中華料理の青椒肉絲や回鍋肉など、油と相性が良いピーマン。家庭菜園の中でも受粉作業が必要なかったり、難しい剪定作業がなかったりと比較的栽培がしやすい野菜です。今回は、日本一のピーマンの産地でもある茨城県神栖市で農業を営む、原農園の原秀吉(はら・ひでよし)さんに家庭菜園でのピーマン栽培のコツを伺いました。

ピーマンの農家・原農園さんのご紹介

日本一のピーマンの産地である茨城県神栖市。温暖な気候と水はけの良い砂地の土壌はピーマン栽培に適しており、多くの農家がハウスで栽培しています。今回の先生である「原農園」さんもその一人です。

今回の先生、原農園の原秀吉さん

今回の先生、原農園の原秀吉さん

原秀吉さんのプロフィール

原農園 代表 原さん

ピーマンをメインにスイカやメロン、米を栽培する原農園。1972年に就農して以来、50年以上ピーマンを作り続けるベテラン農家だ。テレビなど多くのメディアにも出演しており、特別栽培(地域の慣行レベルに比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培された農産物)で作られたピーマンは苦みが少なく甘みがある。また、ピーマンの粉末を使ったピーマンキャンディーにも取り組んでおり、他では味わえないと人気商品だ。

原農園が手掛けるピーマンキャンディー

原農園が手掛けるピーマンキャンディー

原農園公式HP:特別栽培にこだわった苦味の少ない甘いピーマンなら、茨城県神栖市の原農園 (hara-farm4613.com)

ピーマンの種類

ナス科トウガラシ属に分類され、パプリカやししとうと仲間であるピーマン。ピーマンの肉詰めや青椒肉絲といったように油との相性が良く、野菜売り場に一年中並ぶ野菜の1つです。その一方で、「子どもの嫌いな野菜ランキング」では常に上位に入り込むなど、独特な苦みと風味が特徴で苦手な子供も少なくありません。

緑色で片手サイズのピーマンが一般的ですが、実は色々な種類があります。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

神栖市では、みおぎという品種だけを作っていて、私が作るピーマンも全てみおぎになります。形は一般的なピーマンですが、グリーンの色が濃く、柔らかくて苦みが少ないのが特徴です。その一方で、形が揃いづらいなど栽培が難しい品種でもあります

原農園のピーマン(みおぎ)

原農園のピーマン(みおぎ)

ピーマンの栽培時期

一般的にピーマンは、春に植えて秋ごろまで収穫できる夏野菜です。

栽培時期カレンダー

栽培時期カレンダー

原秀吉さんのプロフィール

原さん

私たちが農業を営む神栖市では、春作、秋作温室とハウスを使いながら一年中ピーマンを栽培しています。燃料を焚いてハウス内の温度を高く保つことで、露地栽培では対応できない時期にも出荷できるようになります

ピーマンの栽培方法

種や苗について

原秀吉さんのプロフィール

原さん

苗の購入がオススメです。育苗の必要がある種は、苗に比べると栽培難易度が上がりますし、必要な資材も増えます。昔は自分で仕立てることもありましたが、今は種から作る事は無く、苗を購入して栽培しています

苗に比べて種のほうが安価に購入できますが、種から育てる場合は、トレイやポットを用意したり、気温が低い時には加温・保温が必要だったりと手間が増えます。寒い時期に種まきをするので、枯れるリスクも考えられます。

それに比べて一般的に売られている苗は、暖かくなってきた時期に購入し植えればいいので、そういった心配をする必要がありません。

ピーマンの苗

ピーマンの苗

土作りについて

ピーマンを栽培する上での土に関しては、ホームセンターで売っている一般的な培養土で問題ありません。

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原さんの畑では、うねの高さは約15cmにしているといいます。もちろん、家庭菜園ならば畝を作らなくても大丈夫ですが、排水性が良くなるのでできればやってあげてください。

