一般的にハムスターの寿命は2~3年で、人間の感覚からするとあっという間にお別れがきてしまいます。ただでさえ短い命を蝕むのが怪我・病気です。ハムスターがかかりやすい傷病はいくつかあり、なかには命にかかわる深刻なものも……。
そこでこの記事では、ハムスターに多い傷病の種類とその対応・予防策を解説します。1日1日を元気にストレスなく暮らせるよう、飼い主さんが細心の注意を払ってあげましょう。
ハムスターに限らず、野生動物は自分の不調を隠そうとする傾向があります。しかし、毎日のお世話を通して健康チェックをしていると、「おや?」と感じる瞬間がいくつかあるはずです。「食欲がない」「ケージの隅でうずくまっている」などはその代表例。他にも、次のような症状が見られる場合は体調不良を疑ったほうがよいでしょう。
ここからは、ハムスターがかかりやすい病気の種類とその予防策などを部位ごとに解説します。飼い主さんの配慮で防げる傷病はたくさんあるので、改善できることには積極的に取り組んでみてください。
目の病気で注意したいのは結膜炎や角膜炎、マイボーム腺腫、緑内障、眼球突出などです。老化が始まる1歳半くらいから白内障を発症する確率も高まります。
症状 | ・目やにや涙が出る ・結膜が赤くなる ・まぶたが腫れる |
原因 | ・細菌感染 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ |
結膜炎は、多くのケースで目のこすり過ぎによる炎症です。目のかゆみはゴミやホコリが原因のときもれば、毛づくろいのときに炎症を起こしてしまうこともあります。したがって、できるだけ飼育環境を清潔に保つことが大切です。軽症であれば点眼薬で治ることもありますが、重度の炎症には抗生物質を投与することもあります。
症状 | ・目やにや涙が出る ・目が開かなくなる |
原因 | ・尖った床材や喧嘩 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・適切な床材を利用する ・多頭飼いに注意する |
角膜炎は、症状や治療法は結膜炎と似ていますが、原因は外傷であることが異なります。牧草やウッドチップなど尖った床材が目に入ったり、ハムスター同士の喧嘩で負傷したりするケースが多いといえます。床材選びはもちろん、環境内で眼球に傷を作るような尖っている場所がないか注意し、多頭飼いは控えることが大切です。
症状 | ・結末やまぶたの端に白い腫瘍ができる ・目やにや涙で目が開かなくなる |
原因 | ・細菌感染など |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・一度発症した床材やトイレ砂は使用しない |
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)や霰粒腫(さんりゅうしゅ)といった眼科疾患にあたり、平たくいえば「ものもらい」です。まぶたにあるマイボーム腺と呼ばれる脂腺が細菌感染で腫れたり、分泌物が貯留したりするもので、ジャンガリアンによく発症するといわれています。発症した目が治っても、反対側の目が発症することもありもします。治療には点眼薬を用い、それでも腫れが引かない場合は切開して分泌物を取り出します。
症状 | ・眼球が腫れて飛び出たようになる ・眼球が突出してドライアイになっている |
原因 | ・外傷、頭部の腫瘍など |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・怪我をさせないよう注意する |
眼球突出は、病名通り眼球が押し出されたように腫れるのですぐにわかるでしょう。原因は外傷によるものや頭部腫瘍などが主で、失明の恐れもある緊急性の高い病気です。壊死した目を自分で引っかいて眼球が取れることもあります。症状が軽ければ点眼薬で腫れを抑えたりしますが、目の奥に腫瘍等がある場合は内服の投与が必要になることも。
