玄関は、「家の顔」ともいわれ、外から見えやすい場所のひとつ。しかし、収納スペースが限られるため、気がつくと下駄箱から靴があふれ、「なんだか玄関がゴチャゴチャ…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回は、1級家事セラピスト・整理収納アドバイザーの粂井優子さんに、玄関をスッキリとさせる収納術と、物を手放すコツについて教えてもらいました。
「散らかった玄関を何とかしたい」と考える人は少なくありません。しかし、間違った片づけ方をしていると、一時はきれいになっても、またすぐに元通りのゴチャゴチャの玄関に戻ってしまうことも。物が散らかってしまう理由には、何が考えられるのでしょうか。
「そもそも、片づけがうまくいかない最大の理由は、物の量が多いことに尽きます。物には使う場所と収納する場所がそれぞれあって、使用後は元の場所に戻し、片づけることを人は繰り返し、生活しています。ここで忘れがちなのが、物は最後まで使い切って、手放す(捨てる)までがセットだということ。」
「新しく何かを買ったなら、当然それをしまう場所が必要になりますから、収納場所を確保するためにも、何かを手放すようにするといいですね。しかし、ここで手放さずに溜めてしまうと、どんどん物ばかりが増えて収納場所がなくなり、いつも片づかない状態になってしまうのです」
では、玄関を上手に片づけるには、どのようなコツがあるのでしょうか?
「片づけの基本は、物を持ち主にとって最適の量にし、それぞれ適した収納場所を決め、不要な物は手放す勇気を持つことです」と粂井さん。おすすめの片づけの流れを教えてくれました。
物の定量を見極めるには、自分が今、どのような物をどれくらい持っているのか、内容と量を把握することが大切です。そのためには、一度下駄箱からすべての物を出しましょう。
この際、物を出すことだけに集中するのがポイント。手に取った物を見ながら思い出に浸っていては、いつまで経っても片づけは終わらなくなってしまいます。
家にある物は、「いる」「いらない」「わからない」の3つのグループに分けることができます。例えば、靴の場合は、「履く」「履かない」で考えましょう。
このときに問題になるのが「わからない」のグループです。いるかいらないか、判断に迷ったら、「とりあえずわからない」とするのはNG。これでは結局、物を減らすことはできません。
1年以上履いていない靴は手放したり、履き心地が気に入っているけれど、かかとがすり減っている場合は、修理してまで履き続けたいか考えてみたりするといいかもしれません。
いる物は定位置を決めて収納し、いらない物は思い切って捨てたり、誰かに譲ったりして手放します。
片づけの途中で「いらない」に分類した物を、もう一度見返すことはやめましょう。つい、「やっぱりいるかも…」と判断に迷ってしまうことになります。
玄関の片づけは、「わからない」に分類された物を、いかに「いらない」側に持っていけるかが重要です。「いつか履くかも」と思っても、その「いつか」はきっと来ないですし、ムカデと違って人間は靴一足分しか履くことができません。
いくら良い靴でも、下駄箱の奥にしまったままでいつまでも履かなかったら、物を大切にしているとはいえないですよね。同様に、「流行遅れだけど、まだきれいだから」も、結局使わないパターンになりがちです。
物を買うことは、楽しくて簡単。でも、手放すことは、なかなかできないものです。「もったいない」という考えが頭をよぎり、ためらってしまうこともあるでしょう。
「もったいない」は、素敵な言葉ですが、「勿体(もったい)」というのは仏教用語で、物の本質という意味を持ちます。物の本質というのは、靴だったら履いて出掛ける、コップだったら飲み物を入れて飲むということ。
ただ取っておいたり、下駄箱の奥にしまい込んだりしているのは、その物の本質とは離れています。本来の用途で物を使っていないことこそが、「本当のもったいない」こと。そうやって考えていくと、手放すためのアクションを起こしやすくなります。
※例:1年使っていないから手放す、もう◯年使ったので手放す、修理してまで使いたいか考える など。
ここからは、実際の玄関収納の例をもとに、整理するポイントを見ていきましょう。玄関の片づけに関するよくあるお悩みに、粂井さんから手軽にできる収納アドバイスと、便利なアイテムを教えていただきました。
【↓ Before ↓】
下駄箱に入りきらない靴は出しっぱなしになっていることが多いため、玄関が窮屈な印象に。
下駄箱の中も、靴がいっぱい。靴以外の物も「とりあえず入れた」状態に。
夫婦と子供(7歳・男子)の3人家族
マンション
まずは、下駄箱にしまっている靴をすべて出し、靴の持ち主ごとに、いる靴といらない靴、わからない靴に分けます。
靴には革靴、スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプスなど、さまざまな種類があり、男性用、女性用、子供用ではそれぞれサイズも異なるもの。これらをバラバラに収納すると、靴の高さやサイズによって収納スペースに無駄な空間ができてしまうのです。
そのため、「いる」に分類した靴は種類ごとに分け、靴の高さをそろえてグループ分けしましょう。さらに、使う頻度によって分けることができると、より収納しやすくなります。
いる・いらない・わからないの仕分け判断は、なるべく時間をかけずにやりましょう!
