気温と湿度が上がる梅雨の時期はダニの繁殖期

ヒョウヒダニ

気温が上がって湿度も高くなり、これから夏に向けて害虫が増えてくる季節。蚊やゴキブリ、コバエなどさまざまな害虫の中でも、梅雨時期から夏にかけて特に気をつけたいのが家の中に発生する「ダニ(屋内塵性ダニ類)」である。布団やソファ・畳に潜み、痒みやアレルギーを誘発する屋内塵性ダニ類の被害を防ぐには、早くから対策をすることでその数を増やさないことが大切だ。

では、どのような方法が有効なのか。家庭でできる屋内塵性ダニ類の対策と注意点について、KINCHOでお馴染みの殺虫剤メーカー「大日本除虫菊株式会社」に話を伺った。

ダニの生態を知り尽くしたKINCHOが語るダニの恐ろしさ

金鳥 片山さんと田丸さん

KINCHO中央研究所の片山南美さんと田丸友裕さん

「家の中にいるのはヒョウヒダニ・コナダニ・ツメダニなどで、特に問題となりやすいのがヒョウヒダニとコナダニです。室内に落ちている食べこぼしや人のフケ・ほこり・皮脂汚れなどを餌にしているのですが、増えやすさが問題として挙げられます。ダニが増えやすい環境の条件は室温約25度、湿度60〜80%。人が過ごしやすい環境でもあるため、空調を効かせていたけれど気がついたら家の中がダニだらけ…ということがあります」

ダニの特性について話をしてくれたのは、「ダニがいなくなるスプレー」や「ダニコナーズ 」などの製品開発を担当する田丸友裕さんと、製品の評価や虫の飼育を担当する片山南美さんのお二人だ。

ダニの写真

(左から)ヒョウヒダニ(0.3~0.4mm) 、ケナガコナダニ(0.3~0.4mm)、 ツメダニ(0.3~0.8mm)

家の中に潜む屋内塵性ダニ類は主に3種類に分けられる。花粉症のような症状や目の痒み、ひどくなると喘息やアトピー性皮膚炎を誘発するアレルギーの原因となるヒョウヒダニやコナダニ。そしてヒョウヒダニやコナダニを餌とするツメダニは、人と接触すると皮膚を刺し強い痒みをもたらす。こうしたダニが繁殖しやすくなるのが、気温・湿度ともに高くなる梅雨の時期から夏にかけてなのだ。

「湿度がこもりやすい場所や掃除がしにくい場所、布団や枕の中、毛足の長いカーペットやソファの隙間などもダニが発生しやすいです。ほこりの中には、1g中に何万匹ものダニが発生することもあると言われています。『パンケーキ症候群』という言葉が一時期話題になりましたが、キッチンの戸棚にある小麦粉製品の中でもダニが繁殖することもありますし、家の中全体で注意が必要です」

さらにコロナ禍でおうち時間が増えている今、家の中には食べこぼしや皮脂汚れも増え、ダニが増殖しやすい環境が作られていると言う。

では、ダニを増やさないためにはどうすれば良いのだろうか。

「まずはほこりやダニの餌となるフケ、垢などを溜めないようにこまめに掃除をすること。そしてもうひとつは湿度を低く保つことです。一般的にダニは湿度が50%を下回ると増えにくくなると言われています。部屋の換気をして湿度を上げないようにすることがポイントです。布団やソファは湿気がこもりやすいので天日に干し、枕カバーやシーツはこまめに洗濯をする。ただこれからの時期は湿度も高くなり、換気をしてもなかなか対策にならないので、専用のダニ対策製品を使っていただきたいです」

住環境とともに変化してきたダニ対策

ダニキンチョール

1980年代に発売されていたダニキンチョール

KINCHOの創業は明治18年(1885年)。創業者の上山英一郎(うえやま えいいちろう)氏が殺虫効果のある成分を含んだ「除虫菊」と出会ったことがきっかけとなって、世界初の蚊取り線香を発明した。創業から130年以上の歴史の中でダニ対策製品が誕生したのは、今から約40年前の昭和58年(1983年)だ。

大日本除虫菊 KINCHO 金鳥の渦巻 10巻

金鳥の渦巻 10巻

「最初にダニ対策製品として発売したのが『ダニキンチョール』です。1950年代〜1970年代にかけて、日本の家屋が大きく変化し気密性の高い構造になり、1年を通して快適な室温を保つことができるようになった反面、意識をしないと家の中の空気の入れ替えができなくなってきました。そんな住環境の変化とともに屋内塵性ダニ類の問題が増え始めたため、弊社でダニ対策製品を開発し始めたと聞いています」