耳の病気では外耳炎、鼻は鼻炎に要注意。鼻炎は主にアレルギー性と細菌性があります。
症状 | ・耳を頻繁に引っかく ・耳垢ができる ・出血や傷、かさぶたが見られる |
原因 | ・細菌による感染 ・怪我 ・耳周囲の腫瘤など |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・爪のケアをする |
外耳炎は放っておくと中耳炎・内耳炎に発展する恐れがあるほか、耳の奥にカリフラワーのような腫れ物が見られる場合は、腫瘍の疑いもあります。飼い主さんでできる外耳炎の応急処置は特にないため、動物病院を受診してください。
治療には点耳薬や抗生物質、かゆみ止め、消炎剤を使用するケースが多いです。耳を引っかく仕草を止めない場合は、エリザベスカラー(円錐台形状の保護器具)を付けることもあります。伸びた爪で耳を傷つけたり、飼育ケースが不衛生なために細菌感染したりすることもあるため、こまめな健康・衛生管理が大切です。
症状 | ・くしゃみが多い ・鼻水を出す ・呼吸しづらそうにしている |
原因 | ・アレルギー ・細菌感染 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・アレルギーの少ない床材を使用する |
ハムスターも鼻炎にかかります。頻繁にくしゃみをしたり、鼻水をよく出したりしていたら鼻炎の疑いがあります。鼻炎が激しくなると、鼻水に血が混ざる、呼吸がしづらくなる、といった症状が出ます。点鼻薬や抗生物質の投与で症状を改善させていきますが、症状が進行すると肺炎に発展することもある、油断のならない病気といえます。
飼育環境を清潔に保つことで対策できますが、アレルギー性の場合は獣医師に相談してアレルギーの原因を取り除きましょう。
口周りは、歯のかみ合わせが悪くなる不正咬合や、それがもとで起こる過長歯、また頬袋脱に注意したほうがよいでしょう。
症状 | ・歯が変形する ・固いものを食べられなくなる ・体重激減 ・口や鼻からの出血 |
原因 | ・歯根部の細菌感染に伴う炎症 ・歯の強度の低下 ・落下や外傷による歯の損傷 |
予防策 | ・歯が折れないように金網のないケージを用いる ・高さのある飼育ケージは使わない |
前歯の噛み合わせが悪くなり歯が過剰に伸びるなどする病気です。食欲はあるのにうまく食べることができないため、体重が激減します。口腔内に伸びた歯が刺さり出血にいたる個体もいます。
炎症を抑えたうえで、歯を切る治療法が取られます。外傷による一過性の不正咬合は完治することもありますが、多くの場合は定期的な処置が必要になります。
不正咬合はケージの金網をかじることで歯が折れたり変形する場合もあれば、歯肉炎が原因で正常な噛み合わせができなくなる場合までさまざまです。しつこくケージ内の金網をかじるようなら、水槽や衣装ケースに移し替えるなど、飼育環境を変えてみましょう。
症状 | ・頬袋が口から飛び出す |
原因 | ・粘り気のある食べものが原因で頬袋が反転 ・ストレスで頬袋の食べ物を頻繁に出し入れする ・不正咬合 |
予防策 | ・ストレスをかけない ・頬袋にくっつきやすいものは与えない ・頬袋内に長時間あるエサは腐る可能性があるため取り除く |
食べたものを一時的に溜め込んでおく「頬袋」が反転し、口から飛び出してしまう病気です。頬袋内に張り付きやすい食べ物が原因で発症することが多いです。
茹でたカボチャやサツマイモなどは頬袋脱を引き起こす恐れがあることを知っておきましょう。頬袋脱は反転が戻らずに損傷がある場合には切除するケースが多いです。
ハムスターは脱毛をはじめ、さまざまな皮膚病を発症します。アレルギー性皮膚炎や「ニキビダニ」によるニキビダニ症、細菌による細菌性皮膚炎、カビが原因で起こる皮膚真菌症などが主な病気です。栄養が十分に取れていない個体も脱毛を起こすことがあります。
症状 | ・脱毛 ・炎症 ・フケ |
