「イライラしている様子を見せる」「ひっきりなしに毛づくろいをしている」などは猫がストレスを感じているサインかもしれません。このようなストレスサインと、猫にとってストレスになりやすい主な原因、ストレスの解消法について獣医師の牧村さゆり先生監修のもと解説していきます。

猫はとても繊細で、毎日の生活の中でさまざまなものに対してストレスを感じています。しかしポーカーフェイスな猫だと飼い主でもなかなか気が付いてあげられないことがあります。

愛猫のストレスサインにいち早く気が付いて、適切に対処できるようにしていきましょう。

見逃さないで! 猫のストレスサイン

遠くを見つめる猫

猫も人と同じで、「ストレスは万病のもと」です。長期的にストレスにさらされると心や体の不調につながり、病気になってしまう恐れもあります。だから愛猫のストレスにいち早く気が付いてあげられるようにしておきましょう。

猫がストレスを感じているかどうかは、行動や表情などから読み取ることができます。猫がストレスを感じたときに見せるサインを、行動、身体的、体調の3面から紹介していきます。

愛猫のストレスサインを確認したら、次に続く主な原因からストレス源を見つけて対処していきましょう。

✓【行動のサイン】落ち着かない、体を舐め続ける、攻撃的になるなど

✓【身体的なサイン】尻尾を振る、イカ耳、脱毛など

✓【体調のサイン】ご飯を食べない、元気がない、嘔吐や下痢など

「環境の変化」が原因の場合の対処法

ソファでくつろぐ猫

猫は古くから単独行動をしてきたため縄張り意識が非常に強く、この性質は現代の飼い猫にも強く残っています。自分が食事をしたり休息したりして安心して過ごす場所(縄張り)を守るために、侵入者を許さず、縄張り内の些細な変化にも敏感に反応し警戒します。

このことを念頭に、何が愛猫のストレス源なのかを見つけて適切に対処していきましょう。

✓引っ越しや模様替えが原因の場合

「犬は人について、猫は家に付く」よく言われるように、猫は家に執着します。そのため引っ越しや部屋の模様替えは、猫にとって非常に大きなストレスになります。猫は変化を嫌います。ベッドやいつも使っていた飲水用のお皿が変わることですらストレスになることがあります。

この場合の対処法は、引っ越しをしても家具の配置を引っ越し前の部屋と似せるほか、猫のケージやベッド、トイレ、食事皿などは新調せずにこれまでと同じものを使うなどして、変化が苦手な猫のストレスを減らす工夫をしましょう。

引っ越しと同様に部屋の模様替えでも、猫は不安を感じます。模様替えをした後も、猫のものはこれまでと同じものを使うようにして、猫が以前と同じようにくつろげる安心できる場所を作ってください。

✓新しい家族が原因の場合(2匹目の猫や犬、赤ちゃんなど)

縄張り意識が強い猫は、自分の縄張りに見知らぬ人や動物が侵入することを嫌います。そのため猫や犬、赤ちゃんなどの新しい家族を迎えると不安が高まります。

先住猫が落ち着くまでは、新しい家族の猫や犬はしばらく別の部屋やケージで過ごすようにして、少しずつ触れ合う時間を増やしていくトライアル期間を設けて慣らしていきます。飼い主はどうしても新しい家族の方に意識がいってしまうかもしれませんが、“先住猫ファースト”を心がけて、先住猫が不安にならないように気を配ってあげましょう。

また猫はニオイでコミュニケーションをとります。事前に新しい家族のニオイが付いたものを猫の近くに置いておけば、慣れるまでの時間がショートカットできるかもしれません。

✓来客が原因の場合

来客は猫にとって自分のテリトリーに侵入してくる警戒対象です。「チャイムが鳴ってから知らない人が来る」ということを覚えると、チャイムの音も嫌がるようになります。

来客がストレスになる猫の場合は、来客がいる間だけは、猫が安心できる別の部屋に猫を移動させておくとよいでしょう。そのため猫の安心できる場所を、家の中に複数の部屋に作っておくことをおすすめします。

また来客と猫を無理やり対面させるようなことはしないようにしましょう。来客との顔合わせは猫のペースに合わせてタイミングを見計らい、来客が猫と遊んだりおやつをあげたりしながら、猫が“楽しい”と思える体験を通じて関係を作っていくようにしましょう。

「生活環境が原因」の場合の対処法

愛猫の生活環境

愛猫の生活環境は、猫がリラックスして過ごせるようになっていますか? 猫は次に紹介するようなことが原因でストレスを感じることがあります。愛猫が健やかに過ごせるように注意しましょう。

✓同居猫や同居犬が原因の場合

縄張り意識が強い猫の場合、同居猫や同居犬がストレス源になることがあります。多頭飼いの場合は、それぞれの動物がストレスなく過ごすことができているかよく観察してください。ストレスを感じている場合は、それぞれの動物が過ごす空間や食事、排泄スペースを分ける、食事や遊ぶ時間帯を分けるなどの対処をしましょう。

