パプリカは、ピーマンと同じナス科唐辛子属の野菜で、育つ過程や形もピーマンと似ています。しかし、品種は異なり、パプリカのほうがピーマンよりも甘みが強く、栄養面でも非常に優れています。

パプリカは、苦味が少ないため、サラダやマリネなどの生のままで食べても、加熱をしても美味しい野菜です。加熱してもビタミンCの損失が少ないので、炒め物などにも適しています。

本記事では、植え付け方法や開花の時期、育て方のポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

パプリカの花の特徴

パプリカの花

パプリカは初夏に白色の小さな花を咲かせ、その後にピーマンのような緑色を経て赤やオレンジ、黄色などカラフルな実がなります。味は同じ仲間のピーマンに比べて、青臭さや苦みがありません。なかには黒や茶色、紫、白などの実をつける種類もありますが、花の色はすべて白です。花言葉は「同情」や「憐れみ」、「君を忘れない」などです。

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花はうつむき加減に咲くため、しばらく会えなくなってしまうことを悲しんでいるように見えることから、このような花言葉がつけられたということです。実際には赤や黄色、オレンジといったビタミンカラー。逆に見ているだけで元気になりそうな色合いの野菜ですね。

パプリカは韓国やニュージーランド、オランダなどからの輸入が8割を占めています。昔は高級な西洋野菜というイメージだったものの、今では国内でもハウス栽培され気軽にスーパーで買えるようになりました。通年安定して手に入りますが、本来の旬は6~9月頃(地域によっては7~10月)です。ピーマンと同様にもちろん畑でも鉢植えでも育てられます。以下では苗の植え付けから開花、収穫までの流れを詳しく解説していきます。

パプリカ栽培の特徴

パプリカを育てるうえで知っておきたい栽培のポイントについて紹介します。

【パプリカの基本情報】

パプリカの栽培

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パプリカという名前は、ハンガリー語でピーマンを意味します。パプリカという呼び名は、マジョール語(ハンガリーの公用語)から出たもので、そもそもはペッパーを意味する用語で、ハンガリー産赤唐辛子を指しています。

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しかし、パプリカとピーマンは収穫時期に大きな違いがあり、ピーマンは成熟前に収穫するため緑色をしていますが、パプリカは成熟させたものを収穫するのです。

パプリカはナス科・トウガラシ属の野菜で、寒さには弱く、日当たりの良い場所を好む植物ですが、暑さには強い植物です。果肉はピーマンに比べて厚く、よりジューシーな食感をしています。先述したように青臭さや苦みなどもないことから、サラダやマリネなど生でも食べやすい食材として、幅広いメニューに使われています。

【栽培カレンダー】

栽培カレンダー

パプリカを種から育てる場合は、2~3月頃が種まきの適期です。一般的には4月下旬頃になるとホームセンターなどで苗が出回るようになるため、5月中に市販の苗を購入して植え付けます。種から育てた苗も同じ頃に植え付けましょう。

6~10月までは次々に花が咲くようになるため、肥料切れを起こさないよう定期的に追肥を行います。花が咲きはじめて1カ月くらい経った頃から、10月くらいまでが収穫時期です。詳しい栽培の方法については順次後述していきます。

【参考】パプリカとピーマンの違い

パプリカとピーマン

ピーマンも完熟すれば赤やオレンジなどに色づきますが、ピーマンは完熟すると赤色にしかならず、ピーマンが育ってパプリカになるわけではありません。また、パプリカは青臭さや苦味がなく実が大きく肉厚で甘みがあります。