原因 | ・ニキビダニの増加に伴う脱毛 ・体力・免疫力の低下 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・心身ともに快適な生活環境を維持する |
ニキビダニ症(アカラス症)は、ニキビダニという毛包虫が原因で起こる病気です。ニキビダニはもともと皮膚の毛包に寄生しているので、健康なハムスターなら問題ありませんが、病気や高齢などで免疫力が落ちている場合に、脱毛や炎症、フケなどを伴います。治療するにはニキビダニに効く駆虫薬を用いるのに加え、体力や免疫力を低下させている原因を取り除くことも大切です。
症状 | ・脱毛 ・炎症 ・かゆみ |
原因 | ・怪我や不衛生な環境による細菌感染 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・怪我をさせないよう注意する |
基本的にハムスターは皮膚病になりやすい動物で、細菌性皮膚炎も多くの皮膚病の一つです。発症すると脱毛が見られ、かゆみや炎症を伴うケースも多々あります。不衛生な環境では細菌が繁殖しやすく、ハムスターが怪我をしているとそこから感染します。特に肥満のハムスターは、床材で腹や手足がこすれて擦り傷を起こしているケースがあるため要注意です。
抗生物質を投与すれば完治することもありますが、不衛生な環境が皮膚炎の原因であれば、清潔な飼育環境にしなければなりません。
症状 | ・脱毛 ・乾燥 ・フケ |
原因 | ・不衛生な飼育環境 ・栄養のアンバランス |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・心身ともに快適な生活環境を維持する |
皮膚真菌症の「真菌」とはカビのことで、梅雨などの多湿な時期に注意すべき皮膚病です。皮膚真菌症になると脱毛、乾燥肌、フケなどが見られますが、かゆみを伴うことは少ないといわれています。だからといって油断はできないのは、皮膚糸状菌は人間にも感染する点です。ハムスターを触る前後は必ず手洗いをしましょう。梅雨時は特に飼育環境を清潔に保つことも大切です。
症状 | ・全身性脱毛 ・顔周りや手足の部分的な脱毛 |
原因 | ・タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの欠乏 |
予防策 | ・ハムスター用のフードを与える ・穀物や種子類なども与えて栄養が偏らないようする |
その名の通り、栄養不足によって引き起こされる疾患です。栄養不足が原因で脱毛が起こりますが、皮膚炎を合併することもあります。ハムスターに必要な栄養素を確保するには、ハムスターフードをメインにし、おやつなども与えるようにしましょう。
ハムスターは見た目とは裏腹に縄張り意識が強く、多頭飼いをしていると喧嘩が勃発して怪我をすることがあります。また、ケージの金網やおもちゃが元で足を挫くことや、ひどいときは骨折をする個体もいます。
症状 | ・足を引きずる |
原因 | ・落下 ・金網ケージによる事故 ・回し車による事故 |
予防策 | ・多頭飼いはしない ・飼育ケース・ケース内を見直す |
足を引きずっているなど、歩き方がおかしい場合は骨折や捻挫の疑いがあります。原因はさまざまですが、金網ケージによる事故(足を引っかける、ぶら下がりによる落下)が多くを占めます。回し車に足を挟んだり、同居するハムスターとの喧嘩で負傷したりすることもあります。飼い主さんの配慮で防げることがほとんどなので、事故が起こらない飼育環境を整えましょう。
症状 | ・出血 |
原因 | ・喧嘩 ・金網ケージによる事故 ・回し車による事故 |
予防策 | ・多頭飼いはしない ・飼育ケース・ケース内を見直す |
外傷による切り傷は出血を伴うので一目でわかるでしょう。金網ケージの網に引っかかった、高いところから落下した、回し車に足を挟んだなど、飼育ケース内で起こることがほとんどです。複数匹を同居させている場合、喧嘩で負傷することもあります。