✓運動不足が原因の場合

室内飼いの猫は運動不足になりやすい傾向にあります。思い切り走ることができなかったり、飛び跳ねたりできない環境がストレスになることがあります。また猫は高いところが好きなので、低い場所での生活がストレスになることもあります。

キャットタワーなどの高低差のある家具で上下運動を促したり、猫じゃらしを使って一緒に遊んであげたりするなど、猫が運動する機会を増やすように心がけましょう。

✓トイレが原因の場合

猫はとてもキレイ好きで、トイレへのこだわりが強い動物です。トイレが気に入らなかったり、汚れていたりすることがストレスとなって、排泄を我慢したり他の場所で排泄したりすることがあります。そのためトイレ環境をしっかり整えてあげることが重要です。

トイレは猫の好みのものを見つけ、猫が落ち着いて排泄できる場所に設置しましょう。1日最低2回は掃除し、清潔に保つように心がけましょう。トイレは猫1匹あたり2つ設置するのが理想です。

✓ニオイが原因の場合(香水やアロマ、タバコはNG)

猫は嗅覚が優れ、人の5倍のニオイを感じやすいといわれています。そのため思わぬニオイが猫のストレス源となっていることがあります。

猫は、柑橘類やメントール系のハーブ類、コーヒーやお酢、塩素系漂白剤、香辛料、ニンニク、男性の汗のニオイ、唐辛子などのニオイが苦手だとされています。なかには人にとっては良いニオイでも、猫にとっては嫌なニオイということもあります。そのため香りの強い洗濯柔軟剤や香水、アロマは使わない方がよいでしょう。お手入れに使用するグルーミングスプレーも、犬用のものは香り付きのものが多いので猫用のものを使うなど注意してください。

また猫は自分のトイレのニオイも苦手で、尿や便のニオイを嫌がります。そのため、トイレは清潔に保つようにしましょう。

✓大きな音が原因の場合(掃除機や工事音、雷、花火など)

猫は聴覚も非常に優れているため、大きな音がストレスになりやすいです。「雷恐怖症」「音恐怖症」と呼ばれる症状があるほど、普段聞き慣れない大きな音に強いストレスを感じます。

中でも雷や花火は、猫がパニックになって脱走してしまうケースがあるほどの強いストレス源です。

大きな音がストレスになる猫の対処法は、猫が安心できる場所を複数個所作っておくことです。窓から離れていて音が聞こえづらいところに設置するとよいでしょう。

また特定の音に強いストレス症状が出る場合は、その音を小さい音量で聞かせながらおやつをあげたり一緒に遊んであげるようなポジティブな体験と組み合わせたりすることで、徐々に慣らしていくトレーニングも有効です。

「飼い主が原因」の場合の対処法

飼い主とじゃれ合う猫

飼い主の行動が猫のストレス源になってしまうことがあります。良かれと思ってやっていることがじつは猫にとってはストレスかもしれません。甘えん坊だったり素っ気なかったり、ツンデレだったり、猫はその子ごとに飼い主との適度な距離感が異なります。愛猫との関係は大丈夫でしょうか、見ていきましょう。

✓留守番などが原因の場合

クールなイメージの猫ですが、なかには飼い主と離れることが苦手、留守番が苦手、という猫もいます。特に普段から飼い主とべったりと一緒にいる猫は、留守番が苦手な傾向にあります。

この場合の対処法は、日ごろから飼い主と離れる時間を作って適度な距離を保ちながら過ごす練習をすることです。また留守番中はひとりで遊べるおもちゃを与えるなどの工夫をしてみてください。

留守番に慣れている子でも、連休明けなどの一緒に過ごす時間が長かった後は注意が必要です。

留守番後は、猫が甘えてきたらできるだけ構ってあげるようにしましょう。飼い主と触れ合うことで緊張が解けてリラックスすることができます。

✓スキンシップ不足や過度なスキンシップが原因の場合

飼い主がなでたり一緒に遊んだりするスキンシップは、猫に安心感を与え、信頼関係を深めるための大切なコミュニケーションです。

毎日15~30分ほど一緒に遊んであげることが理想で、スキンシップが足りないことは猫にとってストレスになります。しかし注意したいのが、過度なスキンシップは猫にとってストレスになってしまうことです。

猫の耳が横に倒れて“イカ耳”になってきたら、もう解放してほしいサインです。スキンシップは足りなくても多すぎてもNG、「猫のペースに合わせて適度に」を心がけましょう。

✓お手入れが原因の場合

多くの猫にとって、爪切りや歯磨き、ブラッシングなどのお手入れはストレスです。長時間拘束されることや、ブラッシング中に静電気が起こること、足先を触られることなど、何がストレスになるかはその猫によります。

それでもお手入れしないわけにはいかないので、嫌がる猫には負担にならない方法を探しましょう。また猫にお手入れを「慣れてもらう」こともストレスを減らす方法です。

たとえば爪切りはいっぺんにやらないで1日1本ずつ切る方法でもよいでしょう 。毎日のお手入れが理想の歯磨きやブラッシングに関しては、時間はかかりますが少しずつ慣れてもらうことを目標に、継続してトレーニングしましょう。