畝の様子

畝の様子

植え付けについて

一般的に苗を植え付ける時期の目安は、最低気温10℃以上、最低地温15℃以上になったころです。タイミングとしては、4月下旬以降。ハウスの場合は、設定温度を18℃に設定して植え付けを行うといいます。

また、原さんの畑の場合、苗同士の間隔は60cm。間隔が45㎝ぐらいの地域もあるが、それだと茎が細く、根の張りが変わってきてしまうといいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

ピーマンは主枝の他に、2本仕立てや4本仕立てとする側枝と呼ばれる枝がありますが、根は、上から見ると側枝から90度の方向、ローマ字のXのような形に伸びていきます。なので、隣の苗と根が絡まらないように、側枝の方向を参考に植えてあげると収量があがりやすいです

原農園の株間隔

原農園の株間隔

水やりについて

受粉をする上で水が必要となるので、夏場など雨が少なく乾燥する時期は毎日水やりが必要になります。ただ、原さんは夕方などには行わず、毎日朝だけ水をやるようにしているといいます。

また、乾燥を防ぐために藁も効果的です。株元に置いてしまうと湿気が溜まり、病気が出やすいでの、少し空けてあげてください。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

ピーマンは秋には17段、春には24段から27段とだいたい終わりも取れる量も決まっています。終わりが決まっているので早く成長させる意味はありません。むしろ、夕方にあげると成長が早くなりすぎてしまいます。ただ、水を切らしてしまうと受粉が止まるので注意が必要です。なので、朝撒いて夕方ぐらいに乾いているぐらいが理想的ですね

支柱について

露地栽培の場合は、真ん中に1本、側枝用に2本の支柱を立てます。主枝と側枝それぞれを誘引・固定することで、風が吹いても折れずに済みます。

成長して大きくなった時は風の影響を受けやすいので支柱が必要ですが、植えたばかりの頃も木が丈夫になっていないことが多く、風で折れやすいので必要です。なので、植えるのと同時に支柱を立ててあげるようにしてください。

原農園の様子

原農園の様子

原秀吉さんのプロフィール

原さん

私たちのようなハウス栽培の場合は、露地とは違い「糸で吊る」方法が一般的です。支柱と糸の目的は同じです

受粉について

ピーマンは受粉作業を必要としない野菜です。ホルモン処理や蜂など必要としません。風通りがあれば問題ないので、比較的栽培しやすい野菜といいます。

ピーマンの花

ピーマンの花

追肥について

追肥するタイミングは、植え付けから2か月ぐらいです。株元ではなく、藁などの下に来るように撒いてあげます。

追肥が必要な見分け方については、ナスと同様にめしべとおしべの長さになります。めしべがおしべよりも長かった場合は肥料が足りていて、めしべよりもおしべが長かった場合が追肥するタイミングとなるのです。

それよりも簡単な見分け方もあるといいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

成長点の一番上の葉っぱを見るだけで分かります。良い状態というのは、葉脈と葉脈の間がちょっと盛り上がっています。逆に、平らになっていたら足りていない

元気な状態の葉脈の様子

元気な状態の葉脈の様子

仕立てについて

ピーマンの場合は2~4本で仕立てることが一般的です。2本と4本同様に1番花がある節で側枝(第1次分枝)を2本に仕立てます。その後に、側枝(第1次分枝)に付く2番花の節で2本に仕立て、合計4本の主枝とし栽培していきます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

原農園では4本に仕立てて栽培しています。近年のピーマンを作っている農家は4本が多いと思います

仕立てを分かりやすく説明した図(タキイ種苗株式会社ホームページより参照)

仕立てを分かりやすく説明した図(タキイ種苗株式会社ホームページより参照)

タキイのピーマン栽培マニュアル | 野菜栽培マニュアル | 調べる | タキイ種苗株式会社 (takii.co.jp)

