「耳栓で集中力がアップする」という噂を耳にしたことはありますか? 実はこれ、ちょっとした誤解があります。
「耳栓は騒音を遮断することで、集中力の低下を防ぐ効果があるという方が正しいです。耳栓で集中力が向上するわけではないんです」と教えてくれたのは、耳鼻科医の富田雅彦先生です。
他にも「耳栓をつけるとぐっすり眠れる」「耳栓をすると耳が悪くなる」など、誤解が溢れている耳栓事情。今回は富田先生に、世の中に氾濫する耳栓による効果の真偽と、耳栓を日常生活でどう活用すべきかについて聞いてきました。
耳鼻科医 富田雅彦先生
——耳栓で集中力がアップするわけではないのですか?
富田先生: 「耳栓をすると集中力が上がる」というのは少し齟齬(そご)があります。大きな騒音が響く中では意識が散ってしまい、集中力がどうしても削がれてしまいますよね。そこで耳栓をすると、騒音を遮断してくれるわけです。
したがって、「集中力を上げる」のではなく、「騒音による集中力の低下を防ぐ」効果があると言う方が適切です。
興味深いことに、『飛行場近くに住む子どもとそうでない子どもには、学習能力や記憶能力に差がある』というデータがあります。
また、ノイズ環境でのパフォーマンス状況を検証した論文(※)もあります。タスクを読解力タスク、暗算術タスク、論理的推論タスクなどのいくつかの項目に分けて、それぞれの能力がノイズ環境下でどのように発揮されるかを実験したものです。論理的推論タスクの項目では、静かな場合と比較して、ノイズ環境下では11%も参加者のパフォーマンスが低下したという結果になりました。
——うるさいと集中力が落ちるということが、データでも示されているんですね。
富田先生:はい。つまり、静かなところで耳栓をしても集中力はアップしません。騒音がある場合に耳栓で「集中力の低下を防ぐ」ことで、パフォーマンスが発揮しやすくなるということです。