ハムスターが怪我でできた傷を噛んだり、伸びた爪で患部をかいたりすることでより症状が悪化する恐れもあるため、早めに対処しましょう。軽度の切り傷であれば消毒するだけで問題ありませんが、患部が化膿したりしていると抗生物質の投与が必要です。
五臓六腑に関わる病気で怖いのは、心疾患や肝疾患であり、その症状の一つである胸水、腹水も要注意です。また、飼育下のハムスターには必要のない疑似冬眠は、急激な温度変化による低体温症による症状です。
症状 | ・呼吸・心拍・体温が極端に低下する |
原因 | ・急激な温度変化 ・室内の温度管理不足 ・保温機器の不具合 |
予防策 | ・室温の温度管理を怠らない ・十分にエサを与える |
ハムスターは急激な気温低下(5~10℃以下 / 10℃以上の温度変化)により体温が下がり、動かなくなります。秋から冬にかけて急に気温が低下したり、玄関などの外気温が左右されやすい場所で飼育したりしていると起こることがあります。
冬眠に入ったような状態にも見えるため、低体温症を「疑似冬眠」と呼ぶことがありますが、飼育下のハムスターが擬似冬眠をすることは、体力を奪うことになり、そのまま亡くなってしまう恐れもあります。低体温症になったら、保温性の高い布やタオルでくるみ、ゆっくりと体温を上げてあげましょう。
症状 | ・多飲多尿 |
原因 | ・遺伝性 ・突発性 |
予防策 | ・健康的な食生活を心がける |
糖尿病のハムスターは明らかな多飲多尿が見られ、正常なハムスターの3倍以上の水を飲むこともあります。
糖尿病にはⅠ型とⅡ型とがあり、前者は遺伝的、後者は後天的な原因で起こります。ハムスターの糖尿病は人間のように注射薬による処置もできないため、残念ながら有効な治療法はありません。食事療法も難しいので体重が減少しないような管理をする必要があります。
症状 | ・呼吸困難 ・食欲不振 |
原因 | ・細菌感染 ・環境の変化などによるストレス ・高齢による免疫力の低下 |
予防策 | ・ストレスをかけずに体力を維持する |
肺炎は若齢や高齢で発症しやすく、体力の低下でも起こる病気の一つです。じっとしていて呼吸が速いので、いつもとは異なる様子に気が付きやすい症状といえます。
福島さん
呼吸が苦しそうな場合には、早急に獣医師の診察を受けましょう。呼吸困難を起こしてからあっという間に息を引き取る個体もいます。
症状 | ・食欲不振 ・呼吸困難 ・胸水・腹水 |
原因 | ・高齢による心機能の低下 ・遺伝性 |
予防策 | ・心身ともに快適な生活環境を維持する ・必要なタンパク質量が配合されたハムスターフードを与える |
心疾患は老化による心機能の低下で起こることが多く、飼い主さんとしては覚悟のいる病気といえます。胸水・腹水などを併発し、食欲不振や呼吸困難を引き起こします。
治療は心臓の負担を減らすために強心剤、利尿剤などを用います。治療が上手くいくと病状を悪化させないようにする事ができます。運動制限をして負担のない生活をさせてあげてください。
症状 | ・食欲不振 ・腹部の脱毛 ・腹部の腫れ |
原因 | ・腫瘍 ・高齢による肝機能低下 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・健康的な食生活を心がける |
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、多少悪くなっても症状となって表れないところが厄介です。歳を取るとハムスターも肝臓の機能低下を起こしますし、肝臓腫瘍で肝臓が腫れてお腹が膨れてくることもあります。
肝臓が弱ると栄養をためられないばかりか、口に入った細菌などを解毒できなくなり、さらに大きな病気にかかる恐れも。ハムスターの体力を低下させないように健康的な食生活になるよう管理してください。