パプリカ栽培のポイント

ここからは実際にパプリカを栽培する際に知っておくと役に立つ5つのポイントについて、それぞれ詳しく解説していきます。

苗の選び方

パプリカの苗

パプリカは種から育てることもできますが、はじめて栽培するのなら市販の苗を購入して植え付けることがおすすめです。

苗は4月下旬から5月頃に店頭で並びはじめます。以下のように、健康で丈夫に育っている質のいいものを選ぶことがポイントです。

苗を購入するにあたり、植え付ける場所を整えておきましょう。プランターに植える場合は、プランターや底石などの準備もしておく必要があります。

置き場所

日が当たる場所の苗

パプリカは日当たりの良い場所を好みます。日当たりが良く、風通しもいい場所に植えたり、プランターを置きましょう。

用土

苗の植え付け

パプリカを植える用土は水はけをよくしておくことがポイントです。またパプリカの生育に適したpH(好適土壌pH )、pHは6.0~6.5を目安とし、畑に植える場合はできる限り植え付けの2週間くらい前までに、必要に応じて石灰を混ぜ込み土壌を酸性に調整しておきます。1週間前になれば、さらに堆肥と十分な元肥を混ぜ込んで土を作ります。

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苦土石灰を使えば、消石灰に比べて中和反応がおだ どやかなために、堆肥など肥料分を直ぐに混ぜてもあまり問題ありません。苗の植え付けまで数日置いたほうが良いですが、すぐに植え付けても問題ありません。プランターに植える場合は、市販の「野菜用培養土」を使用するとpHの調整をする手間がかかりません。

水やりの頻度、湿度

たっぷりと水をあげる

パプリカは根付くまでに時間がかかるため、乾燥しすぎないように植え付けの時にはたっぷりと水をあげるようにしましょう。パプリカは高温を好む野菜ですが、気温が高すぎると苗が萎れてしまうことがあります。気温の高い日中を避けて、低くなる夕方に水をあげるようにします。

また植え付け後の生育初期に水を与えすぎないようにすると、早く根が張るようになります。7月頃になると株も大きくなり、葉数も多くなり、水が不足気味になります。この頃に乾燥が続くと、実の形が奇形になったりカルシウム不足による尻腐れ病が発生するので注意が必要です。

肥料の種類、タイミング

パプリカと肥料

植え付けから1カ月程度経つと、実がなりはじめます。パプリカは肥料が少なすぎると実の付き具合が悪くなってしまいます。花が咲く頃から2週間に1度を目安に定期的な追肥が必要です。固形肥料を使う場合は根元から少し離れた土に混ぜ込み、液肥の場合は水やりと一緒に与えます。

パプリカの育て方(手順)

ここでは、苗の植え付けから収穫までの作業について説明いたします。

苗の植え付け

パプリカの苗の植え付け

パプリカは寒さにあまり強くありません。早くても寒さが和らぐ4月下旬、できれば遅霜の心配がなくなり、気温が22~30℃程度に安定する5月に入ってからのほうが、植え付け時期としては好ましいでしょう。苗は一番花が咲きはじめ、本葉が13~14枚程度に成長したものが植え付けに適しています。

畑に植える場合は約50cmの間隔に植え、プランターの場合は水はけが良いように鉢底石を鉢底が隠れるくらい敷いて、その上に用土を8〜9分目くらいまで入れます。中央に苗の入る大きさに穴を掘って植えます。

支柱立て(仕立て)、苗の誘引

支柱を立てたパプリカの苗

茎が細いパプリカは強風などで倒れやすい植物です。上へとまっすぐに伸ばすためには、植え付けと同時に支柱を立てて誘引してあげる必要があります。植え付けの際には、割り箸のようなものでも良いので、斜めに挿して、苗と紐で結びつけて固定します。本支柱は、パプリカの苗を中心に三角形に3本支柱を立てて、地表から15〜20cmの所で交差させて固定します。

夏場の乾燥や雑草が生えるのを防ぐ対策として、根元に藁などを敷いてマルチングすることもおすすめです。

開花のタイミング

パプリカの開花

パプリカの花が咲きはじめるのは6月頃からです。植え付けの適期である4月下旬から5月頃に定植すれば、開花のタイミングは約1~2カ月後です。その後は10月まで次々と花が咲きます。1番花が咲きはじめる時期になれば、さらにさまざまな手入れが必要になってきます。