いる物グループ。左側が普段よく使う靴、右側がたまに履く靴やシーズンで履く靴。
「一度、全部出して俯瞰で見ることで、似たような靴や使う用途が同じ靴ばかりがあることに気づくことも。今後の買い物の参考にもなりますよ」と粂井さん。
「いる」グループがはっきりしたら、次に収納場所を決めましょう。このときにポイントとなるのが、履く頻度です。通勤用の靴や子供の靴、普段よく履くスニーカーなど、使用頻度の高い靴は、持ち主の手が届きやすく出しやすい場所に収納します。
反対に、冠婚葬祭用や履くシーズンが限定される靴など、あまり出番のない靴は、下駄箱の最上段などに収納しておくといいでしょう。たまにしか使わない靴は、片足分のスペースで両足分収納できるシューズホルダーを使えば、収納スペースを倍に増やすことができますよ。
また、子供がいるご家庭の場合は、下駄箱の扉の開閉自体が手間になってしまうこともありますので、「家族それぞれ1足だけは下駄箱から出しておいてOK」などのルールを決めておくといいですね。
上段は冠婚葬祭用の靴をシューズホルダーで整理。下の段に季節の靴を収納。↑
使用したシューズホルダーの拡大写真。コンパクトに整理されています。↓
マンションやアパートにお住まいの場合は、コンパクトな下駄箱であることが多く、靴が入りきらないことも少なくありません。そんなときは、伸縮式のシューズラックなどで下駄箱の中や外に収納場所を増やしましょう。
下駄箱内の棚が動かせる場合は、靴の高さやサイズに合わせて調整し、デッドスペースを活かすことがポイントです。
【↓ Before ↓】
【↓ After ↓】
元々4段だった収納スペース。棚の幅を靴の高さに合わせるようにそれぞれ変え、できたスペースにシューズラックを入れることで、5段分の靴が収納できるように。
使用した伸縮性シューズラックの拡大写真です。↓
玄関には、靴以外にも靴のお手入れ用品など、細々としたアイテムを置いておきたいもの。しかし、これらの小物は、棚にそのまましまうと乱雑になりがちです。
玄関小物は用途ごとに分類し、ケースにまとめて収納しましょう。取っ手がついていて中身が見えやすいケースを選べば、出し入れもスムーズです。
【↓ After 1 ↓】
下駄箱にしっかりと靴を整理収納したおかげで、玄関は広々とした印象に。
【↓ After 2 ↓】
子供の靴は手の届きやすいところに、普段よく履く靴は出し入れしやすい場所にそれぞれ収納。
【↓ After 3 ↓】
いつも使う鍵などは出しっぱなしもOK!
最後に粂井さんから、どのご家庭にもある物で玄関収納に役立つアイテムと、気持ち良く物を手放すためのコツを教えてもらいました。
下駄箱に靴を入れる前にラップを敷いておくと、靴の底についた土などで汚れたときもラップを替えればいいだけなので、掃除の手間がかかりません。ラップは透明なので、見た目もきれいです。
物を捨てるときは「今までありがとう」と、感謝の気持ちを口に出してみるのもおすすめ。「捨てたいけれどなかなか踏ん切りがつかない」というときも、感謝を込めて手放すと、気持ち良くお別れすることができます。