畳にノズル部分をさして薬剤を噴射し、畳の中のダニを駆除するダニキンチョール。当時はまだ和室のある家も多く、畳の中の湿気やカビによって増殖するダニを駆除するために使われるダニ対策の主流であった。

しかし、時代が平成になってさらに住環境が変化していったことで、ダニ対策のアプローチもまた変化してきたという。

「今の畳は表面はイグサでできていますが、実は中は従来のワラとは異なり樹脂でできているものが多いため、かつてのようにダニが畳の中で増殖することは無くなりました。こうした畳の変化やソファ・カーペットなど布製品が住宅の中に増えてきたことによって、ダニ対策製品もノズルを突き刺すタイプのものから、表面にいるダニを駆除するものへ変化してきました。住環境の変化に合わせて誕生したのが『ダニがいなくなるスプレー』です」

大切なのは「駆除+寄せつけない」

ダニがいなくなるスプレー

ダニがいなくなるスプレー

2012年に発売した「ダニがいなくなるスプレー」。虫にはよく効き、人には安全性が高いピレスロイド系殺虫成分の効果により、カーペットやソファなどにスプレーをするだけでダニの駆除が可能だ。

月に1度スプレーをすることで、ダニのいない環境を維持することができるという。

ダニの実験グラフ

「速効性があるので、スプレーがダニに付着すればすぐに駆除することができます。実験をしたところ、スプレーをした1週間後にはカーペットに潜んでいた数百匹のダニが何もしない場合に比べて増殖が96%抑制されており、4週間後には0匹になるという結果が出ました。ただ、ダニは死骸もアレルギーの原因となるので、スプレーをした後は掃除機などで死骸を取り除いてください」

大日本除虫菊 KINCHO ダニがいなくなるスプレー デザインボトル 300ml

ダニがいなくなるスプレー (カインズ限定デザインボトル) 300mL

ダニコナーズ シリーズ

さまざまなタイプが展開されるダニコナーズシリーズ

一方、アロマオイルなどでも使われるレモンユーカリなど天然由来のダニよけ成分を使用し、ダニを寄せつけないことを目的とするのが「ダニコナーズ 」シリーズだ。布団や枕の下に入れるシートタイプや置き型のビーズタイプ、スプレータイプのものまで、使用する場所によってさまざまな種類が存在する。

枕用ダニコナーズ

ふとん・まくらにダニコナーズ

「ダニは駆除してもそのままだと死骸やフンがアレルギーを引き起こす原因になってしまいます。ならばそもそも自分のいる環境にダニを寄せつけなければ良いのではないかという発想から、ダニコナーズシリーズが誕生しました。正しいダニ対策は駆除をするだけでなく、同時に寄せつけない環境づくりをしていかなくてはいけません」

意外と知らないダニ対策の落とし穴

ダニコナーズ を持つ片山さん

ニーズに合わせてさまざまな製品も登場し、手軽にダニ対策ができるようになってきている現在。しかし、思い込みや間違った方法を取ることで自ら被害を増やしてしまう危険性もあるという。その1つが布団の天日干しだ。

「ダニ対策として布団を外に干す人も多いと思います。しかし、日光では布団の表面の温度しか上がりません。ダニは湿度や暗闇を好むので、片面しか日光に当てていないと布団の奥に逃げてしまいます。布団を干す時は表裏交互に、中の湿度を全部吹き飛ばす気持ちで干すことが大切です。また、布団を叩く人もいると思いますが、死んだダニが粉々になってアレルギーの原因となってしまいます」

天日干しは、布団を乾燥させるという点ではダニの発生を予防する効果が期待できる。しかし布団を叩くと、ダニの死骸やフンがより細かいものとなって表面に出てくるため、かえってアレルギーを発症させる危険があり逆効果だという。布団のダニの除去にはスプレーで駆除をしてから掃除機をかけることが最も有効的だ。

そしてもう1つ誤解されがちなのが、ダニに注意が必要な時期は梅雨や夏だけではないということ。

「ダニは冬場にも問題になることがあります。寒くなると換気の回数が減ったり、暖房と一緒に加湿器を使うことで、人間にとって快適な空間=ダニにとっても快適な空間を作ることになります。特に冬場の窓の側は、結露ができて湿度が局所的に高くなりダニが増殖しやすくなるので、こまめな換気が必要です」

暑い季節だけでなく、年間通して必要になってくるダニ対策。製品を使って駆除をすると同時に、正しくダニの生態を理解して寄せつけない環境づくりをしていくことが大切だ。

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