芽かぎについて

芽かぎは木の成長を促すための重要な作業のひとつです。余分な芽ではなく、木の成長を促すために栄養を使ってくれるので、軸が太く成長していきます。

成長してくると、花芽の周りに、側枝となる脇芽が付いてきます。2本で仕立てる場合も4本で仕立てる場合も同様に、側枝の脇芽(ふたつ)だけ残し、他は全て取ってしまいましょう。

取ってしまう脇芽

取ってしまう脇芽

摘花や摘葉について

原さんによると、ピーマンの摘花は苗の植えるタイミングで変わるといいます。

若い苗を植えた場合には1番花を取りません。逆に、花が既に付いているような苗を植える時は3番花ぐらいまで取ってしまうといいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

ピーマンを栽培する上で一番大切なのは根がどれだけ地中に張っているかです。若い苗の場合は、花を付けるまでに十分に根を張ることができるので摘花は必要ないと考えています。老化した苗は花よりも根を張らせる方に集中させたいので3番花ぐらいまで取ってしまいます

原さんの場合は、摘葉は行いません。その理由が株の間隔を広めの60㎝とした点にあるといいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

60㎝開けると、わき芽だけ取っていれば摘葉は必要ありません。ただ、面積が狭く間隔を狭くする必要がある場合は、摘葉を行わないと太陽の光が当たらなかったり、風通りが悪くなったりと病気などが出やすくなるので注意が必要です

圃場の様子

圃場の様子

更新剪定について

ナスだと収穫と同時に行っていた更新剪定。ピーマンの場合は特に必要ありません。支柱から外れて伸びている枝を、支柱の誘引している部分から10cmほどの位置で切るだけといいます。

連作障害について

家庭菜園ならば、植える場所を必ず変えてあげるようにしてあげる必要があります。プランターなら、土は新しいものにしてあげてください。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

原農園では、春、秋、温室と切れ目なくピーマンを栽培していますが、春作と秋作だと6ヶ月なのでセンチュウの影響を受けづらいです。それに比べ、栽培期間の長い温室栽培はセンチュウがどうしても出てきてしまいます

病害虫について

ピーマン栽培において多い害虫は、タバコガ類とスリップス(和名はアザミウマ)、コナジラミといいます。特にスリップスは、色々な病気を持って来る原因となります。

スリップスやコナジラミはテントウムシ、アザミウマはタバコカスミカメが天敵となり食べてくれます。タバコカスミカメは、ゴマやクレオメといった植物を好み繁殖するので、原さんの畑では、クレオメを隣で栽培しているといいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

ゴマは種を持ったら枯れてしまうのでクレオメの方が長くていいと感じています。ただ、1点注意しなくてはいけないのが、センチュウ。センチュウはクレオメが好きなんですよね笑

クレオメの花

クレオメの花

ピーマン栽培において多い病気は、モザイク病やうどんこ病、青枯病です。その原因として病気を媒介するスリップスやカリウムの欠乏といいます。

原秀吉さんのプロフィール

原さん

私の場合は、砂地という地域の土壌柄、カリ欠になりやすいので基準の1.5倍近くいれるようにしています。また、クレオメを使ってスリップスの天敵をなるべく増やすようにして、特別栽培を実現しています

ピーマンのオススメの食べ方

最後に、原さんに聞いたオススメの食べ方を紹介したいと思います。

油と相性の良いピーマンですが、今回教えていただいたのはピーマンのお浸しです。原さんいわく、いくらでも食べられるぐらいピーマンを消費する食べ方といいます。

ピーマンを縦半分に切り、種を取って好みの固さに茹でます。その後、氷水に浸して粗熱を取ってから縦に切り、お好みでかつお節や醬油、めんつゆをかけて召し上がりください。

筆者が作ったピーマンのお浸し

筆者が作ったピーマンのお浸し

みなさんの「上手くできた」や「ここが分からない」などの声もお待ちしています。

ぜひ、この記事を参考にピーマン栽培を楽しんでみてください。

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