ハムスターに腫瘍は付きものといってよいくらい、罹患率が高い病気です。腫瘍には悪性と良性がありますが、発症部位や進行速度によっても処置や治療法が異なります。良性であれば特別な処置が不要のケースもあります。
症状 | ・しこりができる ・腹部が腫れてくる |
原因 | ・遺伝性 ・高齢による免疫力低下 |
予防策 | ・心身ともに快適な生活環境を維持する |
ハムスターは腫瘍ができやすい動物です。腫瘍には悪性と良性があり、見た目だけでは判断できないところが厄介です。さらに、体内にできた腫瘍は発見が遅れる恐れもあります。特に1歳以降になると免疫力が低下するため、異変を感じたら獣医師に診てもらいましょう。
予防策は、心身ともに健康な生活の維持に努めるほかありません。しかし前述の通り、ハムスターに腫瘍ができるのは珍しいことではないため、「高い確率で発生するもの」という覚悟も必要です。
症状 | ・体表にしこりができる |
原因 | ・外傷による膿 ・細菌感染よる膿 |
予防策 | ・怪我のない飼育環境を用意する ・飼育環境を清潔に保つ |
膿瘍とは名称通り、膿による腫れです。しこりの正体は膿なので、水ぶくれのように膨らむこともあります。原因は外傷や不衛生な飼育環境による細菌感染が考えられます。切開して膿を排出して治療をします。基本的には大事にいたる病気ではありませんが、発症場所や原因によっては治療方法や治療期間が異なります。
原因はさまざまなので、細菌に感染させない快適な環境を整えてあげたうえで、日頃から体の腫れなどの異変に気がつけるように心がけましょう。
尿・便は健康のバロメーターになります。色やにおい、形状など、異変が起きていないか毎日チェックしましょう。
症状 | ・軟便や水様便 ・便の色や形状の変化 ・体重が減る |
原因 | ・環境の変化 ・消化不良や体調不良 ・腹腔内腫瘍 |
予防策 | ・ストレスをかけないようにする ・ハムスターフードを主食とする |
ハムスターの便は踏んでもつぶれることはありません。下痢便の場合は便の形がないので飼い主さんも気がつきやすいのですが、軟便の場合には気がつかないこともあります。
福島さん
初めてハムスターをお迎えしたときから便が少し柔らかい程度だと、気がつかないうちに腸炎が慢性的になって急に悪化してしまうことも。
ハムスターの下痢は人間と異なり、命に関わることも出てくるので、便の異常を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
症状 | ・軟便や下痢 ・体重の減少 ・食欲不振に伴う脱水症状 |
原因 | ・消化管内寄生虫の感染 |
予防策 | ・ストレスをかけない ・飼育環境を清潔に保つ |
ハムスターがジアルジア、トリコモナスといった消化管内寄生虫に感染して増加することで下痢や脱水症状、ひどい場合は体重の激減を起こします。
もともと感染している場合も多く、ペットショップから飼い主さんのご自宅へ移ることによる環境の変化や体調不良に伴い消化管内寄生虫が増加することで、軟便や下痢を引き起こします。他のハムスターに感染するため、お世話をするときは必ず手を洗い、飼育環境は清潔に保ってあげましょう。
症状 | ・頻尿 ・血尿やピンク色の尿 ・尿道閉塞による排尿障害 ・体重減少 |
原因 | ・細菌感染 ・偏った食生活 |
予防策 | ・健康的な食生活を心がける |
尿路結石は腎臓、膀胱、尿道などさまざまな場所にできます。尿道に詰まることで尿道閉塞を起こしている場合、尿が出にくい状態で尿毒症を起こすため命にかかわります。
福島さん
尿が出ていない場合は緊急性が高いのですぐに獣医師に相談しましょう。
飼い主さんができることは、野菜や果物など水分を多く含むエサも食べさせるなど、食生活の管理です。
症状 | ・頻尿 ・血尿やピンク色の尿 ・尿の悪臭 |
原因 | ・細菌感染 ・高齢に伴う免疫力の低下 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・尿の色が分かりやすい床材に変える |
