クチナシはアカネ科クチナシ属の植物で、豊かな香りやかわいらしい花が特徴的です。日本だけでなく、海外でも人気があります。
クチナシの花はどのように栽培すれば よいのでしょうか。この記事では、クチナシの花を栽培したいと考えている人に向けてクチナシの種類や栽培方法などを解説します。クチナシを上手に栽培するために、ぜひ参考にしてください。
クチナシ(梔子)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木です。中国や台湾、朝鮮半島、インドシナ半島などに自生し、日本では西日本に自生しています。
学名は「ガルデニア・ジャスミノイデス(Gardenia jasminoides)」。種名の「jasminoides」はジャスミンのようなという意味で、ジャスミンのような白く可憐な花を咲かせることから付けられています。
クチナシは漢方薬としても用いられるほか、栗きんとんやたくあんの色づけにも使われることで知られます。八重咲きのクチナシは実がならないので、実を収穫するためには花弁が6枚で一重咲きの株を選んで植えるようにしましょう。
クチナシにはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、花や実の特徴について解説します。
クチナシは香りが特徴的な植物で、ジンチョウゲやキンモクセイと並んで三大高木のひとつとして数えられています。初夏に咲く花は非常に甘く強い香りを放ち、遠くから漂ってきた香りを回だけ意見がある方も多いのではないでしょうか。魅力的な香りであるため、香水の原料としても利用されています。
また、見た目が美しいだけでなく香りもよいので、海外ではデートの誘いやプロポーズに贈る花として使われている地域も。ちょうど6月頃に白く清楚な花を咲かせることから、ジューンブライドのウェディングブーケの花としてもよく利用されます。
クチナシの実は栗きんとんやたくあんの色づけの着色料として使われるため、スーパーマーケットなどで販売されることもあります。
また、4世紀前半に建造されたといわれる奈良県の下池山古墳からクチナシの実が利用されていた痕跡が見つかり、古墳時代から利用されていたとされています。
食品の着色料だけでなく、衣服の染料としても古くから利用されてきており、日本では利用の歴史が長い植物です。
クチナシという名前はどのようにして付けられたのでしょうか。ここでは、名前の由来について解説します。
名前の由来は諸説ありますが、最も有力なのは「口無し」「口梨」「クチナワナシ」です。「口無し」とは、実が裂けないという特徴から付けられたものです。一方「口梨」は、実を梨、萼を鳥のくちばしに見立てて付けられています。
「クチナワナシ」のクチナワはヘビ、ナシは実を意味しており、人が食べても美味しくなく、ヘビくらいしか食べない実を付けるという意味で名付けられました。
クチナシの英語名は「cape jasmine(ケープジャスミン)」。これは、かつて英語圏では、クチナシが南アフリカ共和国西ケープ州ケープタウンにある喜望峰(ケープ・グッドホープ/cape good hope)の原産であると信じられていたことに由来します。
最近では属名の「Gardenia(ガーデニア)」と呼ばれることも増えています。日本でもしゃれたイメージで売るために「ガーデニア」というタグを付けて売っていることがありますが、売られているのはクチナシなので注意してくださいね。
クチナシの花には一般的な種類のほかにさまざまな変種があります。ここでは、よく知られている代表的なクチナシの種類について解説します。
コクチナシは、小ぶりでかわいらしい花を咲かせる品種です。樹高は30~40cm程度でクチナシのなかでは小さめです。枝分かれして横に伸びていくので、グラウンドカバー的に使うこともできます。また、コクチナシの花のなかには八重咲きになる品種もあります。
花が大きくて香りが強く、まるでバラのような華やかさをもつ品種です。八重咲きが美しく、さまざまな人を魅了します。近年は植栽されているクチナシの多くはこのタイプになりつつあります。
このほかにも一般的なクチナシよりも葉が丸みを帯びているマルバクチナシなどがあります。
クチナシの花の開花時期は6~7月頃です。梅雨を迎えると、大型の6弁花が美しく咲き誇ります。
クチナシの花言葉は「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「優雅」「洗練」など。欧米では男性が女性をダンスパーティーに誘う際にクチナシの花を送ります。そのときの女性の気持ちを表現して、「とても幸せです」という花言葉が生まれました。また、「喜びを運ぶ」は、風でクチナシの香りが運ばれることに由来しています。
クチナシの花を栽培する場合、植えつけや水やりなどにそれぞれポイントがあります。ここでは、クチナシの栽培方法について詳しく解説します。
クチナシは戸外の明るい日なたで育てます。日陰でも育ちますが、日光が足りないと花が少なくなってしまうので要注意です。あまり乾燥した土壌だと育ちが悪くなるので、西日が強く当たるような場所は避けましょう。フカフカとした腐植質が多い、常に適度に湿り気がある土を好みます。
