植物の苗を買ってきて、まず必要になるのが「植えつけ」の作業です。鉢植えの花や観葉植物を買ってきてそのまま楽しむ場合でも、大きく育ってきてしまったら植え替えが必要になります。植えつけたり植え替えたりするときの、作業の基本を覚えておきましょう。
苗のポットのサイズよりも3〜6cmほど直径が大きなものを選ぶのが基本です。いきなり大きな鉢に植えてしまうと、水やり後に用土が乾きにくくなって根腐れを起こすことがあるので、あまり大きな鉢をいきなり選ぶのはやめましょう。大きなプランターを使う場合は、一般的な花壇苗であれば60cmプランターに2〜3株が適当です。鉢のサイズは「号(ごう)」「インチ」などで書かれていることもあります。いずれも約3cmのことですので、「3号の鉢」であれば直径約9cmの鉢ということになります。
市販の草花用培養土、または赤玉土小粒7に腐葉土か牛ふん堆肥を3混ぜ合わせたものなどを使います。
庭に植えつける場合はシャベル(上の写真右)などを使います。鉢への植えつけであれば穴を掘る必要がないので、土入れ(上の写真左)があるとよいでしょう。そのほかには以下のようなものを用意しておきます。
自分で用土を配合する際は土に混ぜ込むタイプの肥料か、植えつけ後に土の上に置くタイプの肥料を使います。市販の草花用培養土を使う場合はすでに肥料が配合されているので植えつけ時に使う必要はありません。
このほか、用土を自分で配合する場合は、土を混ぜるためのタライなどがあると便利です。
土入れに土を入れながらそれぞれの用土の量を量ってタライに入れていき、混ぜ合わせると周囲を土で汚さずに作業できます。
苗の鉢への植えつけの例として、アロマティカスの植えつけを紹介します。アロマティカスはよい香りがする多肉質の植物で、不快害虫を遠ざける効果が期待できることから、最近注目度が高まっている植物です。
草花の苗を植えつける前に、苗の掃除をしておきましょう。土の表面に落ちている葉や、黄色くなっている葉などは取り除いておきます。古い葉がついたままだと、植えつけ後にカビが生えたり、病気の発生の原因となったりすることがあります。
鉢やポットの中にある土と、そこに広がっている根のことを合わせて「根鉢(ねばち)」と呼びます。柔らかいポリポットの場合は、ポットの上から軽く揉むのが、根鉢をポットからはずすコツです。
陶器などの硬い鉢の場合は、鉢の側面を叩いたり、根鉢と鉢の間に割りばしなどを入れたりしてすき間をつくってはずれやすくします。一般的な植えつけの場合は、根鉢をくずして根を少し切るので、根が多少傷ついても大丈夫です。
苗を鉢から抜くときは、なるべく地面すれすれのところを持ち、やさしく引き抜くようにしましょう。
苗の上の方を持って引き抜くと、苗が傷む原因となるのでやめましょう。
苗が育つうちに使われている土が劣化しているので、一部の土を落とします。上の画像であれば赤い線で囲んだ部分の土を落とした方がよい部分です。また、根を少しだけ切ることで、新しい根が伸びやすくするなります。
上の画像のように、根鉢の部分の土を落としていきましょう。
ポット苗は底で根が塊になっていることが多いので、土を落としながら根をほぐしていきます。
根鉢をくずし終わったところです。根鉢の方と底の土がなくなり、全体に丸みを帯びた形になっていればOKです。
鉢に鉢底網を入れます。鉢底の穴が塞がるようなサイズの網を使うか、大きなサイズの鉢底網であれば適宜ハサミなどで切って使いましょう。鉢底網を入れることで土が流れ出したり、虫が鉢の中に侵入したりするのを防ぐことができます。
底がメッシュ状になっている鉢は鉢底網を入れる必要はありません。
水はけをよくするために鉢底に水を吸いにくい素材の粒を入れます。鉢底石用の軽石も販売されていますが、いらない発泡スチロールのかけらを使っても同様の効果があります。鉢底が大体見えなくなるくらいの量が適量です。