膀胱炎は尿の色で判断しやすい病気です。尿が赤色に変化するので気がつきやすい病気ともいえます。
頻尿になることもあります。膀胱炎は細菌に感染することで発症し、高齢のハムスターに起こることが多いです。尿の色やにおいに異変が見られたら獣医師に相談しましょう。
飼い主さんにできることは、できるだけ飼育環境の清潔さを保つことです。ハムスターはお腹をするようにして歩くため、床材の状態には気を配りましょう。また、尿の異変の早期発見につながるよう、床材やトイレ砂の色を変えるのもよいでしょう。
症状 | ・多飲多尿 ・血尿 ・体重減少 |
原因 | ・膀胱炎 ・腎腫瘍 ・高齢 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・尿の色が分かりやすい床材に変える |
血尿の他、尿のにおいがきつく感じたら、腎臓に炎症を起こしているかもしれません。腎疾患の原因はさまざまで、細菌感染や腎腫瘍、高齢による腎機能の低下などが考えられます。膀胱炎と併発する場合もあります。
治療は抗生物質などの投与を行いますが、原因となる疾患に対しての治療も必要になります。食欲が低下する場合には、エサは低たんぱく質・高カロリーにこだわらずに体重を維持することを優先します。一度衰えた腎機能の回復は難しいことが多いです。
オス・メス特有の病気を紹介します。メスは出産による負担がある分、オスよりも注意しなければならないことが多いです。高齢になると抵抗力が弱まり、ホルモンバランスも崩れやすくなるため、よりストレスをかけない生活環境の用意が必要です。
症状 | ・精巣が膨らむ ・歩きにくそうになる ・精巣部分の毛が抜ける |
原因 | ・細菌感染 ・精巣腫瘍 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・環境内に精巣が傷つくような鋭利な物を置かない |
精巣炎はオスのハムスターに起こる病気で、精巣(睾丸)が大きく腫れます。歩きにくそうにしていたら、精巣が腫れていないかチェックしてみてください。
精巣炎の原因は細菌感染、外傷、腫瘍などです。不衛生な飼育環境がもとで発症することもあります。トイレ、寝床の掃除には特に気を配り、快適な生活環境を保ってあげましょう。
症状 | ・生殖器からの膿 ・腹部の脱毛 ・腹部が腫れる |
原因 | ・細菌感染 ・老齢に伴う免疫力の低下 ・腐敗した胎児 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・過度な出産を避ける |
高齢のハムスターのメスは、子宮内に膿がたまって排出することがあります。生殖器や下腹部が膿で汚れていたら、子宮蓄膿症になるので抗生物質を投与して治療をしていきますが、症状によっては卵巣・子宮の摘出手術を行います。
高齢のハムスターの出産は、ある程度コントロールしてあげないと病気の発症・進行を早めることにつながることを知っておきましょう。
症状 | ・生殖器からの出血 ・腹部の脱毛 ・腹部が腫れる |
原因 | ・ホルモンバランスの変化 ・免疫力の低下 |
予防策 | ・飼育環境を清潔に保つ ・過度な出産を避ける |
子宮内膜炎も、症状としては子宮蓄膿症に似ています。免疫力の低下やホルモンバランスの低下も原因になります。
出血等があった時点で緊急を要することが多いです。妊娠・出産後であれば、子宮内に残された胎児が亡くなった影響で出血していることも考えられます。
福島さん
免疫力が弱まる1歳以降になると頻発する恐れがあるため、1歳を過ぎての繁殖は控えて、心身ともにストレスのない生活環境を維持してあげてください。
動物病院は獣医師会等が料金の制定したり、獣医師同士の協定で料金設定したりすることを禁じています(独占禁止法)。治療費は動物病院側がそれぞれの基準で決めているため、同じ処置をしてもらっても動物病院によって変わることがあります。したがって、ここではあくまで目安を紹介します。