摘果(芽かき・整枝)、追肥、雨避けの作成

肥料をあげる

1番花が咲きはじめる頃は、まだ成長途中の段階です。その時期に実に栄養をとられてしまわないように、1番花は摘み取ります。

パプリカは枝分かれしながら伸びていきます。株を大きく成長させるためには、残す芽以外を取り除く「芽かき」が必要です。残すのは1番花の下に出てくる2本にとどめ、主茎を含めた3本だけを伸ばしていく「3本仕立て」にします。その後もわき芽はこまめに取り除き、「整枝」しながら枝を整えて育てましょう。

肥料切れを起こさないように、実がなりはじめる時期は2週間に一度の追肥が必要です。パプリカは実がついてから完熟に至るまで、非常に時間がかかり、実が大きくなってから約3週間かかります。その長い期間中に雨に当たりすぎると実が痛んで腐ってしまうことがあります。雨を避けるためにビニールなどを被せて簡易の温室を作ってその中で育てるなど工夫をすることもあります。

収穫のタイミング

パプリカの収穫

開花後は結実して小さな実が付きはじめますが、完熟するまでには3週間程度かかります。パプリカも最初はピーマンと同様に緑色で、完熟するにしたがって実の色が黄色やオレンジ色、赤色に変化していきます。緑色の状態でも食べることは可能ですが、パプリカは完熟させてから収穫するのが基本です。

茎を傷めないように引っ張らず、ヘタの付け根をハサミでカットして収穫します。時期が遅れると実にシワが出てツヤもなくなってくるため、それまでに収穫しましょう。6月下旬頃から10月中旬頃まで次々実り、長い期間収穫できます。

【参考】連作障害とコンパニオンプランツ

同じ場所で同じ種類ばかりを栽培し続けると、徐々に収穫が減ってくる「連作障害」が起こることがあります。収穫を終えた後の苗や土は破棄し、翌年は新しい苗や土を使いましょう。

害虫や病気を防いだり、成長を促したりする「コンパニオンプランツ」を一緒に植えるのもおすすめです。パプリカの場合はマメ科の落花生が向いています。

パプリカを育てる際の注意点

しおれた葉

最後に、パプリカを元気に育てるために知っておきたい注意点について3つ説明します。

生育不良

実が多くできた株は一度に多く落花したり、品質の悪い実しかならなくなったりする「なり疲れ」を起こすことがあります。そのため、追肥や水やりをしっかり行うことが大切です。実は完熟する前の若い状態で収穫し、株に栄養を与えて回復させるようにします。

カルシウムが不足すると実のお尻が黒く腐ってくる「尻腐れ病」と呼ばれる症状が発生することもあります。窒素の多い肥料を与えすぎるとカルシウムの吸収を阻害してしまうので、適量を心がけましょう。

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国吉さん

また尻がれ病にかからないように適度な水分管理や事前の苦土石灰などによる土壌改善の準備がとても大切になってきます。尻がれ病にかかった実は、直ちに取り除き、カルシウムを補うような活力剤などを補ってあげても良いでしょう。

病気

葉に出る病気としては、白いカビのような斑点ができるうどんこ病や褐色の斑点ができる褐斑細菌病、モザイクのように濃淡が現れるモザイク病などがあります。

そのほか、青みが残ったまま株がしおれてしまう青枯れ病や、しぼんだ花からカビが発生して実が腐ってしまう灰色かび病もパプリカがかかりやすい病気です。

高温多湿になる梅雨時期から梅雨明けに発生しやすくなるため、雨避けを施し、風通しをよくしておくことが大事です。

害虫

体長1~4mmのアブラムシが集団で付くと、栄養分を奪われて成長が止まることがあります。ハダニ類やコナジラミ類も付着すると葉の汁を吸い、被害を及ぼします。数が多ければ適切な薬剤を使用して駆除しましょう。

実の中に入り込んで中身を食べてしまうタバコガの幼虫や、昼間は土の中に潜み、夜間に出てきて葉を食べるヨウトウムシもパプリカに被害を及ぼす害虫です。どちらも植え付け後に防虫ネットなどをかけておくと、株の周囲に産卵されるのを防ぐことができます。

まとめ

パプリカは黄色やオレンジ色、赤色などカラフルな実がなる野菜です。収穫時期が長く、自宅で栽培すれば、メニューの幅も広がるでしょう。

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