが、春から秋は直射日光が当たらない場所が目安になります。
5月くらいから日差しが強くなるので、直射日光の当たらない場所に移動するか、50%程度の遮光をしてください。
夏の7~9月の暑い時期は、90%程度遮光した場所が適します。葉焼けしやすい時期なので十分遮光し、高い位置に鉢を置くなど涼しい環境で管理してください。
12月くらいから日なたに移動しますが、季節外れの暖かい日は日光が強すぎる場合もあります。気象の変化に注意してください。
自生地の多くは雪の降り積もるような地域で、寒さには強いです。ただし雪の積もらない地域で、冬の乾燥した風に当たると弱ります。風当たりの強い場所に置くのは避け、冬の北風が当たらない建物の南側近くなどの場所に置くとよいでしょう。また日当たりのよい場所に置き、しっかりとした株に育てます。
水はけのよい環境を好みます。用土を過湿にすると根腐れしますが、強い乾燥も嫌います。鉢土の表面が乾いてから水やりするのが基本です。庭植えした場合、雨が降らず土壌が乾燥した場合は水やりしてください。
春の4月から梅雨の終わりまでと、秋の10〜11月に肥料を与えます。多く与えすぎると、根腐れするので注意してください。
3要素が等量、またはリン酸が多めの緩効性化成肥料などを規定量与えます。または液体肥料を10日に1回、規定量を与えるのもよいでしょう。秋に生育のよい株は、置き肥の他にやや薄めにした液体肥料を併用して与えると、花芽がよく充実します。
直射日光を避けた場所に置くので、ナメクジによる食害が発生することがあります。放置すると深刻な被害になることがあります。
灰色カビ病の発生にも注意してください。終わった花や傷んだ葉は、早めに取り除いて風通しよくしてください。
2年に1回、春の花後か秋の9月下旬から10月上旬に植え替えしてください。
古い土をすべて落とし、はみ出したように伸びた根を切って根の長さを揃えます。また同時に株分けもしますが、軽く引き離しても根が多く付く程度で株分けしてください。無理して細かく株分けするのは避けてください。
新しい用土で、根をできるだけ広げるように植えつけるのが大切です。
作業後は風当たりの弱い日陰に置き、1~2週間は乾燥させないように水やりしてください。
鉢は4~5号のサイズでやや深めの鉢を使うのが一般的です。鉢底石を4分の1程度の深さまで入れて植えてください。
通気と排水がよく、適度に保水性のある用土が適します。市販の山野草用の培養土を使うのがお勧めです。または硬質鹿沼土と日向土(または桐生砂、軽石)を同じ割合などで配合した用土を使います。乾燥が激しい場合は、赤玉土小粒を2〜3割配合するとよいでしょう。
春に落葉樹の木の下などの排水のよい場所に植え付けます。環境があうと、こぼれ種で増えます。
日本産の植物なので、育て方のコツがわかれば初心者でも十分育てられます。環境があえば地植えでもよく育ちます。昔から愛されてきた古典園芸植物ですが、現在も魅力的な新品種が登場しています。世界にほこるべき日本の美しい園芸植物で、今後ますます注目されることでしょう。