初診料 | 1,000~2,000円 |
再診料 | 500~3,000円 |
夜間救急 | 5,000円~1万円の加算 |
健康診断 | 1,000円〜1万円 ※検査項目によって料金が異なります |
動物病院にかかると最低限、必要になる料金です。体の小さなハムスターとはいえ、診療にかかる料金は他のペットと変わらないといえます。夜間の救急対応となると、通常の診察料に加算されます。
健康診断は触診や視診、体重測定といった基本的なものであれば診察料だけで済むこともあるでしょう。できれば月に1度の健康診断が理想です。ハムスターは体が小さく抵抗力が弱いため、人間から見れば些細な変化でも、実は病気のサインということもあり得ます。
尿・便検査 | 500円~2,000円 ※検査の内容によっては5,000円程度になることも |
皮膚検査 | 1.000~2,000円 |
眼検査 | 1,000~3,000円 |
超音波検査 | 3,000~5,000円 |
レントゲン検査 | 2,000~5,000円 ※撮影枚数によって変動 |
検査は一般的なものであれば上記が目安です。ハムスターに多い皮膚病での検査では、症状の改善が見られない場合に真菌や細菌の培養検査等を行うことがあり、通常より料金がかかるケースも。
レントゲン検査は撮影枚数によって変わるため、症状次第では1万円以上かかることもあるでしょう。
爪切り | 300~2,000円 |
歯切り | 1,000~3,000円 |
外傷の手当 | 1,000~3,000円 |
注射・点滴 | 2,000~3,000円 |
爪切りは数百円で行ってくれることもありますが、病院によっては1,000円を超える場合も。また、不正咬合による歯切りの処置では麻酔が必要になるケースもあり、麻酔費用として5,000円~1万円がかかることもあります。
手術 | 1~10万円 |
入院 | 3,000~5,000円 / 日 |
生命に関わる緊急対応 | 1~5万円の加算(夜間対応は別途料金が加算) |
手術費は疾患により大きく異なります。たとえば腫瘍の除去手術は1万円で済むこともあれば3万円以上、あるいはそれ以上かかることもあります。飼い主さんに十分な説明がないまま手術・入院を推し進める獣医師はいないと思われるため、不安や疑問はすべて解消したうえで治療に進みましょう。
薬の処方 | 500~1,000円 |
飲み薬 | 100~400円 / 日 |
点眼薬・点耳薬 | 800~2,000円 |
薬代も、症状によって処方される種類・量が異なるため、変動しやすい治療費です。若いときから高齢までにハムスターはさまざまな病気にかかるため、それに対しての飲み薬や処方薬が必要になります。
福島さん
病気や症状に合わせたお薬が処方されるので獣医師の指示に従って、しっかりとお薬を飲ませましょう。
スムーズに診察が進むよう、獣医師には次の点を意識して症状を伝えましょう。
ハムスターは犬や猫とはまったく違う生態をしており、診療を得意・不得意とする獣医師もいます。動物病院にかかるときには、ハムスターの診察をしているかを事前に問い合わせるとよいでしょう。ウサギやフェレットといったエキゾチックアニマルの診療を専門とする動物病院であっても、ハムスターの診察を得意とする獣医師のほうが安心です。
ハムスターの病気は飼い主さんの予防策である程度は防げます。衛生管理や食事管理はもちろん、怪我の要因を排除すること、余計なストレスを与えないことも大切です。ここでは、代表的な予防策について解説します。
古い床材やトイレ砂、飲水、エサの食べ残しなどがもとで細菌などに感染する恐れがあります。上記のものは特に汚れやすいため、基本的には毎日交換し、飼育ケースは月に1度程度は大掃除しましょう。