鉢底石が見えなくなる程度に土を入れます。この上に先ほど根鉢をくずした苗を置いてみて、植えつける高さを調整しましょう。
植えつけの際は、苗がポットに植えられていたときに土に埋まったところまで土を入れていきます。その高さまで土を入れたときに鉢の縁から土の表面まで2〜3cmほどのスペースが空くように植えつけるのが適切な深さです。このスペースを「ウォータースペース」と言い、このスペースが少ないと水やりがしにくくなってしまいます。
逆にウォータースペースを深く取り過ぎると、株元の風通しが悪くなってカビなどが生えやすくなるので気をつけましょう。
適切な深さのウォータースペースが取れるように高さを調整したら、残りの土を入れていきます。土を入れたら水を与えます。このとき、水はたっぷりと、鉢底から流れ出るまで与えるのが基本です。
鉢底から流れ出る水が茶色っぽいときは、水が透明になるまで与えると、微細な土の粒が洗い流され、水はけや通気性がよくなります。水を与えながら苗を軽く揺するのが、根鉢と用土をなじませるコツです。
植えつけ後に水を与えると、水に流されてすき間に土が入っていって、鉢土の表面がへこんでしまうことがあります。へこんだところに土を足し、再度たっぷり水を与えましょう。
水やりをしたら植えつけ完了。まだ根が十分に水を吸い上げられない状態なので、1週間ほどは直射日光と強い風が当たらない場所に置いて管理してから、それぞれの植物に合った置き場所に移動させましょう。
ここからは庭への植物の植えつけのやり方を紹介します。例として使うのは、カレックス。自然な雰囲気を演出してくれるオーナメンタルグラスです。
ポットから苗を抜き、根鉢の方と底の土を落としていきます。
根が鉢の底に沿ってぐるぐると渦を巻くように伸びている状態を「サークリング」と言います。サークリングした根はそのままだと新しい根が出にくいので、軽くほぐしましょう。
上記の画像は根鉢の肩と、サークリングしていた根を崩したところです。
植え場所を決めたら根鉢の直径+30cmの範囲に腐葉土か牛ふん堆肥を地面が見えなくなる程度に敷き詰め、庭土と混ぜ合わせながら植え穴を掘っていきます。
掘る範囲は腐葉土または牛ふん堆肥を敷いた範囲を根鉢の深さ+10cmほどです。
粘土質の土で水はけが悪い場合は、やや深めに植え穴を掘って、小〜中粒の赤玉土7に腐葉土か牛ふん堆肥を3混ぜ込んだ用土など、粒のしっかりした用土を使うことで水はけがよくなります。
地面と根鉢の肩の部分が同じ高さになるように調整し、庭土を埋め戻し(または、水はけのよい用土で植えつけ)ます。植えつけたら水をたっぷり与えましょう。
植え穴周辺に水がたまっている間に株を左右に揺すると、根鉢と土がなじんで新しい根が出やすくなります。
植えつけ後は、葉が萎れるなどしない限り水やりをしなくても構いません。しかし激しい乾燥に合う利根が伸びにくくなるので、株元を腐葉土などで覆うマルチングをしておくと過度な乾燥を防ぐことができます。
これから生育を始めるタイミングであればくずしますが、すでに花が咲いているものなどは、これから咲くつぼみがついているものなどは根を傷めると花が終わってしまったり、つぼみが開花前に落ちてしまったりすることがあります。こうした株は根をくずさずに植えつけましょう。
多肉植物は根を切ってすぐに植えつけると根が傷むことがあります。いったん掘り上げて1週間ほど根が切れた部分が乾くまで待ってから植えつけるのがおすすめ。または、あまり根を傷めないように根鉢をくずさずに植えつけましょう。
いずれの場合も植えつけてから2週間ほどは水やりを控えます。
植えつけは植物を育て始めたいときに覚えておくとよい作業です。植えつけの基本的なやり方を身につけ、さまざまなグリーンとの暮らしを楽しんでみましょう。