歯磨きは、はじめは指を少し口に当てる程度からでOK、ブラッシングはスキンシップの延長で短時間ブラシを猫に触らせるところからスタートします。 歯ブラシに抵抗がある猫も多いため、無理に行わず、まずは慣れてもらうことが大切です。

歯磨き用のクロスや指サックタイプのブラシなど、よりソフトなアイテムを使ってみるのもよいでしょう。また、歯茎に塗るだけ、口内に滴下するだけで使えるケア用品も市販されており、歯磨きが難しい場合の選択肢としておすすめです。

また、爪切りに対して猫が強く不安を感じ、身をよじる、動いてしまうなど自宅では難しく感じることも少なくありません。無理に行おうとすると猫にも飼い主にも大きなストレスとなり、思わぬ怪我につながることもあります。

自宅でのケアが難しい場合は無理をせず、トリミングサロンや動物病院など専門家の力を借りるのもひとつの方法です。日常のケアを安心して続けていくためにも、抱え込まずに頼れる選択肢を知っておくことが大切です。

愛猫は何をされると嫌なのかを把握し、できるだけ負担にならない頻度で、できるだけストレスをかけないよう、愛猫のペースに合わせたお手入れ方法を心がけましょう。

他にもいろいろ。猫のストレス源は「いつもと違うこと」

猫は変化を嫌う習性があります。だから“いつもと違うこと”は基本的にすべてストレスになると考えておきましょう。病院やペットホテル、お出かけ時に使うキャリーケース、車、お風呂などのいつもと違うことは、ほとんどの猫が苦手でストレスとなり得ます。

キャリーケースに関しては、猫がストレスにならないように慣らしておくようにしましょう。動物病院への通院時や、緊急時の避難場所としてすぐに入ってもらえるようにしておくと安心です。

日ごろからキャリーケースを猫の生活スペースに出しておき、猫の昼寝場所の一つとして使ってもらうようにしておくと良いでしょう。

ひどいストレスの対策にはフェロモン製剤やペットホテル

ストレスを感じたときの反応は猫によりますが、なかには激しいストレス反応を示すケースがあります。興奮して家じゅうを走り回ったり、同居猫や飼い主に強い攻撃行動をしたり、網戸を破って脱走に至るケースまであります。

このようなひどいストレス症状には、獣医師により猫を落ち着かせるための抗不安薬が処方されることがあります。花火大会や来客、引っ越しなど、猫が苦手な予定が予めわかっているときは、投薬も対策の一つです。

また猫のストレスを軽減するために、猫がリラックスする成分が入ったフェロモン製剤やサプリメントが市販されています。こうした製品の使用も獣医師に相談してみましょう。フェロモン製剤はストレス要因の1〜2週間前から設置し、猫がよく過ごす高さ30〜50cmの壁面にディフューザーを固定すると効果を感じやすくなります。

その他、花火大会や近隣での工事、来客など、一時的なイベントの場合は、ストレスの原因から逃げる対策としてペットホテルの利用があります。ただし、ペットホテルも猫にとってはストレスになるため、事前に慣らしておく必要があります。

たとえばお買い物中の間など、まずは短時間の一時預かりから最寄りのペットホテルを利用してみるのもおすすめです。もしお近くにカインズがある場合は、併設のペットホテルサービスを活用してみるのも良いでしょう。

ペットホテルのご紹介 | ペッツワン

カインズの猫グッズでストレス対策

カインズでは、ペットとの暮らしを快適にするカインズオリジナル商品やアイデア商品などを豊富にラインナップしています。下記のおすすめ商品の他、ぜひお近くのカインズでも探してみてください。

爪とぎ

猫の爪とぎには、伸びすぎた爪のケアやマーキングだけでなく、リラックスするための目的もあります。ストレスを感じたときに、爪とぎをして気持ちを落ち着かせます。カインズオリジナルの爪とぎは、爪とぎ部分が交換できるので長く使うことができるのがポイントです。

交換できる爪とぎファニチャーハイベッド

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猫の爪とぎ製品一覧

ペットトイレ

人の目を気にせず落ち着いて排泄できるフード付きのトイレは、警戒心が強い猫におすすめです。猫砂が飛び散らないことや、ニオイが部屋に広がりにくいことは飼い主にとっても嬉しいポイントです。

Pet’sOne キャットトイレ 上から出られるフード付き グレー

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猫トイレ商品一覧
ペット用品(猫)

 

まとめ

猫は縄張り意識が強く、環境の変化が苦手です。些細なことでもストレスを感じやすいため、日ごろからよく観察し、猫が発するストレスサインにいち早く気が付いてあげることが大切です。

長期的にストレスにさらされていると、人のように猫でも病気に発展することもあるため油断できません。猫がストレスを感じているときの表情や行動を読み取ることで、愛猫が苦手なことは何かを把握していきましょう。また猫とは適度な距離を保ちながら、できるだけリラックスして過ごせる環境を整えましょう。

ストレス症状がひどい場合や、少しでも心配事があるようなら獣医師に相談してください。

 

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。

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