ハムスターは暑さや寒さに弱い生き物です。春や秋は比較的過ごしやすいですが、昼夜の寒暖差が激しいため油断はできません。エアコンを点ける、パネルヒーターを使う、床材の量を工夫するなど、いろいろと調節してあげましょう。夏は30℃以上、冬は5℃以下になると熱中症や擬似冬眠などにより命に関わる状態になります。
健康な体を維持するために、ペレットを主食とし、野菜、果物、種子などもバランスよく与えてください。高齢になるとペレットなどの固いものを好まなくなることもあるので、食べやすく工夫して与えるようにしましょう。
ひまわりの種などの種子類はハムスターにとって嗜好品で、与えると非常に喜びます。スキンシップやご褒美の際に用いるとよいでしょう。
なお、下記はハムスターにとって中毒となる食べ物です。誤って与えないよう注意してください。
ハムスターが怪我をしない環境を築くことが大切です。一つのケージに複数匹を同居させると喧嘩が勃発し、場合によっては共食いが発生します。また、ケージの金網や運動のための回し車も、ときに怪我の原因になります。使用する際は十分注意してください(飼育ケージの選び方は、初心者にもおすすめハムスターケージの選び方|掃除方法も解説で詳しく解説しています)。
ハムスターにとってストレスとなる行動は止めましょう。必要以上に触る行為はもちろん、騒がしい場所や強いにおいがする場所に飼育ケースを置くのもイライラがたまります。また、ハムスターは飼い主さんの生活リズムに合わせて生活できますが、基本的には夜行性なので、昼間は寝ていることが多いです。無理に起こさないようにしましょう。
ハムスターは年齢によってかかりやすい病気が異なります。生後0日から20日のベビー期は特に身体が弱く、ちょっとした温度変化でも命を落とす恐れがあります。
生後20日~6か月は人間でいう青年期です。若く健康ではあるものの、成長不良や腸炎などの病気には注意しなければなりません。
生後6か月~1年6か月は、人間に換算すれば20歳~50歳ほどの成年期です。この時期は頬袋脱出や不正咬合などを発症する個体が多く、治療をしないと命に関わることもあります。
生後1年6か月以上ともなれば立派な高齢期。人間と同じく、身体中の抵抗力が弱まります。内臓系が弱くなるほか、骨ももろくなるため外傷にも注意しましょう。
ハムスターの病気や治療費にかかわる質問でよく頂くものをQ&A形式で紹介します。
A.ハムスターに指を噛まれてアナフィラキシーショック(アレルギー症状)を起こす方もいるため、要注意といえます。アレルギー体質の方はもちろんですが、過去にハムスターに噛まれて吐き気や腹痛、じんましん、息切れ、痙攣といった症状が出た方は、噛まれるような接し方をしないようにしましょう。
A.ペット保険の必要性は人それぞれなので、何ともいえません。ハムスターの治療費が家計に多大な影響を及ぼすのではあれば、加入したほうがよいでしょう。ペット保険に加入する場合は、下記の点を忘れずに確認しましょう。
ちなみに、アニコム損保がまとめた『家庭どうぶつ白書』によれば、1年間にかけた怪我や病気の治療費は、犬が約6万円、猫が約3万円、鳥、うさぎ、フェレットが約7,500円です。小動物であるハムスターも年間で1万円弱の支出だと想定できるでしょう。
A.品種ごとの寿命の違いはあるといわれています。日本でよく飼われている5種類のハムスターの寿命の目安は、次の通りです。
繰り返しますが、あくまで目安です。なかには3年以上生きた飼育例もあるため、健康でストレスのない生活をさせてあげましょう。
ただでさえ寿命が短いうえ、体の弱いハムスターを少しでも長生きさせてあげるためには、病気の予防や早期発見に努めることが大切です。
福島さん
また、ハムスターは脱走による行方不明や、同居する別個体との生死をかけた喧嘩など、思わぬトラブルを起こすこともあります。かわいい我が子が危険な目に遭わないよう、飼い主さんが目を光らせてあげてください。
福島さん
ウッドチップの床材や木の巣箱などが原因である可能性もあります。また、ハムスターの免疫力を下げないために、余計なストレスをかけないことも大切です。