鉢植えは鉢土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出すまでたっぷりと与えます。庭植えは根づいてしまえば基本的に水やりは不要ですが、真夏に雨が降らなくて土が乾ききるようであれば、水やりをしましょう。株元を腐葉土でマルチングして、土の乾燥を防ぐのも有効です。
庭植えは2〜3月に1回、花が終わった7月に1回の計2回、緩効性化成肥料(ゆっくり効く粒状肥料)か固形の油かすを与えましょう。与え方は、伸びた枝の先端の真下を深さ10cmほど耕し、肥料を土に混ぜ込むようにします。2〜3月に肥料を与えるときは、耕した土に腐葉土をたっぷりとすき込むとなおよいでしょう。
鉢植えは3〜10月に2か月に1回、緩効性化成肥料か固形油かすを適量与えましょう。8月は肥料を与えません。
植えつけに適しているのは、芽吹きの直前の2〜3月と暑さが落ち着いた9月下旬〜10月です。秋はあまり植えつけが遅くなってしまうと冬までに根が十分に腫れないので、あまり遅くならないように気を付けましょう。
庭植えの場合、次の流れで植えつけます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土が便利です。自分で配合する場合は、赤玉土と黒土、腐葉土を等量配合した用土でもよいでしょう。
植えつけたら鉢底から流れ出酢水が透明になるまで、たっぷりの水を与えます。枝葉が伸び始めるまでは、鉢土の表面が乾きかけたら水を与えてください。
鉢植えは鉢底から根が出てきていたり、鉢土の表面に根が見えてきて水がしみ込みにくくなってきたら植え替えましょう。植えつけの際と同様の時期、手順、資材で植え替えます。鉢は一回り大きなものを使います。庭植えは基本的に植え替えません。
クチナシの花の栽培にはさまざまなコツがあります。ここでは、具体的な栽培のコツについて解説します。
基本的に戸外で育てますが、寒波の襲来の予報が出たら鉢植えは玄関の内側に取り込んでおきましょう。庭植えは不織布などで包んで、ヒモで縛り上げておくとある程度の寒さには耐えられます。
寒冷地では庭植えは難しいので、鉢植えで育てましょう。氷点下になる日が増えてきたら玄関のなかなどに取り込みます。
花が終わったら剪定をします。春から伸びた枝は残し、今年伸びていない枝を分岐部で適宜切ります。クチナシは秋までに伸びた枝の先端に翌年咲く花芽ができるので、秋以降に剪定をすると花が咲かないことになるので気を付けてください。
代表的なクチナシを増やすには「挿し木」と「株分け」という2つの方法があります。ここではクチナシの増やし方について解説します。
気温が高い時期であれば挿し木で増やせますが、一番適しているのは6~7月です。その年に伸びた枝を10〜15cmほど切って挿し穂にします。挿し穂の下1/3の葉はすべて取っておきましょう。
残った葉は葉のつけ根側の1/2を残して横に切ります。切り口は鋭利なカッターナイフなどで斜めに切り直して整え、水を入れたコップなどに挿しておいて1時間ほど水を吸わせておきます。市販の挿し木用土や赤玉土を鉢に入れてたっぷりと水を与え、切り口を炒めないように挿し穂を挿しましょう。
鉢は鉢受け皿に載せて強い風が通らない明るい日陰で管理し、鉢受け皿には常に少しだけ水が溜まるようにしておきます。うまくいくと1か月ほどで根が出ますが、枝葉がある程度成長するまではそのまま育てて苗づくりをしましょう。
コクチナシは横方向に伸ばした枝から根を出す性質があるので、根がついた枝を切って植えつける株分けで増やせます。これから生育が始まる3月下旬~4月に行うのがおすすめです。
クチナシの栽培では病気や害虫に注意が必要です。ここでは気を付けたい病気や害虫についてや対処方法について解説します。
クチナシは、日当たりや風通しが悪い状態が続くと「すす病」を発症する可能性があります。すすがついたように葉が黒くなる病気です。すす病にかかっている葉を見つけたらすぐに除去しましょう。症状がひどい場合は適用のある薬剤で対処しましょう。
クチナシにはスズメガの仲間のオオスカシバの幼虫がよく発生します。放っておくと葉っぱが全て食べられてしまうこともあるので、見つけ次第取り除きましょう。芋虫類に効く薬剤で駆除することもできます。
クチナシを栽培するうえでは、さまざまな作業が必要です。クチナシを栽培する際に必要な作業についてそれぞれ時期をまとめると、以下のとおりになります。
クチナシは香りや美しい花が魅力的な植物です。
公園などの植栽にもよく使われていて、それほど育て方も難しくありません。花が終わったら早めに剪定すれば、秋までに伸びた枝に翌年花を咲かせてくれます。細かな作業もそれほど必要ないので、オオスカシバに注意しながら、ぜひクチナシを育ててみてください。
カインズでは、公式通販・オンラインショップも展開しています。オリジナル商品多数取り扱っており、ガーデニングや園芸作業に必要なアイテムもスムーズに購入可能です。クチナシを栽培するために、ぜひ活用してください。